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リフレッシュ休暇のススメ #5

――2.”できること”と、”好きなこと”

■仕事の代わりに自分を埋めたもの

日常の9割が仕事!な私から仕事をごそっと抜き取ったら何が残るのか?本当は何が好きなのか?仕事に割いている興味とリソースを他のものに向けたら、一体どんな感じなのか?何でも好きになれるけど、本当に好きで自分のリソースを投資したいものって何か?

今まで後回しにして山積みになっていた宿題みたいな存在にいよいよメスを入れられる時が来たかも…日本を出る前にそんなことを思っていた。

実際に1ヶ月間、自分から仕事を意識的に追い出してみると、別のものが私の9割を埋めて、結局大忙しだった。大好きな音楽を聴きながらずっと来たかったNYをひたすら散歩すること、センスの良い雑貨屋さんを見つけて時間を忘れて何周もすること、グルメスーパーで惣菜をたくさん買って夕陽を見ながらピクニックすること、美味しい中東料理に出会うこと、セントラルパークでサイクリングすること、違う文化を垣間見ること、その日思ったままに文章を書くこと、絵日記を描くこと、朝ヨガをして朝を楽しむこと、日本にいる人のことを想像してそれぞれに違うお土産を選ぶこと、新しい人に出会って英語でお喋りすること、命の大切さを学び直すこと…私の好きなことは思っていたよりもたくさんあった。


■”好きなこと”を仕事にしてきた人

私はずっと昔から、そういう趣味の集合体みたいなことを仕事にして、しかもそれで他人に貢献できたら一番理想的だと思っている。自分の感覚で良いなと思ったことが他人にも受け入れられて、その人の為にもなって、世の中がちょっとだけ良くなったら、嬉しい。

父親も祖父も、自分で小さいビジネスをやり、命がけで危機を乗り越えながら家族を幸せにしてきた大阪の商人だ。私が子供の頃うちの家系にはサラリーマンがおらず、年始の集まりではおじいちゃんとお父さんが経営の話を隅でこそこそしている。それを私は遠くからちらちら見て、内心冷やかしている。我が家のお正月の光景だった。

20代で脱サラして大好きな音楽を仕事にしてしまった父は、「好きなこと仕事にするのは簡単ちゃうで!サラリーマンは恵まれてるよな、失敗しても給料減らへんやん!だから気楽にいこう。」と社会に出た私に何度言ったか分からないが、今の時代、雇われながらパラレルで大好きなことを自分で仕事にしたら良い、お父さんもそんな時代に生まれたかったよーと思っている、割と頭が柔らかいアラウンド還暦のビジネスマンである。

そんな家で育ったから、何となく私もサラリーマンだけで人生終わるような気がしなくて、自分自身で何かしたくなった時に足りないものがないように、ビジネスマンとしていち早く一人前になって準備をしておきたかったし、最低限お金は稼いでおかねばならなかった。入社してから今もそう思っているし、今までの上司にはそういうつもりで接してもらいたくて、いつも最初に伝えてきた。

それなのに、今の仕事も楽しくて、気づいたら今の仕事がゴールかのようになっていて、その先に向き合う為の時間が削られていた。忙しくてそれどころじゃないから、あれはもう夢のままでペンディングでもいいのかも?と思えてきていた。そんなタイミングでお休みを迎えた。


■私の”好きなこと”

前にも少し触れた通り、営業、マーケティング、数字、ロジックという今の会社での仕事のメイン領域は元々好きな領域ではなく、後天的に好きになったことであった。これが2つ目の重要な発見だった。楽しくて仕方がない今の仕事は、私が置かれた環境で何とか生き抜こうとした結果として好きになれたこと。たくさんの食わず嫌いを克服できて、心から好きになれて、ラッキーだった。

でも、私が先天的に好きなのは、もっとふわふわしたものだったことを、旅を通じて本格的に思い出してしまった。音楽、デザイン、食、スポーツ…そういのが混じった何か。もっと右脳とか感覚が大事な領域だった。学校の科目で言うと、副教科というやつだ。「絶対にやらなくてはならないこと」を取っ払って残ったのが、紛れもなくそれだった。


よく考えたらコミュニケーションスタンスの話と共通している。ここ数年は、社会的な自分が好きなことと、パーソナルな本当の自分が好きなことが一緒になってしまっていた。というより、今の仕事を難なくスピーディーに乗り切る為には、本当に好きなこと=邪念でさえあった。そこに構っている暇がなかった。私はここでも本当の気持ちに蓋をしていて、それがナチュラルになっていた。

そんな中でも、左脳的な仕事をする中で自分の右脳的センスはビジネスでどのぐらい通用するのかを誰にも言わずに密かに試していた。資料のビジュアルを人一倍こだわって作ってみたり、自分のセンスだけで新商品提案をしてみたり。そんな小さなトライアルがなまじっか上手くいくこともあり、それも楽しくて、マーケティングというものにどっぷりとハマってしまった。それはそれで十分良かった。でも大企業の小回りには限界があることも分かった。


■キャリアの再整理

仕事での能力発揮の話になると必ず出てくるWill/Can/Must(したいこと/できること/しなくてはいけないことの3要素でベン図のように整理し、その要素が重なる部分が大きいほど良い、という考え方)についてはもちろん考えたこともあった。でも、そもそもそれを考えるスコープが今勤めている会社のテーブル上での話になっていたことを見落としていた。

今回、頑張って、つまずいて、お休みをもらった結果、たくさんの価値観に触れて、物事を考えるスコープが広がり、気がついてしまった。会社という枠組みを超えた私の”できること”と“好きなこと”は違ったんだ。

この気持ちをまずはストンと受け入れてみる。自分がそうしたいんだから、逆らってはいけない。今までにみたいに我慢してはいけない。むしろ、”できること”と”好きなこと”を掛け合わせてみたら何が起こるんだろう?今はそれが知りたい。


いつかこんなことが私にもあるんじゃないか?と根拠もなく思っていた、絶対に見過ごしてはいけないターニングポイントだと思った。



つづく

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