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#28 山姥のやうな足取りきのこ山(渡部志津子)/きのこの秋巻

山姥のように、きのこを採る

色とりどりのきのこが山に生えていたら・・・?
きっと「うっしっし」みたいな顔つきになるんだろう、どんな美人さんでも。足取りも、気がつけばガニ股になるかも。

そう、山姥みたいに。

山姥のやうな足取りきのこ山  渡部志津子

山姥の表情や動きまで見えてくるようなたのしい俳句だ。「山姥のやうな足取り」というと、のしのしガニ股で歩いているけど、軽やかで音がない感じがする。(みなさんはどう思いますか?)

山姥ははなぜか忍び足でカサコソ山を歩き、きのこをつまみあげて眺めて、にやり。ぽんと背負ったカゴに投げ入れる。魔女も同じかな。きのこを目の前にして、西洋だろうが東洋だろうが、同じ反応をするのかもしれない。

きのこは姿形もその生態も摩訶不思議だ。いつの間にかところどころに生え、あまり労なくして採れる。そのうえ、旨い。栗などとはちがって、さっと炙るだけでごちそうだ。だから、「うっしっし」。

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Photo by carboxaldehyde from Pexels

秋を巻くからきのこの「秋巻」。

舞茸、ひら茸、エリンギ、ぶなしめじ。
わたしは山姥ではないが、とりどりのきのこをスーパーや産直市場で見るだけで「うっしっし」という顔になる。

年中食べられるきのこだけど、特に秋はきのこが食べたくなるのはなぜだろう。こっくりと深いもの(焼き芋や栗など)が食べたくなるからかな。

バターソテーにしてもいいし、そこにお醤油やレモンをきゅっとしぼっても・・・。きのこをミックスするとそれぞれのきのこのよさが引き立っておいしい。口の中で、豊かな山の幸が重層的に広がる。

炒めたきのこを、春巻の皮で巻いて、オリーブオイルで香ばしく揚げ焼きにしたらどうだろう。秋を巻くから秋巻。山の実りをぎゅっと閉じ込める。

山姥、もしくは魔女の気持ちになって、豪快にきのこを数種類組み合わせてバターでソテーし(にんにくもお好みで)、醤油をほんのすこし香りづけ程度に。さいごに黒胡椒をガリガリ挽く。

春巻の皮にすばやく包み(おいておくと油がしみでるので、ここはすばやく)、多めのオリーブオイルでパリッと揚げ焼きに。

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すだちをしぼって食べれば、再度「うっしっし」。パリッと香ばしい皮をかめば、濃いうまみがぎっしり。

冷たい白ワインやビールとどうぞ!

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きのこが余ったら、タッパーにいれておけば4〜5日はもつのでお肉やお魚のつけあわせに。

作者とおすすめの本

作者についての私的解説
渡部志津子(わたなべ・しづこ)1944−
俳誌「狩」(鷹羽狩行主宰)同人。画歴も長いからか、「待たされてハンカチの皺ふやしけり」「ラムネ飲む青空のほか何も見ず」「紅梅やひと寄り添へば影も添ひ」など、ぱっと風景が広がり、詩情が胸にじわりと残る句が特徴。すなおで、視点がやさしく、ああこんな五感を持ち合わせて日々を過ごせたら…と思うような潤いと安らぎを読者に与えてくれる。

「これからも私なりの自然讃歌、人間讃歌を詠み続けてゆこうと思っています」と句集『画架』のあとがきにある。謙虚なお人柄なんだろうな、と思う。同時に、絵という表現法も持っていながら、俳句での表現も追求しているのがおもしろい。

おすすめの本


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