見出し画像

【映画感想】すずめの戸締まり

今更ながら、「すずめの戸締まり」を観てきました!
とても良い映画だったので、自分が魅力に感じたポイントを書き残しておきます。

※本記事は微量ではありますが、映画本編のネタバレを含みます。
 本編を観ていない方はご注意ください。

・公式サイト
https://suzume-tojimari-movie.jp/

①舞台が移り変わっていくワクワク感

「君の名は」の舞台は岐阜と東京、「天気の子」の舞台は東京に限られていた。しかし、今作は舞台が西から東へと移り変わっていく。この”移動”することは、今作のポイントだと感じる。実際、作中では主人公の鈴芽はエリアを移動するごとにスマホの地図アプリを開いて、出発地からの距離を調べる描写があり、明らかに主人公が移動していることを意識させていた。

この”移動”することには二つの魅力を感じた。一つは画面に映る景色。
舞台となるエリアが田舎の港町、地方都市、大都市、被災地とどんどん移り変わっていくので、映像としても見ごたえがあった。また、扉が出現する場所も廃墟という共通点はありつつも、廃村、遊園地、地下空間、災害地跡とバラエティに富んでおり、観ていて飽きなかった。

もう一つは移り変わる人間関係。
鈴芽の移動にあわせて、新しいキャラクターが次々に登場するのも魅力だ。主人公は巻き込まれる形で移動することを迫られるも、行く先々で色々な人々と関係を築いていく。コロナで人と人との関わりが減少した昨今、作品の中で描かれていたような偶然出会った人との心温まるコミュニケーションは一際輝いて見えた。

②アニメが持つ魅力を活かしたキャラクター

今作で特に心を惹かれたキャラクターは走り回る椅子(草太)だ。ダイジンによって、椅子へと変えられた宗太は、圧倒的に不利な状況でも務めを果たすべく、エネルギッシュに走り回る。ここまで椅子が縦横無尽に走り回る映画はこれまで見たことがない。正直、走り回った瞬間からワクワクが止まらなかった。

これが仮に実写映画だった場合、椅子はCGとなり、どうしても映画の中で浮いた存在になってしまうだろう。しかし、アニメであればそういった違和感は少なくできる。人々と椅子を同じタッチで描けるからこそ、世界へと馴染ませることができる。

「椅子が走り回る」、この字面だけでも荒唐無稽な感じが半端ない。
しかし、この荒唐無稽さをエンターテインメントとして強い武器に変えることがアニメの大きな魅力の一つだと思う。画面の中で世界をまるごと構築することで、違和感を自然さへと変える。アニメは現実では有り得ない設定を描くときにこそ、光り輝くのだと改めて感じさせてくれた。

また、椅子が走り回る場面では、その姿を不思議がって写真を撮る人、驚いて避ける人が描かれており、映像の世界が現実と離れすぎないような工夫がされている点も良かった。仮に椅子が走り回っている姿を見て、不思議に思う人がいなければ、そこは完全なるファンタジー世界となる。そうなれば、あくまで現実に即した世界という前提が崩れ、作品としてバランス感覚が取れなくなるだろう。

③美しくもあり、恐ろしくもある常世の描写

扉の向こうに見える常世は、星が光り輝く夜空と一面に広がる広大な草原が描かれており、全面的に美しさが目立った。この景色の美しさは新海監督の作品らしい唯一無二の魅力だ。描く者の純真さな視点を反映したような澄んだ色使い。過去2作品にも共通して言えることだが、新海監督が描く、自然の美しさをファンタジーとしての誇張で強化した表現は素晴らしい。

しかし、後半に鈴芽が常世の中に入った際は、辺り一面が業火で包まれており、見ているだけで絶望感を感じる光景だった。東日本大震災が発生した当時、津波の後に火災が発生し、長い間燃え続けていた、というニュースを見た記憶がある。あのような風景が実在したと思うと、背筋が凍るような思いだ。あまりに恐ろしく、そして印象的な描写だった。

総合して、アニメ映画としての完成度が非常に高い作品だと思う。
新海監督が好きでない人にもオススメしたい。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?