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【口自慢の仕事下手】(新釈ことわざ辞典)記事版

有能な経営コンサルタントに惚れ込んで後継者に据え相談役に退いた創業者が、権限移譲後ほどなくして直面した会社存亡の危機に、頭を掻きむしりながら現社長に浴びせる罵声。

30代の終わり頃、所属企業の業務改革の一環として、外部の経営コンサルタントと合同チームで仕事をしたことがある。

その時に感じた有能なコンサルタントの条件は、
① 多種多様なデータを保有し、クライアント経営陣を説得するのに最適なデータを即座に取り出せる状態にしてある有能な組織と、
② クライアント企業のデータをファクトとして対照しながら、最適な用語を使用して説得してくる有能な個人
── ということだった。

そんなの、当たり前じゃねーか! と言われるかもしれないが、①はともかく、②の『最適な用語』を使う能力はたいしたものだ、と何度か思った。そのひとつは『効果的な比喩表現』であり、ひとつは『ポジティブな言い換え』だった。

ただ、そこから出てくる結論は、
── 例えば、
「御社はA事業に原資を集中した方がいい。そのためにもB事業は切り離した方がいい」
というように、けっこう当たり前のことだったりする。

当時、米国の友人に、今、外部コンサルと仕事をしている、と話したら、
「Oh! I know "management consultants". You pay them for what everyone already knows(コンサルは、みんなが既にわかっていることを教えて金を取る)
と皮肉っぽく笑った。

けっこう当たり前のこと ── それはまったくの事実だ。
ただ、内部の人間はどこに問題があるかわかっていても、B事業を推進する有力幹部や重要な取引先との関係など、幾重ものしがらみがあってなかなか決断ができない
そこを、外部の人間が客観的データを掲げて提案する ── そのことが重要なのだ。

当時の経営トップが言っていた:
「だから、外部コンサルは常に『外部』であり続けることが重要で、何度も一緒に飲みに行ったりして、生立ちがどうだとか、子供が今受験だとか、人間的な部分がわかってしまったりすると、肝心の客観性が薄れて説得力に翳りが出る」

優秀なコンサルの『言語能力』は高く、『比喩』や『言い換え』を巧みに使いながら、彼らの提案に反対する人の機嫌を損ねないように、かつ、納得せざるを得ない論法であらかじめ設定した結論へと導いていく。

そうした外部コンサルを受けているうちに、創業社長のような人が優秀なコンサルに次の経営を託そうとした例をいくつか知っている。
前述したような『不採算事業の切り捨て』のようにマイナスをゼロにしていく仕事の間は、このコンサル出身経営者は極めて有能であり、成果を挙げる。
しかし、プラスを大きく ── 主力事業を大きくしていく業務になると、途端に難しくなる場合が少なくない。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

海軍大将・山本五十六の格言

コンサル個人の優秀さが前述②の部分に特化されており、
『言ってきかせて』
は得意
なんだけれど、その前の、
『やってみせ』
は苦手
な場合があるんでしょうね……。

── やはり、餅は餅屋、ある能力を見込まれ、別のタイプの重責を打診された時には、チャレンジもいいけれど、自分の特性をよく考えてみることが大切かもしれませんね。

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