見出し画像

ヒーローになった僕③

僕の初めてのミッション


その人が言うには、僕のこの国での仕事は人を助けることなのだそうだ。
しかも雲の王国ではなく、僕が昨日まで住んでいた地球にいる人たちを助ける仕事。
なんで自分達の国でもないのにそんなことをするのかと聞くと、

「どこの国とか、何人とか、関係ないって言ったでしょ。」

とまたその人は怒ったように答えた。

自分の家族でも友達でもない人を助けようとする気持ちはまだ僕には理解できなかった。

雲の上の街は僕が住んでいた地球と変わらないようだったけど、よくみると違うところがたくさんあった。
みんな背中に羽が生えているし、体の色は肌色じゃないし(緑とかピンク色の人もいる)、建物や車はみんな雲でできているのでふわふわで、使い終わったら空気の中に消えていった。
みんなふわふわの雪で遊んでいるみたいに、地面にある雲を持ち上げてなんでも作ってしまう。

「面白そう!」

大きな建物からの帰り道、僕は無限にある雲を拾って大きな車を作った。カラフルでトゲトゲがついてて、戦隊モノのヒーローが乗っていそうな車にした。
周りの人たちは僕の作った車を嬉しそうに見ていた。

そういえば周りの大人たちはみんな普通の車ばっかりたくさん作っている。自分の作りたいものが自由に作れるのに、なんで皆普通の車ばっかり作っているんだろう。


「よし、君の最初の仕事だよ。この人に会いに行って助けてあげて」

急にその人は僕の前にさっき建物の中で見た鏡と同じものを見せて言った。そこには一人の男の子の顔が写っていた。

「え!急にそんなこと言われたって、どこにいるかも、なんで助けて欲しいのかも何もわからないのに無理だよ。この子の名前も知らないし、それに、、、」

僕が一生懸命できない理由を説明していると、


「想像するのよ。」


それだけ言ってその人はいつの間にか消えてしまった。


僕は受け取った鏡を見て考えた。
ここに写っている男の子は今苦しんでいるんだろうか。
見れば見るほどその子は悲しい表情をしているように感じられた。

“想像する”

ってどう言うことだ?
僕にはまだその言葉の意味がわからなかったけど、なんとなく、この男の子のことを思い浮かべて、どんな子なんだろう、何歳くらいかな、と色々なことを考えてみた。
そしてじっくり考えるために目を閉じて、頭の中に男の子の顔を思い浮かべた。 




「誰?」

知らない人の声にびっくりして目を開けると、僕の目の前に鏡の中の男の子の顔があった。



「ぎゃあぁぁ!!」

僕は思わず大きな声を出して飛び上がった。
男の子、というか、これはまるで巨人じゃないか。僕の目の前にいるその子は、僕の何倍もあるその顔をかしげて物珍しそうに僕を見ている。

「わかった!妖精さん?」

とその子は目を輝かせて聞いてきた。
そうか、この子が巨大なんじゃなくて、僕が小さくなったってことなのか?
周りを見回すと、テーブル、椅子、鉛筆、全て僕よりも大きい。
やっぱりそうか、僕がこの世界では小人サイズってことか。

落ち着け、落ち着け、僕の仕事はこの子(巨人)を助けることだったよな。
よし、まずはなんで苦しんでいるのか聞かなくちゃ。



「。。。。。」
「。。。。。。。。!」



つづく♡

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?