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自問自答は自己肯定への第一歩だった

思えば、自分の“好き”を否定されるのが怖くて、そのうち自分の“好き”が何か分からなくなってしまっていた。

他人との自他境界はしっかりあるわりに、子供との境界は曖昧な親は、自分の好みから大きく外れるものを否定する傾向があった。彼女がそれなりの家に生まれ育ったが故に培われた洗練されたセンスが、自分とは到底文化レベルの違う相手と一緒になって知ることとなった世界観を嫌悪し、それに少しでも重なるものを否定していたのではないかと思う。
直接的に私の好みに関して何かを言われたことはなかったが、親の好みを肯定しなければならない強迫観念に囚われていた私は、いつしか彼女が受け入れられるようなものを選択するのが当たり前になっていた。
だから、特に身につけるものにおいて、私は自分の“好き”が何かが曖昧で分からない状態に陥っている。

そんな中、友人兼先輩が自問自答ファッションについてポストするようになり、“自問自答”というワードを目にする機会が増えた。単純接触効果というのは絶大で、あきやさんの著書をダイマされたときも、人からのおすすめをすぐには手にしないのに、すんなり読み始めた。

目のさめる思いだった。

そもそも数年前に韓国フェミニズムの脱コルセットという思想に触れてから「本当にこの装飾は自分が求めてやっていることなのか?」をずっと自問自答してきていた。だから、「似合うから」「社会人として無難だから」で選択してきたつもりだった、着心地の悪くて機能性の低い服は、自分のファッションの選択肢から既になくしている。これも自分を大切にするための選択だった。そう、すでに「自分を尊重するためのファッションにおける選択」は意識していたのである。
目のさめる思いだったのは、私が「自分で自分の人生を蔑ろにしている」ことを改めて突きつけられたからだ。
10代の頃からずっと、社会人になったら他人に自分のリソースの一部を開け渡し続けなければならない状況に、半ば人生を諦めていた。30を過ぎるまで、30まで生きながらえる姿を思い描けないまま、惰性で生きてきていた。いつからか諦めたことすら忘れていたが、ここ数年ほどフェミニズムに触れてそれに気付き、変わりたいと思ってたところのあきやさんの本だったのだ。それは、自分を愛するための生き方の入門書だった。
“制服化する前はどこか妥協をした服を着ていた”と書かれていたが、私は服だけでなくあらゆるものを妥協していた。一番は自分の部屋だ。「ちょっとボロボロだけどまだ使えるし、誰にみられるわけでもないし、どうせいつか死ぬんだから(お金かけなくても)」と、居心地が悪いのに模様替えをせず、使えるからと溜め込んだもの、いらないのに(円盤とかにくっついてくるせいで)増える推しのグッズで溢れた部屋。ここから手をつけた。年末年始でいくつかの粗大ゴミと結構な量のゴミを出し、一部の漫画や本を捨てた。カーテンとシーツも華やかなものからナチュラルでシックなものに変更した。まだ徹底していないし、本に至っては増えたりもしているが、それでも胸の空く思いだった。少しだけ身軽になった。少しだけ、なりたかった私に近付いた気がした。
そこから、財布も新調した。必要最低限のものだけ入れて、不要なものは持ち歩かないように。初めて入った地元デパートのサンローランは、思っていたよりもずっと優しくて、スタッフさんは親身に私の財布選びに寄り添ってくれた(地元も近かった)。そうやって選んだ私の特別は、手に取るたびに自分を大事にしていいと教えてくれる。

怒涛のように過ぎた3ヶ月を経て、私は、自分の“好き”を取り戻そうと決めた。
味覚や嗅覚といった五感の中でも好き嫌いがハッキリしやすいものに関しては、私の中に軸はある。フランス旅行で香水を作りに行ったくらいには。
そうではなく、ファッションのようなセンスが問われがちなものは、冒頭で述べた通り、親の呪縛から逃れられていない。自分で自分のセンスを疑ってるのもあり、一筋縄ではいかない。
なら、“嫌い”から“好き”を見つけ出すのはどうだろうか? ━━発想の転換である。
それから、思いつくたびにiPhoneのメモに記している。無意識下の自分の嗜好を言語化することで炙り出す作業なのだが、自分で認識していなかった好みを把握することができて目から鱗がボロッボロ落ちる。ともすれば誰かの好みを否定することと同義になりかねないため、おそらく詳細はnoteには記載しないが、数ヶ月続けてみて自分の“好き”の輪郭を彫り出したいと思う。

あきやさん、自問自答ファッションを発信してくださってありがとうございます。おかげさまで自分を肯定する術を掴めました。
しきこさん、私の手を引いてくれてありがとうございます。先輩のおかげでやっと生きていていいと思えるようになりました。もう少し自分を大事にしたいと思います。また今度遊んでください。


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