響月 光(きょうげつ こう) 詩人。小熊秀雄の「真実を語るに技術はいらない」、「りっぱとは下手な詩を書くことだ」等の言葉に触発され、詩を書き始める。私的な内容を極力避け、表現や技巧、雰囲気等に囚われない思想のある無骨な詩を追求している。

響月 光(きょうげつ こう) 詩人。小熊秀雄の「真実を語るに技術はいらない」、「りっぱとは下手な詩を書くことだ」等の言葉に触発され、詩を書き始める。私的な内容を極力避け、表現や技巧、雰囲気等に囚われない思想のある無骨な詩を追求している。

記事一覧

エッセー「地球的正義とは何か?」& 詩

エッセー 地球的正義とは何か? ~若者の反戦運動を考える~  僕が子供の頃は、テレビや映画で時代劇全盛の時代だったから、母親に連れられて近所の映画館に行き、中村錦…

詩集「戦争レクイエムⅠ」

地獄の鼎談 閻魔●ようこそ地獄へ はるばると 意外なことに ここは果てしなく続く芥子畑 現世で踏み潰された悪人どもの魂を 痺れる力で癒そうと 鬼たちが汗を流して花…

エッセー「寝そべり族は超人か⁉」& ショートショート「雪男」

エッセー 寝そべり族は超人か⁉  日本人ならほとんどの人が、「富国強兵」という言葉を知っている。この言葉は、明治政府が生み出したスローガンで、日本が欧米先進国に…

エッセー「天才とは⁉」& ショートショート「アラジンと40人の浮気族」

エッセー 天才とは⁉ ~モーツァルトを考える~   「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」とエジソンは言ったそうだが、後に「1%のひらめきがなければ99%の努…

エッセー「どいつもこいつも麻薬中毒」& ショートショート「人類野生化再生プロジェクト」

エッセー どいつもこいつも麻薬中毒 ~ギャンブル依存症を考える~  痛みには「肉体的な痛み」と「精神的な痛み」がある。肉体的な痛みは負傷や炎症などに伴う苦痛で、精…

エッセー「ゴジラ、悲しき道化師」&ショートショート「ブラック・マウンテン」

エッセー ゴジラ、悲しき道化師  大分昔、手に火傷をしたら食用油をかけろというのが医学常識の時代があった。僕が上野の飲み屋で酒を飲んでいたとき、店員が熱い油を手…

エッセー「トロイメライ」& ショートショート「黄金姫」 

エッセー トロイメライ ~I Have a Dream~  シューマンのピアノ曲集『子供の情景』に、『トロイメライ(夢想)』という曲がある。誰でも一度は聞いたことがある名曲だ。…

エッセー「小澤征爾の思い出」& ショートショート「亡き囚人のためのパヴァーヌ」

エッセー 小澤征爾の思い出  小澤征爾が亡くなった。偉大な足跡を残した指揮者だったので残念だ。若い頃小澤に入れ込んで、大谷ファンのように海外にまで行って演奏に触…

エッセー「東京2030~摩天楼の幻想~」& ショートショート「恋文」

エッセー 東京2030 ~摩天楼の幻想~  以前テレビか何かでブラジルの荒野に林立する大きな蟻塚を見て、万物の創造主が存在するなら、その神様はあらゆる生物が存続するた…

エッセー「一挙両得、アリの巣防災都市」& ショートショート

エッセー 一挙両得、アリの巣防災都市  東京都は外国からのミサイル攻撃に備え、居住者たちが一定期間滞在できる地下シェルターを都営地下鉄麻布十番駅に造る予定だとい…

エッセー「ひょっこりダーチャ島」& 詩

ひょっこりダーチャ島 ~浮島で難民を癒す~  大分昔のNHK子供番組に『ひょっこりひょうたん島』(1964~1969年)という人形劇があった。この島は瓢箪の形をした浮島で、…

エッセー「芸術は爆発だ!」& ショートショート

エッセー 芸術は爆発だ! ~ムリヤリ芸術二元論~  冬になると野原は枯れた植物の死体で満たされ、人々は寒さで体を縮込ませながら、再び訪れる春のことを思い浮かべる。…

エッセー「議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで!」& 詩

エッセー 議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで!  自民党はいま、パーティー券のキックバック不記載問題で危機に瀕しているが、報道を見ていると一部の有力者を除き…

エッセー「シンギュラリティ、あるいは人類の敗北」 & ショートショート

エッセー シンギュラリティ、あるいは人類の敗北  2045年にシンギュラリティが来ると予測したレイ・カーツワイルは2014年に、『ハイブリッド思考の世界が来る』というタ…

エッセー「熊戦争とパレスチナ戦争を考える」& ショートショート

エッセー 熊戦争とパレスチナ戦争を考える  今年は異常気象で木の実の出来が悪いらしく、ふだんは人里に下りてこない熊たちが空腹のあまり人家の庭に現れ、人を襲うなど…

エッセー「メタバースの未来 」& 詩

エッセー メタバースの未来 ~悲しみの避難所~  二重人格を描いた小説に、スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』という名作がある。医者で社会的地位のあるジキル…

エッセー「地球的正義とは何か?」& 詩

エッセー 地球的正義とは何か? ~若者の反戦運動を考える~  僕が子供の頃は、テレビや映画で時代劇全盛の時代だったから、母親に連れられて近所の映画館に行き、中村錦之助の主演映画を良く観たものだ。銭形平次や水戸黄門もテレビで良く見ていた。チャンネル権が母親にあったからだ。しかし流石に高校生になると、見ることにウンザリして、自分の部屋に引っ込むようになったが、夕食中にやっていると飯が不味くなったのを覚えている。  毎回ストーリーは変わるが、そのパターンはどれも似たり寄ったりで

詩集「戦争レクイエムⅠ」

地獄の鼎談 閻魔●ようこそ地獄へ はるばると 意外なことに ここは果てしなく続く芥子畑 現世で踏み潰された悪人どもの魂を 痺れる力で癒そうと 鬼たちが汗を流して花を摘む 大天使ミカエル率いる天国の軍団に対抗すべく 地獄の閻魔軍団に迎え入れようその前に ザックリ割れた心を縫い直すのだ 人間だけに設えたステージなんぞありはしないが地獄は別だ 知恵の実を食べたのは君たちだけだが悪知恵の実もついでにくすねた おかげで人災対策本部が急きょ設置したのが地獄だ 食えん奴等の毒消し施設さ

エッセー「寝そべり族は超人か⁉」& ショートショート「雪男」

エッセー 寝そべり族は超人か⁉  日本人ならほとんどの人が、「富国強兵」という言葉を知っている。この言葉は、明治政府が生み出したスローガンで、日本が欧米先進国に追い付くため、国を豊かにし、強い軍隊を作ることを念じて掲げたものだ。しかし最近の物騒な世界情勢を見ると、このスローガンは日本だろうが先進国や発展途上国だろうが、すべての国の国是になっていることを実感し、いまも昔も世界は変わっていないものだとつくづく思い、苦笑している。何となれば、多くの国の人々が自分を貧乏人だと思って

エッセー「天才とは⁉」& ショートショート「アラジンと40人の浮気族」

エッセー 天才とは⁉ ~モーツァルトを考える~   「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」とエジソンは言ったそうだが、後に「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になると言ったのだ」と訂正したらしい。教育者は最初の言葉を広めて、「努力が大切だ」と子供たちに諭したいらしいが、その方向性が正しいとすれば、結局我々はダイヤモンド鉱山で働く労働者のようなものだということになる。  仮に天才を夢見る凡人がいたとして、彼は1%のダイヤモンドを見つけるために汗水たらして地

エッセー「どいつもこいつも麻薬中毒」& ショートショート「人類野生化再生プロジェクト」

エッセー どいつもこいつも麻薬中毒 ~ギャンブル依存症を考える~  痛みには「肉体的な痛み」と「精神的な痛み」がある。肉体的な痛みは負傷や炎症などに伴う苦痛で、精神的な痛みは心が傷ついたときに伴う苦痛だ。そのどちらとも、神経の感覚なので、感覚器官の個性によって鈍感であったり敏感であったりする。肉体的痛みの場合、人によっては傷の痛みをあまり気にしない者がいれば、ちょっとの痛みで泣き叫ぶ者もいる。精神的痛みの場合も、大きなショックでもめげない者がいれば、ちょっとのショックでめげ

エッセー「ゴジラ、悲しき道化師」&ショートショート「ブラック・マウンテン」

エッセー ゴジラ、悲しき道化師  大分昔、手に火傷をしたら食用油をかけろというのが医学常識の時代があった。僕が上野の飲み屋で酒を飲んでいたとき、店員が熱い油を手にかけ火傷をした。僕は「早急に患部を冷やせ」という新しい医学常識を知っていたから、直ぐに水をかけろとアドバイスしたが、彼は酒に酔った僕をジロッと見て、「騙されはしないぞ」といった顔付きで薄笑いしながら横の油をかけ始めた。僕は気分を害し、それ以来その店には行っていないし、彼の火傷がどうなったかは知らないが、きっと病院に

エッセー「トロイメライ」& ショートショート「黄金姫」 

エッセー トロイメライ ~I Have a Dream~  シューマンのピアノ曲集『子供の情景』に、『トロイメライ(夢想)』という曲がある。誰でも一度は聞いたことがある名曲だ。『子供の情景』は、恋人であるクララの父親が二人の結婚に猛烈に反対していた時期に、彼女から「時々あなたは子供に思えます」と言われたのをきっかけに作曲した小曲の中から、13曲を選んでまとめたものだ。彼は自分の子供時代を夢想してこの曲集をつくったらしいが、きっと相手の父親と裁判までして結ばれるという骨肉の争

エッセー「小澤征爾の思い出」& ショートショート「亡き囚人のためのパヴァーヌ」

エッセー 小澤征爾の思い出  小澤征爾が亡くなった。偉大な足跡を残した指揮者だったので残念だ。若い頃小澤に入れ込んで、大谷ファンのように海外にまで行って演奏に触れることがあった。日本で小澤の演奏に接するのは当たり前の話だったが、欧米では「東洋人に西洋音楽が分かるか」と思われていた時代だ。そんなときに、東洋人の指揮者が西洋人ばかりで構成される名門オーケストラを指揮し、聴衆もほぼ西洋人だったという現象は、大リーグで日本人選手がホームラン王を獲得するのと同じような快挙だった。ファ

エッセー「東京2030~摩天楼の幻想~」& ショートショート「恋文」

エッセー 東京2030 ~摩天楼の幻想~  以前テレビか何かでブラジルの荒野に林立する大きな蟻塚を見て、万物の創造主が存在するなら、その神様はあらゆる生物が存続するために必要最低限の知恵を与えてくださったのだろうと考えたことがあった。イギリスの国土と同じ面積に、高さ3メートルにもなる蟻塚が連なる。それらの土の量を合わせると、ギザのピラミッドの4000倍に相当するという。蟻塚は土と排泄物で造ったシロアリたちの城で、内部は蟻道や居室空間が張り巡らされ、数十万匹のアリたちが共同生

エッセー「一挙両得、アリの巣防災都市」& ショートショート

エッセー 一挙両得、アリの巣防災都市  東京都は外国からのミサイル攻撃に備え、居住者たちが一定期間滞在できる地下シェルターを都営地下鉄麻布十番駅に造る予定だという。今後は順次増やしていくために、次なる候補地も物色中らしい。民間企業に対しても、ビルの建設時にはシェルターに転用可能な地下空間を造るなどの協力を期待しているという。僕は一昨年『地底人間への誘い』というエッセーで、地下シェルターの必要性に言及したが、始めの一歩が始まったことを嬉しく思っている。半面、ウクライナ戦争が起

エッセー「ひょっこりダーチャ島」& 詩

ひょっこりダーチャ島 ~浮島で難民を癒す~  大分昔のNHK子供番組に『ひょっこりひょうたん島』(1964~1969年)という人形劇があった。この島は瓢箪の形をした浮島で、海の上を漂流している島民が織りなす空想物語だ。その島名やキャラクター名を借りた『漂流劇ひょっこりひょうたん島』が2015年にシアターコクーンで上演され、原作者の親族が「断りがなかった」と苦言を呈したという。空想物語といっても、要は水に浮く材料を使って島を造れば浮くわけで、浮島自体が夢物語というわけではない

エッセー「芸術は爆発だ!」& ショートショート

エッセー 芸術は爆発だ! ~ムリヤリ芸術二元論~  冬になると野原は枯れた植物の死体で満たされ、人々は寒さで体を縮込ませながら、再び訪れる春のことを思い浮かべる。僕は近くの河原に立って荒涼とした景色を眺めながら、最初に色とりどりの花たちに埋め尽くされた春の河原を思い浮かべ、次に色とりどりの観衆に埋め尽くされた大リーグの開幕試合を思い浮かべる。花は花でも。大谷翔平という花形選手の躍動する姿をイメージしたわけだ。春の花と大谷さんでは、少しばかりニュアンスが違っているが、似ていな

エッセー「議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで!」& 詩

エッセー 議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで!  自民党はいま、パーティー券のキックバック不記載問題で危機に瀕しているが、報道を見ていると一部の有力者を除き、多くの国会議員はパーティーや支持者の冠婚葬祭、地元後援会のイベント出席や自身の講演会等々で日々忙殺されているらしい。そうした支持者たちとの交流の中で金が使われ、昔風にいえば菓子折りの底に札束を置くことも間々あるといった話だ。裏金工作で再選が叶ってバレなければ、一応政治の専門職を続けられるが、理化学研究所などの専門職

エッセー「シンギュラリティ、あるいは人類の敗北」 & ショートショート

エッセー シンギュラリティ、あるいは人類の敗北  2045年にシンギュラリティが来ると予測したレイ・カーツワイルは2014年に、『ハイブリッド思考の世界が来る』というタイトルで講演し、人間の思考は生物学的思考と非生物学的思考のハイブリッド(組み合わせ)になると断言している。生物学的思考は人間が持っている大脳新皮質による思考、非生物学的思考はAIによる思考の意味だ。  彼によると、2億年前のネズミみたいな初期哺乳動物が、最初に切手大の薄い大脳新皮質を獲得したのだという。これ

エッセー「熊戦争とパレスチナ戦争を考える」& ショートショート

エッセー 熊戦争とパレスチナ戦争を考える  今年は異常気象で木の実の出来が悪いらしく、ふだんは人里に下りてこない熊たちが空腹のあまり人家の庭に現れ、人を襲うなどの悪さをしている。これから異常気象は続くし、それが当たり前になれば異常も通常となるだろうから、熊のお宅訪問も日常茶飯事になるに違いない。同じようにウクライナの領土にロシア軍が進軍して居座れば、最初は世界が異常事態と見なしていたのが、そのまま時が経つうちに世界も目を瞑る日常風景になる。それが嫌だというのなら、熊もロシア

エッセー「メタバースの未来 」& 詩

エッセー メタバースの未来 ~悲しみの避難所~  二重人格を描いた小説に、スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』という名作がある。医者で社会的地位のあるジキル博士には抑えがたいサディズムの欲望があり、忌むべきその欲望を切り離すことのできる薬を密かに開発した。この薬を飲むとたちまち別人格の怪物ハイドに変身し、殺人や傷害などの悪行を行って欲望を発散させることができるようになった。有名な小説なので全体の粗筋はカットするが、これはあくまで物語だ。疾病としての二重人格や多重人格は