日本語教師が入管へ行って学校の不正をぶちまけた話
私の記事では主に警察官の時や都内某日本語学校で専任講師をやっていた時の思い出深い話を紹介しています。
今から数年前、私が都内の日本語学校で専任講師をしていたときの話です。
突然入管の立入調査がありました。
この時、なぜ入管が来たのかは我々社員は全く分かりませんでした。
しばらくして学校の共有ファイルに報告書を見つけた時、その答えが分かりました。
学校の専任講師が増えたことを装う専任講師の名義貸しの報告書があったからです。
専任講師の名義貸しとは、学校が非常勤の先生にお金を払って専任講師として勤務しているように偽装してもらうことです。
もちろん実際には専任講師としては働いていません。
しかし、留学生に対する必要な専任講師の数というのは規則で定められています。
だから学校は入管をごまかすためにこういう報告書を作ったわけです。
内容としては「非常勤の〇〇先生に専任講師への就任を打診したところ、引き受けてくれました。だからこれからは日本語学校の基準を守れます。大丈夫です。」みたいな内容の報告書になります。
その報告書を見つけた私は学校による数々の不正を伝えるために、同僚と入管に行こうとついに覚悟を決めました。
(「日本語学校で授業中に入管が入ってきた」①〜③でも関連した内容を書いていますが、この記事だけでも分かる内容です。是非読んで行ってください。)
参考
日本語学校で授業中に教室に入管が入って来た①(「どちら様ですか?」「入管です。」)|元警察官日本語教師 (note.com)
日本語学校で授業中に教室に入管が入って来た②(専任講師の「名義貸し」って良いんですか?)|元警察官日本語教師 (note.com)
日本語学校で授業中に教室に入管が入って来た③(写真撮影しただけかい!)|元警察官日本語教師 (note.com)
入管到着
急なトラブルに備え、専任2人が有給を使って品川の入管へ行きました。
無事2人とも何のトラブルもなく、到着。
報告書に載っていた入管職員の名前と部署と要件を伝え、ひたすら待ちます。
もちろんアポなしです。
「突然来た我々に会ってくれるのか」
「会ってくれたとしてもゆっくり話など聞いてくれないのでは?」
「何も教えてくれないんじゃないか」
ドキドキして待ちます。
待つこと数十分、この件の担当の職員が出てきてくれました。
こちらの名前と要件を伝えます。
入管職員との対峙
入管の職員は我々から要件を聞くと、少し長くなりそうだと思ったのか、小さな別室へ通してくれました。
座ってじっくり話を聞いてくれそうな雰囲気になった時、今日来て本当に良かったと思いました。
有給まで取って朝一で来たわけですから。
話をしていると、その入管職員は私が授業していた時に立ち入り調査に来た職員だと気づきました。
それはともかく、どれだけ時間をとってくれるのか分かりません。
聞きたかったこと、伝えたかったことを急いで話します。
まず入管が何を調査しに来たのかに関して聞きました。
報告書の通りでした。
つまり専任講師数の不足です。
学校が作成した専任講師増加の報告書を入管はもう学校から受け取っているはずですので、すぐに現在の状況を伝えます。
専任講師は増えていないこと、学校が作成した報告書の中の非常勤の先生2人は名義だけ貸して専任としては働いていないことを伝えました。
入管さんは我々の話を黙って聞いていました。
ところで、当時うちの学校はあまりの講師不足に悩まされていました。
そこで養成講座を修了したが、まだ卒業していない大学生を非常勤の先生として複数名雇用していました。
これを思いついたのは教務主任なのですが、主任はこのアイデアを自画自賛していましたね。
「他の日本語学校はやってないから、今なら優位に大学生を集められる。」などと自慢げに語っていたのを覚えています。
日本語教師の皆様はご存じだと思いますが、大学を卒業しないで法務省告示校の日本語教師の要件を満たせるのは日本語教育能力検定に合格している場合のみです。
ですから検定なしで、養成講座を修了しているだけの人は、大学を卒業している必要があります。
他の日本語学校はやっていない、というのは当たり前です。
やってはいけないのですから。
それを主任が今なら優位だと考えているんですから呆れます。
つまり、ほかの学校もいつかそういうことをやり始めるだろう、という考えなのです。
他の学校が皆うちみたいな不良学校ではないんですよ、と言いたかったですね。
ところで、その日は時間が許す限り、洗いざらい学校の不正を話すつもりで入管に来ました。
専任名義貸しの話はすでに知っていたのでしょう。
入管の職員はその大学生の話に特に興味を持ったようでした。
「大学生ですか。それはちょっとまずいですね。」と言っていたのを覚えています。
その他にもアルバイト紹介料の徴収、パスポートや在留カードの取り上げ等、何でもありでしたね。
学校に対する処分
入管の職員は結局50分ほど話を聞いてくれました。
最も気になっていた学校に対する処分については、「4月生の在留資格認定証明書交付申請を全員不交付にする予定だ」とはっきり言われました。
「どうせ不交付にするつもりなら、申請自体をさせないということはしないんですか?」と聞いたところ今回はあくまで行政指導であり、申請するかしないかは学校の自由なんだそうです。
「不交付にする予定であることも学校側に伝えてあるが、学校はあくまで申請するつもりのようだからそれはそれで仕方ない」とのこと。
驚いたのは入管がもう対応方針を完全に決めていたことです。
これからの学校の改善状況によっては対応を変えるつもりなのかと思っていたのですが、完全に違っていました。
予想に反してかなり厳しい処分だな、というのが正直な感想でしたね。
うちは規模が比較的大きい学校で4月生だけでも500名以上が入校予定です。
それがすべて入国できないわけですから。経営的にも打撃でしょうし、留学生仲介業者などからの信頼も低下してしまうはずです。
ところで理事長も入管へ乗りこんで来たそうです。
「今度来る学生は優秀でまじめな子ばかりだから不交付はやめてください」などと感情論で押し切ろうとしたみたいです。
しかし彼女の国はコネや金で何とかなる人治国家なのかもしれませんが、日本は違います。
入管の職員はこちらが聞きたい事も丁寧に答えてくれたし、伝えたいことも聞いてくれました。
これで知りたいことは大体わかりました。
もちろん今日聞いた話をこのまま非常勤の先生や学生に伝えていいのか、という問題が残りました。
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