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旅行の前日

先日、恋人と神戸&淡路島を旅行した。その旅行記を書き残そうと思ったのだが、まず出発の前日について記しておきたい。

わたしは出発前夜、地元の友人とフットサルをしていた。

繰り返す。友人とフットサルだ。

ダーツ姿を「おばあちゃんのリハビリ」と評されるほど、運動音痴のわたしが、友人とフットサル。

なんて爽やかな響きだろう。口にするだけで、アクティブなスポーツ女子になった気がする(女子と言える年齢かどうかの問題はここでは置いておく)。

しかしもちろん「気がする」だけで、実際にやってみたら、できるわけがなかった。

友人には「バスケと同じ5対5の球技だし、いけるって!」と誘われたのだ(わたしは一応バスケ経験者)。全然いけなかった。一瞬でもいけるかもと思った自分に教えたい。使うのが手から足になると、全くもって違う競技になるのよ、これが。

現にわたしはとっさに飛んできたボールを手で取ろうとし、「あ、いけね!」と思うも避けきれずに腕にボールが当たって、周りから「バレーボールじゃないんだから」と突っ込まれるなどした。

ちなみに以前、友人とバレーボールをしたら、勢い良く飛んでくるボールを避けてしまうので「ドッチボールじゃないんだから」と突っ込まれたことがある。思うようにその競技に打ち込めない性質のようだ。

話を戻す。その日、フットサルコートに集まった友人たちはほぼ初心者だらけの男子6人、女子4人。たったの10人しか集まらなかったということはつまり、全員地獄のフル出場である。

「先に3点取った方が勝ち」というルールで試合を開始したものの、いつまでも点が決まらず、終わりの見えない戦いに皆の心が折れる。体力も尽きる。

おのずと途中でルールが改正され、3点が2点、2点が1点先取となった。汗だくでヘトヘトのOVER 30たちを突き動かしたのは、「休むためにシュートを決める!」というなんともネガティブな攻撃意欲である。

わたしはといえば、ほとんどボールに絡むことなく、ひたすら往復走をしていた。陸上競技をしに来たのだろうか。だがその中で、かろうじてシュートは決めた。決めたというか、ゴール前に立っていたら味方のシュートしたボールが足に当たり、跳ね返ってそのまま入った。

すねに当たったので痛かったが、入って良かった。もし外れていたら「お前は味方のシュートを邪魔するスパイか」と糾弾されるところだ。まぁ、その場合は「敵は身内にあり」と言って敵チームに寝返り、好セーブとして自分の手柄にするだけだが。

そんなこんなで、2時間で汗だくとなった。

気持ちのいい汗をかき、喉が乾くと、当然ビールが飲みたくなる。パブロフの犬のごとく、酒飲みとは「汗をかく=酒がうまい」と自動変換される生き物なのだ。もはや、うまい酒を飲むために汗をかいていると言っても過言ではない。

21時すぎ、わたしは「明日から旅行だからサク飲みね〜」と言いながら居酒屋に急いだ。そして、どうしてだろう、終電を逃した。運動後のお酒があまりにもうますぎた。不可抗力だ。あと近所だったので油断した。

帰りのタクシーの中、明日からの旅行に思いを馳せながら、予約していた翌朝の新幹線を諦めることにする。起きれる自信がない。乗り遅れても、当日の自由席ならば乗れるはずだ。

それでも翌朝、奇跡的に目覚ましよりも早く起き、予定どおりに出発することができた。遠足前の小学生のように、旅行のワクワク感がそうさせたのだろうか。若干の二日酔いと寝不足はありながらも、旅行の最初にして最大の難関、「予約した新幹線に乗る」というミッションをクリアしたのだ。

今思えば、旅行前日から危ない橋を渡っている。そんな態度で一緒に旅行する恋人に怒られないかと心配されるかもしれないが、大丈夫。実は彼もフットサルに来て、そのまま飲み会に参加し、わたしと一緒に終電を逃していた。2人の力をもってしても、健全な時間には帰れなかったわけである。アルコールとは、かくも恐ろしいものなのだ。

そして、フットサルはちょーキツい。これからは、テレビでサッカーを見る目が変わるだろう。シュートを外す選手を見て「何してんねん!」とエセ関西弁を叫ぶのではなく、「たくさん走っててすごいねぇ」「ドリブルつけてすごいねぇ」と、心からの賛辞を送るつもりだ。

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