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ヒロイン




あたたかく湿った風が
はえそろった新緑をはためかせる。
春のあらし
陽が沈みきって予感を置いていった。
確信する、きみが泣いている。

花びら渦巻かす風を、
つま先で操ってきみの窓を目指す。
わたし、もう知っている
この背にしかせおえない色のマントを。

雲は急ぎゆく、
おとめ座がささやく、
はなやいで木々は輪郭をやわらげる。
パーティを抜けて
雲と並走して
わたしはとんでゆく。

待っていて、
必ずそこに降り立つから。
助けてあげる、と
覚悟して言えたなら永遠だって許して。

夜空。
きみの街が見える、
ついで、
きみの窓が見える。

ちいさなつむじ風を降りて、
トン、と、つま先をつける。
大丈夫だと告げにきました。
ドアをノックする、
鍵のひらく音が、胸に響きわたる。

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