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「送りバントができる」事業家でありたい

「抽象は高尚」への違和感

以前から、

  • 社長はえらい

  • 抽象的な概念が取り扱える人はえらい

といった考え方に、どこか違和感があった。


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僕は、ベンチャー企業の1事業部に7年ほどいる。

入社したタイミングでは、事業はまだPMF前。そこからこの事業は、PMFして全社で社長賞をとり、事業領域の拡張に踏み切り、市場でNo.1になって今も成長を続けている。
1つのサービスにおいて、0→1、1→10を通り、今10→100のフェーズにいるところまでの成長を、僕は当事者として、その一部として見守ってきた。


未熟ながら、いち事業家として思うことは、
決して抽象概念だけじゃ事業は前に進まないということ。
進むときはいつも、抽象と具体の真ん中くらいをちゃんと捉えられるているときである。


経営だけじゃなくて、現場もわかっている。
そういうときに、しっかりと地に足ついて、事業が前に進む。


すごいスプレッドシートの末路

最近、ようやくプロダクトというものがわかってきた。
どうやら、「仕組み」と「運用」があって、その真ん中を捉えることが必要らしい。


***


僕が1年目に作ったスプレッドシートを、最近引っ張り出す機会があった。

ある複雑なKPIの現状を把握するためのシートで、
KPIの構造整理も大変だったし、GASや関数を駆使したすごく考えてつくれられたスプレッドシートだった。
わからないなりに海外のダッシュボードを画像検索し、かっこよいUIにしたり、わざわざメインカラー、サブカラーのRGB指定もしていた。

でも、もう使われていない。なんなら自分の記憶からも飛んでいた。
理由は、運用されなかったからだ。


ノーバリューではない、けれども

こんなものはたくさんある。

  • GoogleフォームとGASと関数を駆使した、スプレッドシート

  • グラフをどれにするかで悩んだ、redashのダッシュボード

  • すごく丁寧で細かい、ツールの利用マニュアル

  • 外部コンサルを利用して作った、ペルソナたち

もちろん「消費期限」というものがあって、
これらを作った当時は、ちゃんと何かの課題を解決していたわけで、まったくもってノーバリューではない。

でも、今は使われていない


自分の有能さを示すための仕事

事業に夢中になってこういうことを繰り返したので、
「作って、手前の課題を解決していれば、捨ててもOK」
と、無意識のうちに思っていたように感じる。

でも、「利用しつづける」という前提が先に存在しているシステム開発などは、この思想がとっても邪魔をしてしまうのである。


***


先ほどのスプレッドシートをつくった、1年目の自分のことを思い返してみる。

振り返ると、
「事業の課題を解決している」という想いと同時に、「こんなに難しいことを解決できちゃう、頭が切れる、優秀、かっこいい自分」という気持ちも、確実にあった。

これである。
自分の有能さを示すための仕事をしていた。


事実、優秀で頭が切れる人ほど、高度な仕組みをつくることができる。
でも頭のいい人なんて五万といるわけで、いきつく戦略はみな同じであるということに、30歳となってやっと腑に落ちたのだ。

そんなことより、というより、それと同じくらい、
作った仕組みを実行する、しつづけられることが、事業家としては必要なのである。


例えば、

  • すごく高度に仕組みを作る、運用は脳死で回す?

  • 仕組みは安易にする、運用で色々対応できるようにする?

など、「高度な仕組みはつくれるが、今や今後の事業を見据えて、どの高度さの加減で仕組みをつくるのか?」という問ができなくてはならない。

そのためには、優秀でありたい、優れていたいという自分の欲求と上手く付き合わなくてはならない。


送りバントができる人でいたい

僕は、阪神ファンである。
今年は2005年ぶりにリーグ優勝し、記載している今まさに、日本シリーズ出場を決めた。

今年の岡田監督の野球は、手堅い。
やるべきことを、ちゃんとやる。
それが優勝という結果なのだろう。


ノーアウト1塁。

自分の力を示すためにヒッティングするのではなく、
チームの勝利を考えて、ちゃんと送りバントを選びたい。


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