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フィジーの蟻

砂糖をぶちまけた。

キッチンでかぼちゃの煮物をつくろうとしていて、うっかり手をすべらせたのだ。

「あっ」

と思ったときには、砂糖のビンが空を飛んでいた。

ああいう瞬間だけ、景色がスローモーションに見えるのはなぜだろう。

気づいたら砂糖は床に「ばしゃん!」と見事にちらばっていて、不可思議な時の流れはもとに戻り、何事もなかったようにたんたんとつづいている。

床いっぱいに砂糖をぶちまけたまま。

ほんとう、あの一瞬のスローモーションはなんなんだろうね。

さて床に散らばったサンド・アートのような砂糖を見て、反射的に「あ、掃除しなきゃな」と思う。

砂糖はほら、ちゃんと掃除しないと。

棚と床のすき間とか、フローリングの継ぎ目とかさ、ちょっとでも残ってると蟻とか来ちゃうし。

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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