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野球小説が面白いアメリカ人クリエイターとシアトル・マリナーズの試合を観戦した話(1/2)

プロ野球のGMを描いたふたつの小説 ── ひとつはNPBの球団GMに関わるnote内連載小説、もうひとつはMLB球団GMの選手評価法についてのノンフィクション ── を2週間前に記事に上げました。

今回は、舞台がGMのオフィスではなく球場、という意味ではより純粋な「野球小説」、そしてその小説との出会いに関わる個人的エピソードを紹介します。

その小説に出会ったのは、映画化もされたMichael Lewis著「Moneyball」を読んだ時期と重なります。

米国のペンシルベニア州立大学に出張した私は、仕事を終え、State Collegeという大学町のホテルをチェックアウトして、空港まで送ってくれるようにシャトル・サービスを頼みました。

70過ぎに見えるコンシェルジュが、オレが送るよ、と送迎用のバンに案内してくれました。

「日本から来たのかい。あんた、英語で書かれた本は読むかね?」
客は私ひとりだったので、彼は気軽な感じで尋ねてきました。
「小説なら、たまに読むよ」
と答えると、
「お、小説を読むのかい!」
とうれしそうに反応し、名刺のような紙切れを手渡してきました。
「実は、息子が最近、小説を出版したんだ。本業はIT系の会社に勤めてるんだが、もし興味があれば……」
名刺大の紙には、作家名と小説の表題が書かれていました。

空港で検索すると、アマゾンで入手できることがわかりました。
(どうやら野球小説らしいな……)

帰国後に注文すると、2週間ほどで届きました。

「The Ninth Man(9番目の男)」
ご存じの通り、野球は1チーム9人で戦います。
そして、この本を読むと、「Man」の部分に大きな意味があることがわかってきます。

英語はわかりやすく、読み進めるうちにのめり込んでいきました。
野球好きの女性にぜひ読んで欲しい小説です。英語の勉強にもなるかも。

(以下のストーリーは、少々ネタバレですが……和訳が出ていないこともあり……)

主人公Caseyはマイナーリーグの選手だった父親に野球を仕込まれた女性で、父の「プロ野球選手になれ」という遺言に従って中学野球、高校野球と男子に混じり強肩・俊足の右翼手・左打者としてプレイを続ける。
彼女は高校を卒業後、年俸は少ないが、シングルAのプロチームと契約する。このチームは彼女を、いわば「客寄せパンダ」として雇い、「9番・ライト」として使うのだが、彼女はやがて実力で1番バッターの座をもぎ取る。
そして数年後、右翼手が故障したトリプルAチームが彼女の人気に目をつけ、メジャーまであと一息というこのクラスに昇格するのである。
女性リーグが存在した一時期を除き、MLBは基本的に男の世界である。Caseyはファンと同僚の双方からの偏見やセクハラ、スキャンダル報道などと闘いながらその実力を数字で示し、ついには……。

読了後、作者のBill Pennabaker氏にメールを送りました。

父上から推薦されて購入し、読んでみたこと、私自身も会社勤めの傍ら、小説を書いていることなどを書きました。

彼の返事には、シアトル郊外に住んでいること、彼のもとには、中学や高校で野球を楽しんでいる女性たちから好意的な感想メールが多く寄せられていることが書かれていました。
そして、もし仕事でシアトルに来ることがあったなら、イチローのいるマリナーズの試合を観に行こうぜ、とありました。

社交辞令の「お誘い」だったかもしれません。
しかし、私はこの偶然に驚きました。
1か月ほど後のこと、バンクーバーで実験に立ち会った後、シアトルで開かれる学会に参加する予定があったのです。

互いの日程を調整し、某年9月某日に会うことになりました。

〈2/2につづく〉

その後、真のアメリカ野球文化「AAAトリプルエー」も観戦しました!

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