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お金が持つ3つのパワーと付き合い方

衝撃的なニュースが飛び込んできた。先日アスリート女子との結婚を発表したばかりの全米最強のプロスポーツ選手のビジネスパートナーである通訳の男性が、なんと7億近いお金を違法スポーツ賭博で失い、その返済にプロスポーツ選手の口座のお金を使用したとして球団から解雇されたのだ。

今回ギャンブル依存症であることを公表し球団を去ることになった通訳は、多くて800万円前後の年収が多い通訳業界では破格の7500万という大金を稼ぐ一流のビジネスパーソンであった。並みの通訳の約10倍の年収というから驚きだ。そして何より、彼が仕えるボスは全米トップのアスリートであり、そのボスの刎頚の友である彼はボスのお金をある程度自由に動かせる立場にあった。自身の稼ぎにプラスして、いざとなれば"使えるかもしれない可能性のある大金"が彼のギャンブル依存症を悪化させたことは間違いないだろう。お金を稼ぐのは難しい。だが、それと同じくらいお金をコントロールすることもまた難しいのである。

今回はボスの口座から違法スポーツ賭博の支払い口座に大金が振り込まれたことから問題は発覚した。多種多様な民族が集まり異なる文化の人間同士がビジネスを行う移民国家アメリカはコントラクト社会、契約ですべてが決められた社会である。そんなアメリカの常識からすれば、ボスの大金で今にも爆発しそうな銀行口座から自由にお金を動かせる通訳の存在が中々信じられずにいる様子で、ボスも賭博に関わっていたのではないか?との疑いの声が上がっている。しかし、日本人の感覚から言うとその可能性は低いだろう。なぜなら日本では番頭に会社のお金を預けて横領されたり、信頼できる仲間に資産管理を任せていたスポーツ選手がそのお金を詐欺で奪われる、なんて事件はしょっちゅう起きているからだ。

単一民族国家であり、価値観や道徳など共通の文化を持つもの同士がビジネスをする日本は、アメリカと真逆のトラスト社会、つまり信頼でまわっている社会なのだ。そのため、信頼関係さえできれば、ボスが部下に口約束だけで大金の管理を任せることが多々あるのである。おそらく試合や練習に集中したいボスの意向でマネージャー業務も兼任していた通訳は、自然とボスの口座のお金を動かせる地位を手に入れていったことが容易に想像できる。

過去を振り返ってみても、現在北の大地で監督を務める元関西のスーパースター選手も、選手時代に年俸やスポンサー料の管理を任せていた親族に何十億ものお金を全て溶かされていたし、数年前まで某関西の人気球団で監督を務めていたアニキは、引退後の後輩たちの働き口を作ろうと信頼する家族ぐるみの付き合いだった男性に大金を渡して会社の設立を進めていたところ、そのお金を持ち逃げされる詐欺被害に遭っていた。日本では今回のようなボスが信頼する部下に口座の大金を丸投げしてしまい事件に発展することは、決して珍しいことではないのである。

それにしても、なぜアスリートたちが絶対の信頼を置く人物にお金で裏切られる事件は後を絶たないのであろうか?それは実のところ、お金を稼ぐ能力とお金を制御する能力の間には強い相関関係がないからである。お金を稼げる人間が、必ずしもお金のコントロールが上手いとは限らないのである。いくら稼ぐ力があったとしても、お金のことを知り、お金を使いこなせるリテラシーも身につけないことには、稼いだお金達と上手く付き合っていけないのである。だが往々にして稼ぐことに夢中な人間ほどそういった知識には無頓着だ

人はお金を稼げば稼ぐほど労働へのモチベーションを上げていき、優秀なビジネスパーソンとして成長していく。そして扱うお金の金額はどんどん大きくなっていく。そして使い切れないお金が積もってくると、人は徐々にせっかく稼いだお金を"使いたく"なっていくのだ。そして器を越えたお金を使おうとしたとき、順風満帆だった人生はぐらぐらと音を立てて崩れ始める。お金とはその人の良い面と悪い面、その両方を引き出す力を持っているのである。

例えばギャンブラーが大金を掴んでしまうと、どんどん増えていくお金とともにギャンブルで扱うお金を増えていき、ついには自分の懐以上のお金を賭けてしまうようになっていく。宝くじに当たった年収300万の庶民や、引退後のプロアメフト選手が大金を持ちながら破産してしまうのも、増えすぎた金の魔力で脳が焼かれてしまっているからだ。毎日口座に振り込まれる破格の年収に加えて、ボスの口座に唸る数えきれないほど0が並ぶ金額を目にしながら暮らしていく過程で、通訳の金銭感覚も徐々に壊れていったに違いない。

大切なのは、お金に対する"自分の器"というものをどう知るかである。器を越えたお金を手にしても、人はそれを綺麗に意味のあることに使い切ることはできない。いくら美味しくて高価な料理を机一杯に並べられても、胃袋の小さな人が無理をして食べれば吐き戻してしまう。お金を食らい尽くせるかどうかは生まれついた素質と、幼少期に自然とお金のリテラシーを身につけることが出来たわずかな人間たちだけなのである。人は器に入る額のお金しか安全に取り扱うことはできない。

さらに大金を手にした人間の周りには、他人の金を食い物にして生きるハイエナやらピラニアやらが群がってくる。おそらく今回の事件も、彼が自ら違法スポーツ賭博に手を出したというよりも、ギャンブル好きであることが界隈に知れ渡り、次から次へと集まってきたハイエナ人間たちに紹介された賭場の中に、違法なものが混じり込んでいたのだろう。自身も大金を稼ぎ、さらにボスの大金をも動かせる立場の人間がギャンブル依存症などという大きな隙を見せれば、ピラニアやハイエナに食いつかれることは当然なのだ。

ではお金の持つ力とはなんだろうか?お金を稼いで手に入れることで、人は一体どのようなメリットを享受することができるのであろうか?お金の力をまとめると3つに分けることが出来る。

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