刺さるリサーチ結果(発見点)の3つの条件

ユーザテスト等のUXリサーチを行うと、大小様々な発見点が得られる。当社でも月間数十以上のリサーチを行い、様々な業界において無数の発見点があるが、「良い発見点とは何か」「何が重要な発見点なのか」を議論する機会が多く、その定義についての私見を整理する。

優れたリサーチ結果(発見点)の3つの条件

営業・コンサルティング等での現場経験を通じ、良いリサーチ結果とは、以下3点が重要と思われる。

・改善につながる(Actionable)
・深いユーザ理解がある(Insightful)
・意外性がある(Surprising)

頭文字をとって「AIS(アイス)」と呼ぶ時もある。この3つの条件を満たす発見点がいくつかあると、そのリサーチプロジェクトは成功したと言える。


条件1. 改善につながる(Actinable)

リサーチの目的は様々だが、コストをかけて実施したからには、何らかの改善施策に繋げ、ビジネス成果に貢献すべき。例えばデジタルマーケティングにおいては、以下のような改善施策に直接つながる結果が、Actionableな発見点と言える。

・広告クリエイティブの変更
・LP内メッセージの変更
・Webサイトのナビゲーション構成の改善
・商品ページのコンテンツの加筆修正
・CTAの文言変更
・Q&Aの内容追加 など

なお注意点として、部署・役職により「改善範囲」が異なるため、同じ発見点でもActionableになりえるケースとならないケースがある。リサーチを行う前に「その人にとって改善できる範囲はどこか」をしっかり抑えて提言できるかどうかで、大きな差がでる。


2. 深いユーザ理解がある(Insightful)

では、改善に繋がれば何でも優れた発見点かというと、そうとも言えない。改善アイデアだけなら、社内でのブレスト、専門家アドバイスサービス、クラウドソーシングなど、いくらでも集めることができる。その中で、あえてUXリサーチを行うのは「行動データや専門家の過去知見だけでは得られない、立体的で深みのあるユーザ理解」に基づくアイデアを考えたいからである。

深みのあるユーザ理解とは、表面的な行動・意見だけを見ず、その背景にある文脈を捉えた根本的な行動原理・心理に迫るものである。以下は、ある英会話教室において、定性調査を行った例。

・サイトを見てもらった上で、他にどんな情報がほしかったかを聞くと、「スケジュールが見たい」という話が出た。
・なぜスケジュールが見たいのかを聞くと「どのように英語力が成長していくかを知りたい」という回答が出た。
・さらに、なぜそれが知りたいかを問うと「週2回のレッスンで成長できるか不安だから」という話にたどり着いた。

最初の発言だけを取ると「スケジュールが見たい」という話しか出来ないが、何度かの深掘りを行うことで、「週2回の英会話レッスンだけでは不十分」という不安があったことが分かる。このような深掘りを行うことによって、Insightfulな発見にたどり着くことができる。


3. 意外性がある(Surprising)

では、ActionableでInsightfulな発見点であれば、よいリサーチ結果と言えるか。この2条件を十分に満たしていても、その発見点が「既知の情報」であったとすると、「だよね」「知ってた」となってしまう。

わざわざコストをかけたからには、そこに「これまら知らなかった/気づかなかった情報」が含まれている必要がある。つまり「意外性がある(Surprising)」ということも重要となる。

「意外性があるかどうか」を判断するのは、実は結構難しい。同じ情報でも、ある人にとっては未知で、別の人には既知であったりする。「リサーチの報告相手」のことを知り、その発見がその人にとって意外性があるかどうかを考える必要がある。


▼Twitterでも最新のUX/UI情報や独自リサーチを発信中!フォローしてね!
https://twitter.com/pop_ikeda


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?