『浮気をするならバレずにやれよ』

※音楽を聴きながら読んでもらえると良いかもしれません

「浮気するなら、俺にバレないようにしてほしいよ。」

乾杯の発声もそこそこに、あなたは今日の本題を早速口にしてきた。本題を初めに話すのがあなたの通例だ。さっぱりとした性格通り気持ちのいいやつである。のらりくらりと話をする私とは正反対だ。

「何かあったん?」

聞くまでもなく分かっているけれども、会話の流儀だ。あなたが「今日は俺のおごりだから」と飲みに連れだした時から、何かあるのは分かっていた。問題はその中身である。

「多分、彼女が浮気をしてる。確証はないけど『男の勘』」

女の勘は当たるというが、男の勘はどうなんだろうか。なんて考えているうちに、あなたはどんどんと事となりを説明してくれた。あらましはこんな感じ。

付き合って8か月の彼女からの連絡が減った
友達との付き合いといって飲み会の数が増えた
自分宛ではない間違いLINEが届いた

ふんふんと、レモンサワーを片手に話を聞いていたが、最後の話がやっぱり気になった。間違いLINEとは?

「それは、LINEの会話の流れをぶった切って、「楽しかった~!」みたいなスタンプを送ってきた。直前がゼミのレポート課題の話だったのに、意味が分からん。」

俗にいう誤爆というやつのようだ。本来送るべき相手と違う相手にメッセージを送ってしまう、まあ初歩的なミス。そして致命的なミス。彼女は抜けているのか、油断しているのか。それとも舐めているのか。

「おそらくクロ。証拠はないけどきっとクロ。シロの要素がないことがクロである証拠。」

もうそこまであなたの考えが決まっているのなら、それはきっとクロなのだろう。話を聞いていても彼女を擁護できるポイントは見つかりそうにないし、擁護する義理もない。あなたからの話が全てであるこの場では、間違いなく彼女はクロなのである。

「浮気されたことが事実だとして、その事実はもちろん悲しい。でもそれ以上にそんな人を彼女に選んだ自分が情けない。さらに言えば、最終的に戻ってくるだろう彼女を許してしまう自分が一番嫌だ。」

浮気を発端に、自己嫌悪に陥るとは。まったくもって損な性格だ。単純に浮気したであろう彼女を責めて、被害者ポジションにいれば怒りが勝るだろうに。

【自己嫌悪に陥っている】
そう口から吐き出せたことが良かったのか、その後はいつの間にか話はすり替わり、桜の開花宣言の話なんかを気づけばしていた。結局のところ、浮気を慰めてほしいのではなく、自分の思いを吐き出せる相手が欲しかったのだと。

あなたにとっては、私はそんなポジション。いいとか悪いとかは置いておくとして、なかなかいいポジションだと思う。あなたを困らせる彼女に対しては「勿体ない」という思いと「ありがとう」という感謝が混ぜこぜになってしまう。

あなたに選ばれているというのに本当に「勿体ない」

そして

私をちょうどいい存在に仕立て上げてくれて「ありがとう」

と。

私のnoteを読んでいただき、ありがとうございます。また訪れてもらえると嬉しいです。サポートして頂いたお金は、嫁ボーナスの資金に活用させていただきます。