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お代官様おそるべし ── 《賞金》を確定申告しないと年貢が…… (エッセイ)

確定申告はお済みでしょうか?
クリエイターの方で賞金付きの原稿やイラストなどデザイン募集に応じる方もいらっしゃることでしょう。その《賞金》には、既に金額に応じて一定率の源泉徴収がされていますが、改めて確定申告しないとエライことになる、という経験談です。

お代官様税務署」おそるべし。
税務署のやり口にたまげた失敗談をお話します。

20代後半の頃、某新聞の懸賞論文(という名のエッセイですね)に応募したことがありました。
テーマは「人間と科学」、賞金は100万円でした。
正確には、最優秀賞1件がハワイ短期留学と100万円、優秀賞5件が業界初の日本語ポータブルワープロと100万円という、破格なものでした。

給料とボーナス合わせても年に300万円に達していない頃の100万円はなんとも魅力的で、飲み会などで、
「賞金100万円とったら、こんな会社、辞めてやらあ!」
と公言していたくらいでした。
それを聞きつけた役員に、
「100万円ぐらいで辞めてしまっては、マズイんじゃないの」
と心配されたくらいです。

さて、最優秀賞は逃しましたが、優秀賞でワープロと100万円がいただけることになりました。
(このワープロが、今から思えばいろいろな意味でスゴイ代物でした)
100万円ゲット!、と思ったのですが、実際にはその1割10万円が源泉徴収され、90万円に減っていました。
これには落胆しましたが、それでももちろん、うれしくてたまりません。

その頃、会社からの給与に対する源泉徴収率は8-10%ぐらいだったと思います。もちろん、300万円未満から給与所得控除や扶養控除などを除いた「給与所得」に対しての課税率です。
賞金に対する率もあまりこれと変わらないので、まあ、放っておけばいいや、と考えて確定申告はしませんでした。
(給与所得以外で20万円を超えると申告必要、とは知りませんでした)

ところが、翌年受け取った税金の算出計算を調べると、前年の所得が異常に多く、税金も多額でした。所得金額は、前年末に会社から受け取った計算書にある給与所得に、100万円が足された金額でした。
申告していなくても税務署はしっかり把握しており、しかも勝手に全額を合算して、その足された額で税金が再計算されていたのです ── 当人に一切告げることなく。

これには驚きました。
お代官様はすべてお見通し ── だけならまだいいが、源泉徴収を含めると、年貢を二重取りしているではないか!
「なんて卑怯な奴らだ!」

まあしかし、修正申告しなければ、と手続きを母に依頼しました。
母が《賞金》の扱いを調べると、次のことがわかりました。

この場合の《賞金》は《一時所得》に該当し、賞金額から50万円を控除し、さらに残りの2分の1の金額を給与所得と合算して申告する。

国税庁HPより抜粋

つまり、100万円ではなく、
(100万円 ー 50万円)/2=25万円
が課税所得になります。

修正申告を行うと、なんと!20万円以上税金が戻ってきました。
ちょうど子供が生まれたばかりで、とても助かったことを憶えています。

給与外所得が20万円以上あったのに申告しなかったのは確かに落ち度でした。けれど、お代官様税務署」はお咎めをするでもなく、勝手に年貢税金を水増ししていたのでした。

お代官様はあこぎなお方ですだ!

……ブルルルッ!

副賞の《使えないワープロ》の話は……

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