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自然光の中で 光と色彩を”体験する”展覧会 |フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」(茅ヶ崎市美術館)

絵というより、光そのものを観ているような絵画作品で。また、「絵画」の作品でありながらも、その写真を観ても伝わりきらない、光と色彩の知覚現象を体験するような展覧会でした。

フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」(茅ヶ崎市美術館)展示風景

▍フランシス真悟とは

フランシス真悟は、1969年カリフォルニア州サンタモニカ生まれの画家。アーティスト。父親は、20世紀を代表するアメリカ抽象表現主義の画家 サム・フランシス、母親は、日本のメディアアーティストのパイオニア 出光真子。

銀座エルメス フォーラム「インターフェアレンス」展 展示風景(2023年 筆者撮影)

ミニマルで抽象的なアプローチによって色彩、時間、空間を探求する作品を制作。鎌倉とロサンゼルスを拠点に、国内外で作品を発表しています。
2023年には、銀座エルメス フォーラムで発表した7mにもおよぶ壁画作品《Liminal Shifts》でも話題を呼びました。

▍一見シンプルな画面に広がる奥行き

本展のスタートは、今回の展覧会のために制作された新作から。「Infinite Space」シリーズは、一見、大きなカンバスを単色で塗りつぶしたようにも見える作品です。

「Infinite Space」シリーズ

10-15層、半透明の油絵具が塗り重ねられ、カンバスの上下には、にじむように複数の層が見えています。

「Infinite Space」シリーズ

そして、下方には1本の真っ直ぐなライン。緊張感のある、カンバスから浮き上がるようなそのラインに眼が引きつけられ、そこから上部の多層の色が重ねられた部分に眼をうつしていくと、一見単色の平面の画面の中に、不思議な奥行き感が感じられてきます。

「Infinite Space」シリーズ

▍自然光で観る、角度で表情の変わる絵画

同じ展示室には、代表作ともいわれる「Interference」シリーズの作品も。

「Interference」シリーズ

絵具に含まれる顔料の粒子が光を反射する性質を利用して描かれたそのシリーズは、画面を構成するのは縁や正方形など、シンプルな図形ですが、観る角度によって色合いが変化していき、複雑な画面をつくりだしています。

《Four Sides Equal (emerald-violet)》/  フランシス真悟

今回、茅ヶ崎市美術館では、自然光の差し込む展示室でこの作品を展示。展示室を歩くことによる変化だけでなく、天気や、時間によってもその見え方が変化していきそうです。

《Four Sides Equal (emerald-violet)》/  フランシス真悟
上と同じ作品を異なる角度から

こうした作品は、1960年代に作者が育った南カリフォルニアで展開された芸術運動「ライト&スペース・アート」なども参照して生み出されてきたといいます。

▍1980年代の作品から、大きなドローイング・インスタレーションまで

展示は、地下の展示室へと続きます。「Into Space」、「Blue's Silence」といった作品シリーズから、コロナ禍に家にある画材で描いた「Daily Drawing」シリーズなど、最初に観た作品に繋がっていくような作品群です。

1987年頃から現在までに描かれた作品80点以上が一堂に展示された空間は、比較的小さな作品の中に、様々な視覚的な実験の要素が観られます。こちらもまた、天井からの自然光で作品を観ることが出来る空間です。

1987年頃から現在に至るまでのドローイング・ペインティング

最後は、多角形の展示室の空間をまるごと使用したドローイング・インスタレーション《Bound for Eternity》。

《Bound for Eternity (magentablue)》/ フランシス真悟

細長い支持体の上に、水平線のように引かれた1本のライン。遠くから観ると、画面の端に向かって収束していくように見えますが、絵画の前に立ち、その線をたどりながら観ていくと、何も描かれていないように見えた末端にも、光の角度によって見えるラインが見えてきます。

このほか、映像作品の展示なども。

《Visions of Color I》/ フランシス真悟

写真で観ても伝わりきらない、奥行き感や色の複雑さ。色彩を「光」として感じながら観る作品群の展示です。

比較的こぢんまりとした美術館ですが、100点を超える作品と、自然光で作品を観る体験。この展示のためだけに茅ヶ崎まで行って良かったと思う展覧会でした。

「フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」」展は、2024年6月9日(日)まで、茅ヶ崎市美術館で開催されています。

【展覧会概要】 フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」

会場:茅ヶ崎市美術館
会期:2024年3月30日(土)-6月9日(日)
時間:10:00-17:00
料金:一般800円
展覧会URL:https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/7778/

【展覧会訪問前に気になるアレコレまとめ】

撮影可否:写真撮影可能
入館予約:不要
会期中展示替え:なし
音声ガイド:なし
図録:制作中
その他:展示室1は自然光で鑑賞できますが、毎時30分-45分の15分間は、自然光を入れない状態での鑑賞ができます。

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