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懐かしい万華鏡

 久しぶりの海外旅行で気分が舞い上がっていた。

 珍しく長期の休みが取れたので、前々から行ってみたかった国に一人でふらっと出かけることにしたのだ。

 ここ何日かは、ガイドブックにも載っていないような海沿いの街に滞在し、あてもなく街中をぶらぶらしていたが、今日は週末で、宿の近くの広場で蚤の市が開かれるという。雑貨好きの私はそそくさと出かけてみることにした。まだ朝早いというのに、品定めをしている客と店主が、あちこちで、ああだこうだと値段交渉をしているのは、見ていて楽しい。

 並べられているものをぶらぶらと眺めていると、どう見てもガラクタにしか見えないものばかりで、こんなものを買う人がいるのかなあ…と思ってしまうが、品定めをしている客からしてみれば、正にお宝を狙っているんだろうな。

 私もお宝を狙ってみるか、と並べられているものをつらつらと見ていると、地べたに座っているおじいさんから声をかけられた。言葉はよくわからないが、どうもお勧めのものがあるらしい。見た目が無骨で、お世辞にも愛想がいいとは言えないけれど、外国人をだますような感じにも見えなかったので、そのおじいさんの並べている品を見てみることにした。どうやらアンティークものばかりのようだ。
 ちょっと高そうだなあ…と思い、一通り見まわしたところで退散しようと思ったが、緻密な細工の施された筒状のものに目が留まった。

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