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自分の出生に触れたかも という話

世の中、色んな詐欺が横行しているが、一週間ほど前に妙な手紙が届いた。

自筆の手紙で中身を読むと、『○○をご存じですか?』と人の名前が書かれている。全然知らない男の名前だ。

続いて『私、○○○○(旧姓○○)と、姉の○○の父であり、Ohzaさんの父でもあります。5月17日に脳出血で他界しました。私たち姉妹とOhzaさんが遺産相続人になるのですが、つきましては相続の意志を教えて下さい。』という趣旨のことが書かれていた。そして、書き手のご住所と氏名、電話番号が書かれてあった。

新手の詐欺なんだろうけど、まあ、ずいぶんと面倒臭いことをするのだなあ~と思った。今時、自分の住所なんて至るところに書くし、親が離婚している人なんていっぱい居るしな。

ただ一つ、気になっていたことがあった。
私は横浜のあるところで生まれたのだが、父と母はすぐに離婚した。もしかしたら私が生まれる前に離婚したのかも知れない。
さらには私の脳には変な特徴があって、幼子….、下手すると赤子の頃の記憶があるのだ。新しいことを覚えるのが苦手な癖に、一つ一つの場面とか人の言葉などを妙に記憶に刻んでいる。音と映像で思い出すのだ。

その時、私はリカちゃん人形で遊んでいて、母と祖母に言われたのを覚えている。『そんなにリカちゃんが好きか?』と意地悪な口調で「○○リカって名前にすれば良かったな!」と言われた。知らない苗字だった。
『よしなさいよ、赤ちゃんでも分かるかも知れないんだから!』と片方が制止していた。

その時の苗字が手紙に書かれている苗字と同じだった。

しかし、すぐにその手紙のことは忘れた。相方にも言わなかった。

が、今日二人で晩御飯を食べてくつろいでいると玄関のチャイムが鳴る。そしてインターフォンを覗くと、初対面の女性が立っている。もちろん知らない人だ。こんな夜更けに怖いなと思っていると「手紙を読んでいただけましたか?」と。

普通だったら開けないのだが、その顔を観て「なんで私に似てる?」と驚愕。まあ、ふくよかだけど、原型は似ているとしか言いようがない。

いや、読んだけど、詐欺かと思って。と、気が付いたら詫びていた。戸籍を辿って来たと言う。何で詫びたかと言うと、そっくりだったからだ。本当かも知れないので申し訳ないなと。

母も私も結婚したり離婚したり、何度も転居した。そんなふうに辿ることなんてできないだろうと思ったが、兄弟姉妹だと辿れるのだと言う。

相方も居てくれているし、小柄な女性、しかも自分に似ているということもあって中に入って貰って喋ったが、話し始めに相続はしませんよとハッキリ意思表示をした。

その後、父の話を聴いた。どんな人だったの?

彼女は一人の人の芸名と本名を言った。やっぱり聞いたことがある。小説家であり、絵描きであり、その後写真家になったとのこと。
『芸術や色彩が好きでした。』と。

その話を聴いて、ちょっとうるっと来た。
詐欺かも知れないけれど詐欺とは思えなかった。

私は、姿が母と似ているけれど、中身が全然似ていなかった。母は人の心に一切興味がなく、絵も文章も愛さなかった。色にも写真にも興味を示さなかった。いつも汚い言葉で人を罵倒していた。

もちろん私にも母のような部分があるものの、似ても似つかないもう半分はその人の性質かも知れないと思ったのだ。

そして、その父の父、つまりは祖父はもっと自由奔放な人で6回も結婚したと。
『Ohzaさんの祖父でもある私たちのお爺ちゃんは、梵天太郎っていうんですよ。ちょっと有名な昭和の彫師です。第一人者です。』

え。知ってるんだけど。

『もう、父も自由奔放だったけれど、父自身もお父さんが自由奔放で苦労したみたいです。6回も結婚した人ですから。』

話しているうちに我が妹と名乗る人も涙を流し、その向こうのソファーで我が相方がスマホに目を落としながら、聴き耳を立て、時折ビックリした顔をしている。不思議な光景だ。

戸籍から辿れても携帯番号までは分からなかったらしい。

妹と名乗る人が帰ったあと、非常に猜疑心が強く通常は警戒心を解かない相方が『あの人、痩せたら骨格までOhzaちゃんそっくりになるね。。。』とため息をついた。

ただ俄かには信じがたく、相続しないと意思表示したとしても何か実害があるんじゃないか?と警戒心を解かないでいたところ、神奈川県の端っこまでやっと帰り着いたその人から電話がかかって来た。

正確に言うと、出たらすぐに切れたので、かけなおしたところ、
『すみません!帰り着いたというショートメールを入れようとしたら電話をかけちゃって!すみません!』と叫びながら、ガラガラ、ドサドサと色んなものを落としている音が聞こえる。

・・・・・・。似ている。
そして、平日は仕事を休めないから住所だけを頼りにすっ飛んで来たところと言い、色々と非論理的なところが。
本当に妹かも知れない。

爺ちゃんが梵天太郎で父ちゃんが一色志のぶかも知れない。

もしそうであっても、そうでなくとも、爺ちゃんも父ちゃんも安らかに。二人の妹も幸多かれと願う。他人であっても願うし、詐欺だったとしても実害ない限り、お疲れさまと言いたい。

その後、相方と爺ちゃんや父ちゃんだという人をググってみたんだけど、私が横浜の生麦生まれてあることからして、色々と年代と場所が本当に重なることが分かった。妙に懐かしい。そして、ちょっと(?)壊れているところが似ているかも。

ちょっと心が激しく動いてしまったけれど、この話はこれで終わり。今は今を生きるのみ。

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