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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 103:命を削る愛と友情『夕方のおともだち』

今回お薦めするアマゾンプライムビデオはこちら。山本直樹原作、廣木隆一監督、村上淳主演の映画、『夕方のおともだち』です。

あのキャロル・キングの名曲「You’ve got a friend」をもじって、というか空耳的に「夕方のフレンド」としただけあって、これは主人公村上淳演じるSMクラブの常連客(しかも本物のM)と、菜葉菜(なはな)演じるアルバイトのS嬢の友情の話です(と少なくとも私は理解しました)。

とにかく映画を見てもらいたいので、内容についてはあまり触れませんが、菜葉菜演じるS嬢は恐らくS嬢としては失格でしょう。この人は優しすぎます。この人にとってS嬢はあくまで仕事です。一方村上淳演じるM男は本物です。この人が求めているのはおそらく死でしょう。死の疑似体験としてM体験になるのですが、SMクラブでできることはあくまで「プレイ」の枠内です。その一線を越えたら、S側も終わりですし、M側も文字通り、死という意味で終わりです。当然お店も終わりです。

では、死に至らせないでどこまでできるか。これは言ってみればS側とM側のチキンレースになります。そして当然勝つのはM側です。なぜならM側は死を恐れていない、むしろ望んでいるのですから。ですので、伝説のS嬢はその場を去ることとなります。その後釜的に入ったのが菜葉菜(なはな)演じるアルバイトのS嬢なのですが、M男である村上淳はその行為に最大限の敬意を払いますが、しかし、やはり伝説のS嬢を忘れることはできません。なぜなら彼女こそが彼を死の淵までに追いやってくれたのですから。しかし、というか、だからこそというかこの二人(村上淳と菜葉菜)の間には奇妙な友情が芽生えます。S嬢はM男を責めながらも生かせます。そしてM男はS嬢によって生きることの意義を知ることになるのです。そう、次の「You’ve got a friend」歌詞のように、二人の間にあるのはまさに友情以外の何物でもないでしょう。

君が落ち込んで悩んで
思いやりが必要で
何もかもうまくいかない時は
目を閉じて私を思い出して
そしたらすぐに 私はそこにいって
明るくしてあげる どんなに暗い夜も
ただ私の名前を呼べばいい
私はどこにいたって
走って行くよ 君にまた会いに
冬 春 夏 そして秋だって
ただ呼んでくれれば
そこに行くから

君には友達がいるんだ
もし君の頭上で空が
暗くなり 雲に覆われ
あの北風が吹き始めたら
気持ちをしっかり持って
私の名前を大声で呼んで
すぐに行ってドアをノックするから

「ドアをノックするから」、これはS嬢とM男との関係においては責める/責められるの関係となるでしょう。しかし、それは友情の表現なのです。恐らくこの映画において村上淳演じるM男が本当に求めていたのは、むしろノックされないことでしょう。しかし、菜葉菜演じるS嬢はそこを敢えてノックするのです。それは彼(村上淳)が求めていることではないかもしれない。しかし、そこを敢えて菜葉菜はノックするのです。もちろんM嬢として。アルバイト、仕事かもしれないが、そう割り切った上でも彼女はそこをM嬢としてのできる限りの力を使ってノックするのです。それは睾丸(の先っちょ)に釘を刺すことかもしれない。失神するまで首を絞めることかもしれない。しかし、それは彼に生き続けてもらいたいからなのです。

と、この映画、一見過激ではありますが愛とは何か、友情とは何か、を改めて考えさせてくれる素晴らしい映画です。性表現的に過激な部分はありますが、大人の皆さまには是非お勧めしたい映画です。

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