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おかえり

いつぞや提携病院から施設に退院して来た人が、退院後一日でコロナ陽性になった。要するに病院で感染して来た。

ただちに同室者を隔離するなど大騒ぎになった。この隔離が一日や二日じゃ済まないので例によって辛酸を極めた。

ところが、その時期にたまたまショートステイで入所していたお婆ちゃんに滅茶苦茶健脚な人が居て、どんなに気を付けても陽性者のお爺ちゃんと和気藹々とお喋りしてしまう。

その時期のコロナ陽性者は先の退院して来たお爺ちゃんと、このショートステイのお婆ちゃんの二人だった。二人で済んだことが奇跡ではあるが、ショートステイのお婆ちゃんのご家族には謝罪しまくり。

ところが、『ええよ、ええよ。その代わり治るまで置いてね。』とのこと。

その後無事にご自宅にお帰りになられ、さらにはその後も2回ほど入退所を繰り返されている。今日も来た。

こちらとしては、このお婆ちゃんの顔を観る度に施設でうつしてしまってすまないなあ~という気持ちになるのだ。すっかり治った今でも。

しかし、本日、一階で抗原検査をしてフロアにお連れしたときのこと。

この人は、エレベーターが開くなり、まーーっすぐいつも自分がお泊りする部屋に向かって行った。しかも、私を追い越して高速スキップで。

もちろんご自宅で看るのが困難だからこそショートステイや特養を利用なさるのだが、その介護困難の理由は、必ずしも病状が悪いから看護師が居る施設で・・・という場合に限らないのよね。

この方のように鍵を閉めて閉めても家を抜け出し、そのあたりを歩き回り、すっかり日焼けしている人すらいる。

しかし、わーい!と言わんばかりに廊下の一番向こうの施設の部屋へ向かって行かれる様子を観ていると、どうやら気に入ってくれたようなのだ。この通り、部屋も覚えている。まあ、いつも同じ部屋に入所して貰っているせいもあるけど。

そう言えば、おうちでは脱走するのに施設では誰かしらとお茶飲んだり、廊下を後ろ手で散歩したりと、非常に落ち着いて過ごされている。

それはともかく慌てて追いかけて荷物を持って部屋に入ると『あれ?どっかで会った?』と私の顔を観て仰る。今一緒にあがって来たんだけどね。

『まあ、いいや。とにかく、ただいま!』

ちょっと感動してしまった。

ようこそ。いや、おかえり!

こちらとしては忙しい日ではあったが、その人が楽しそうにお茶して、顔見知りの人とお喋りしている様子が目に入る度、とても嬉しい気持ちになった。

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