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ままごとカップル

こんばんは、たらしです。

脱ぎ捨てたブルゾン、放り投げたマスク。私は今、人生初のカプセルホテルのベッドで寝転んでおります。昨晩、同棲している相方と口喧嘩になり、朝目が覚めても珍しく怒りが収まらなかった私は一年ぶりに家出を試みております。

家出の度に駆り出されるボストンバッグ。出張の為に購入したのにも関わらず、会社の経費削減でほぼ0になった出張で活躍することも無く、現在は家出メンバーの一員として今宵も活躍しております。

相方と一つ屋根の下に暮らして5年。この期間家出の回数は今回含め4回。初めの2回は実家へ、3回目は枕がレンガのように硬く小さいビジネスホテル、此度生まれて初めてのカプセルホテル。

いつだって、カップルの喧嘩の理由はくだらないものだ。

休みの少ない日給月給非正規の相方と、休みの多い正社員の私。アウトドアで貴重な休みを無駄にしたくない相方と、インドアで休みの日は誰にも会いたくない引きこもりの私。ダラダラと貴重な休みを無駄にする私が嫌だ、ゴミのようだと、飲み会からベロベロになって帰ってきた相方が喧嘩をふっかけてきた。

酔っていない相方はいつもとても優しい。職場から家に帰るとテーブルいっぱいに美味しいご飯を作って待っていてくれるし、冷蔵庫には毎日栄養ドリンクが入っている。私はそんな相方の愛情をめいいっぱいに受け、毎日を生きている。

が、深酒すると普段は優しい笑顔の下に隠しているドス黒い心が剥き出しになるのか、昨晩のように喧嘩をふっかけてくる。酔った時、溢れ出てくる言葉や感情は少なからず本心だと私は思っている。それは相方の本心だと思われる言葉に、私自身心当たりや自覚があるからだ。

私は非正規雇用の相方を見下したつもりなんか無かった。家賃や生活費の負担は殆どしてくれているし、休みなく毎日働いている相方にとても感謝している。それでいて相方は私にいつも優しくしてくれていた。そんな相方に甘えていた私は相方の気も知らず、休みの前の日は嬉しくて喜んでいた。そんな私を相方は良く思っていなかった。

「黙って休め」「俺の前で喜ぶな」。きっとこれが彼の本心だろう。悲しかった。と同時にすごく頭に来た。

そこからはもう売り言葉に買い言葉。でも私が彼にぶちまけた言葉も本心だった。「そんなんだから離婚されたんだろうね」「こんな狭い部屋にしか住めないくせにバツイチが偉そうにするな」、言っていいことと悪いこと。いつもなら分かってるけど、もう止まらない。ゴミとクズの口喧嘩。

案内された想像以上に狭いホテルの部屋を見て、ごめんよ、と思った。きっと顔を見たらいつものように許してしまうから、こうするしか無かったんだ。

いつだって私は貴方と別れる理由を探してる。いつだって本気の家出だ。なのにどれだけ頭に来ていても一日の終わりには会いたくなる。

ごめんよ、思ってもないことを言ってしまったとは謝れないけど、言い過ぎた。だけど顔を見て素直に謝れるほど大人になりきれていない私はきっと明日の夜相方に謝られて許すのだろう。

ごめんよ。
だけど、好きです。家出。

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