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スカーチョの罠

ひさびさに自分の服を買った。

元来、手元にあるお金はどちらかというと食べものや本や旅に投資してしまうほうだ。だから以前から服は後回しになりがちな性質ではあったのだけれど、子が生まれてからというもの、その優先度はさらに下がった。子連れでショッピングセンターへ出かける機会は多いが、自分の服なぞ見ようとも思わない。だからこそある日、何の前触れもなく唐突に思い立つのである。そうだ、自分の服を買おう。

無論お察しの通り、「子どもが生まれてから云々カンヌン」というのは言い訳にすぎない。巷ではロングスカートやガウチョパンツなど、落ち着きと女性らしさを兼ね備えた素敵な装いをさらりと着こなし、笑いながらベビーカーを押すママさんたちを見かける。そのたびにわたしは、いったいこの方たちのように涼しげに微笑むためには、どこでどのような鍛錬をつめばよいのかと自分の心に問うのである。

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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