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『WOLF ALICE・Blue Weekend』アルバムレビュー【音楽】

はいということで本日はダーティヒットレーベル所属のwolf aliceでblue weekendを紹介していければと思うのですが、

今作は前作から約4年ぶりのアルバムで時間が経つごとに洗練されソリッドになっていくバンドの音楽が、

グランジやシューゲーズ、ブリットポップというルーツを保ちながら鳴らされてます。

例えるのであれば、主人公の剣がどんどんカッコよくなっていくような感覚に近いかもしれません。

このアルバムを制作するにあたりボーカルのエリーは

「これまでレコーディングする時に考えるのは、今自分たちが鳴らそうとしているのは、この音はかっこいいかそれともこの音を皆が聴きたいかということは気にしてきた。でも、もうそんなことは気にせず自分が好きな音かどうかということに気がついたから。」

と語っていて、

バンドとしてもボーカルとしても自信がつき誰にも影響されない個性の確立がこのアルバでで感じ取ることができると思います。

特に前半の暗く重いグランジサウンドから中盤の優しく淡く湿っぽいブリットロックに徐々に変化していく様にうっとりしますし、グラデーションのように変化していく音色は聴いていて波が少なく好みが分かれる作品ではありますが、シューゲイジングサウンドが好きな方にはピッタリハマる作品だと思います。ただドラマティカリーの構成ではないので、波が少ない分ロックを期待するとつまらないと感じてしまうかもしれませんし、その気持ちはわからなくもないです。

1. The Beach

小さなドラムと淡いギター、優しいボーカルからアルバムが開幕し、起伏をつけながら曲が進行していきます。バッキングのボーカルエコーが振動し、それにつられ盛大になっていく様は、未知の空間に召されていくような感覚に近いです。

自分はどこに向かっていくのか分からないのに、なぜか周りの人たちに祝福されている。

そんな謎な気分になります。

2. Delicious Things

この曲を筆頭に今作は歌詞の韻の踏み方がとても心地よく、思わず体を揺らしたくなります。

それと同時にメランコリーなメロディーから神秘的なメロディーへのトランジション 、ボーカルとギターが完璧なマッチした時に曲が最高潮に達し、エコーのかかったバッキングは脳をグラングラン揺らします。

そのエコーは次の曲3. Lipstick On The Glassにも続いていき、ビョークのように深い霧の森の中に引き込まれていくような高い声がバッキングと同化し何層にも渡って重なる複雑な楽器の中に溶け込み、ボーカルが楽器と化した時全ての楽器が一つになりバンドの神秘性を際立たせます。

4. Smileはマイブラの雰囲気をどこか感じながらも

ハードロックでいて晴れやかな深夜という表現が正しいかは分かりませんが。

唸るエフェクトがギンギンに聴いたベースに後ろでなるシンセが

混ざり合いダークとライトの間で爆発を起こします。

そこに 

I ain't afraid, though my steps appear tentative 
I scope it out, then I throw myself into it 
I ain't ashamed in the fact that I'm sensitive 
I believe that it is the perfect adjective

と気持ちの良い韻がどんどんと踏まれていき、

シューゲイズとニューメタルが融合した時に新たなジャンルの誕生を見たような気持ちになりました。

5. Safe From Heartbreak

ここまで重く響いてきたサウンドを打ち消すように軽やかに打ち消すアコギとハイピッチな声で森の夜明けを想像させアルバムの転換点を創り出し

6. How Can I Make It OKではシンセのバッキングをベースに

ドラムなしで曲が始まり

 A moment to change it all/ Had life before been so slow?/ Urgency takes hold/ But to live in fear isn’t to live at all.”

という歌詞に

曲が進行にするにあたりミッドテンポのドラムとエアリーなシンセに特徴的なhow can I make itというサビはこのアルバムで一番頭に残るコーラスなんじゃないかなと思います。

どこかシンセとドラムのテンポに融合するハイピッチな声がHAIMの前作の雰囲気を感じさせ暑い夏を涼しくさせてくれます。

9. The Last Man On Earth

アルバムの終盤はバラードで沈め寂しさを生み出すピアノ

カートボネガットの猫のゆりかごという小説から着想を得た歌詞

And every book you take And you dust off from the shelf Has lines between lines between lines That you read about yourself But does a light shine on you?

という歌詞は人間の本質を表していて、

都合の良いところだけを自分と重ね合わせ、

何もしないまま結局神の御加護を受けられない人間を表した歌詞は

とても皮肉なことに自分自身に照らし合わせ自分に対して謳われているような気になりました。

それと同時に全ての物事に意味なんてないとも言われているような気分にもなります。

10. No Hard Feelings

でウォームなベースなリフの中で浜辺へとまた引き戻され

11The Beach II

で優しい夜の海の中に吸い込まれていく感覚が

優しいドラムと神秘的なギターから

マイブラのような狂気に包まれアルバムは閉幕していきます。

全体的に見ると新たな可能性に満ちたギターロックを

霧のようなサウンドにぼかしながらも

美しい声は自ら創り出した霧を切り裂いてく

それを憂鬱な週末という逆説的なタイトルで塗りつぶす

彼らの今ならしたい音楽が直接見えてきます。

とても人を選ぶ作品ではありますが90年代の殺伐としていて荒廃した雰囲気

街で言うとデトロイトのような雰囲気が好きな人にはぴったりの音楽だと思いました。

ただ、起伏の激しい音楽な好きな人にはあまり刺激的ではないと思います。

ただ確実にウルフアリスという一つの新たなジャンルがリバイバルという形で生まれる予感も同時にしました。

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