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『Benjamin Francis Leftwich・To Carry A Whale』アルバムレビュー【音楽】

Benjamin Francis Leftwich

To Carry A Whale

はいということで本日はベンジャミンフランシスレフトウィッチでTCWを紹介していければと思うのですが、

ベンジャミンは僕がジョンメイヤーの次に好きなアコースティックシンガーなのですが、

彼が2011年に出しdirty hit labelと契約することなったアルバムlast smoke before the snowstormは個人的にアコースティックアルバムの中でも相当良いアルバムだと思います。

彼の繊細なアコギから繰り出される厚く優しさに包まれる時がまたやってきました。

前作の発表までアルコール中毒で苦しんでいた彼ですが、

今作はリハブの影響もありシラフで全ての曲を作り上げていて

ベンジャミン自身「タイトルのto carry a whaleの意味は、鯨を背負っていくことを重く自分を傷つけ大変だが、それは同時に美しく奇跡なんだ」とも語っていて、彼が抱えているお酒の問題や重圧や責任と向き合った美しいアルバムになっています。

1. Cherry In Tacoma

“I flew all the way out to Tacoma to tell you that I'd die to get to know ya, but the signal died, and I ended up sober”.という美しい歌詞が彼のもの悲しげな失恋のストーリーの終わりと始まりを同時に表現しながらも、乾いたアコギの音が彼の歩んできた道を映し出しバックングのオルガンは彼の記憶を表現しつつ同時に希望の光を作り出し、彼の痛みが開放されていく様が曲が終わるにつれ見えてくるアルバム開幕には最高の曲です。

3. Canary In A Coalmine

で1曲目の恋の終わりを始まりに変え、

First time I can see in full colour and I like what I see

という歌詞にもある通り新たな恋の始まりをもの悲しげなアコギとともに表現し

新たな人間関係を作り出すことの嬉しさや希望を歌う歌詞

同時にその人間関係が孕む危険性や不安定さをバッキングのサウンドで表現している

なんとも繊細な曲になっています。

4. Tired In Niagaraはこのアルバムの中で一番切ない曲でもあり、

ベンジャミン自身アメリカとカナダツアー中に希望が見えずに打ちひしがれていた時に書いた曲です。

マイナーで洞窟の奥の暗闇のようなフィンガーピッキングに

奥から助けてくれと言わんばかりのエコーがかったベンジャミンの声

最後の曲のフィナーレ

And they say Love is a whisper Free as a bird Is that God in the distance? Tired of the world

という歌詞が壮大に鳴り響き脳に焼き付きます。

5. Every Time I See A Bird

every time I see a bird, flying over my head, I get to think it could be you, coming down to check’.

Every time I see a bird Tumble out of the sky Realize you're still alive, still alive

20代の早い時期に父親を亡くしているベンジャミンが何度も書こうと書き留めていたけど

書けなかった曲です。

9曲目to talk to youでも語られるように父と会いたい気持ちが込められています。

今回のアルバムは前作のgratitudeとは違い、絶望から立ち直る

希望と悲しさ、哀愁が混ざり合っていて薄塩ではあるのですが、

言葉の一つ一つに重みがあります。

もちろん1st2ndのような明るさがある作品を期待している方は前作と今作は退屈に感じるかも知れませんが、歌詞の一つ一つを見ると熟考されて書かれていることを感じます。

6. Wide Eyed Wandering Child

この曲は絶望の淵にいる人たちのことを思い書かれた曲で、

You're living like a hurricane today Sleeping on the sand by the bay A little bit of cocaine and you're okay Wide eyed wandering childという歌詞から I'd love to tell you We're just the same in a way A million mistakes Brother, I see through All of the jokes that you make To deny how you acheという歌詞へのトランジションは世界は不公平で残酷だけど、

それでも彼は彼らに寄り添っていたいという救いの歌だと思いました。

7. Sydney, 2013

このアルバムの個人的に一番好きな曲で、

思い出を振り返りながら、父を失い恋人を失った2013年人生はどんどん重くなっていく中で

過去に関わった人たちも変わり今はいないけど

それを思い出しながら懐かしみ前に進んでいくまじでいい曲です。

Matthew had the coke Billy had the friends out Britney had the sweet, sweet smile That I could get my head 'round Frankie's in the night Pizza by the deep black water Bodies on the beach Cooking like a peach Either in my head Either out of reach

という歌詞が彼の思い出を追体験させてくれます。

10. Full Full Colour

アルバムの最後は嘘偽りがなく明るい曲で閉めたかったとベンジャミンが語るように、

この曲は絶望を認め立ち上がる曲です。

同時に辛い時期に一緒にいてくれた人のことが歌われていて。

その方はもう一緒にはいないけど、

それでも二人の彩に溢れた人生を望む彼の歌が

このアルバムで一番ポジティブなサウンド共に届けられます。

全体的に見ると

父親の死、アルコール中毒、恋人との別れを乗り越え、

1stで最高傑作を作り、2ndでその続きを

3rdで実験的になりと

2011年から続いた一つのチャプターが終わり

2021年からの新たなチャプターの始まりを感じさせてくれる、

哀愁と希望、そしてその裏にいつも見え隠れする

絶望と悲観を切ごとではなく

包み隠さずに真実の気持ちが表現されたアルバムでした。

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