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ひと目見ただけで笑っちゃう! ギャグ漫画家のストーリー作りとは? 『おばけねこドロンニャ』制作秘話!!

人気漫画家小栗かずまたさんの新しいキャラクター<おばけねこドロンニャ>が幼年向け読み物で誕生しました。いちど見たらわすれられないキャラクター、子どもたちがくぎづけになるシーンや、キュンとするセリフなど、どのようにお話をつくられているのか、うかがいました。(聞き手・ポプラ社編集部 浪崎裕代)

小栗かずまたさん自画像

【小栗かずまた】
東京都出身。漫画家、児童書作家。漫画の作品にテレビアニメ化もされた「花さか天使テンテンくん」の他、「ヘンテコ忍者いもがくれチンゲンサイ様」「れいぞうこのつけのすけ!」「めちゃめちゃ!ブサイくん」などがあり、現在「最強ジャンプ」「アンラッキー不幸田先生」(いずれも集英社)を連載中。児童書の作品に、「グータラ王子」シリーズ「にげだせジョニー」シリーズ(ともに集英社)「はくねつ!モンスターバトル」シリーズ(Gakken)「ヒャッハー!ふなっしーとフルーツ王国」(ポプラ社)などがある。

2年間じっくり描いた渾身のキャラクター!

ーー『おばけねこドロンニャ』、ようやく見本ができました! ありがとうございました。

(小栗)ありがとうございます。やっとですね。
この本が完成するまで、構想を含めると2年近くかかったので、感慨深いです。
ドロンニャが、子どもたちに愛されるキャラクターになってくれる事を願うばかりです。

ーーなかなかお会いするのが難しい時期に、最初にキャラクターの絵とプロットをいただきましたね。あまりにもかわいくて、これはなんとしても本にしたいと思いました。漫画家さんが月刊や週刊で作品を描かれていることを考えると、2年は長いですね。

(小栗)そうですね。漫画雑誌の連載をしていると、そちらの締め切りがすぐにやってくるので、その合間合間に描くのですが、新しいキャラクターということもあり、今回はかなりじっくり時間をかけて描きました。

「おばけねこドロンニャ ドロロンこわがらせ大さくせん」

アイディアを思いついたら、漫画と児童書どちらに合うか考える

ーーなぜ漫画を描こうと思われたのですか? 子どものころにお好きだった本などがあれば教えてください。

(小栗)元々絵を描くのが好きだったのですが、漫画を初めて描いたのは小学校低学年の頃、友達が描いていたのをマネしてです。「ドラえもん」に最初にハマり、その後「キン肉マン」「ドラゴンボール」「ハイスクール! 奇面組」等、「週刊少年ジャンプ」の漫画が大好きでした。児童書で好きだったのは「ズッコケ三人組」シリーズです。

ーーやはり、とても漫画がお好きだったのですね。マネとはいえ、ご自身でも描いてみようと思われたことが今のお仕事につながっているのですね。児童書では、弊社の「ズッコケ三人組」を挙げていただき、ありがとうございます。
漫画家さんとして活躍されていた時に、児童書も描こうと思われたのはなぜですか?

(小栗)昔からお世話になっている集英社さんが、児童書レーベルを立ち上げる事になり、その時声をかけて頂き、初めて児童書を描きました。描いてみたら、遊び心をふんだんに詰め込めるので、児童書を描くのが楽しくなりました。

ーー漫画と児童書を両方描かれていますが、アイディアを考えたときに、どのように児童書とマンガにふりわけているのでしょうか?

(小栗)例えるなら、児童書は本一冊単位で完成させるので、映画を作る様な感じ。漫画は連載だと毎回短い物語を繋いでいくので、連続ドラマを作る様な感じがします。アイディアはそれぞれどちらの方に合ってるか、考えて使います。

ーー児童書を書かれるときに漫画と違って難しいことなどはありますか?

(小栗)児童書は漫画に比べて、より低年齢の子どもにわかりやすく、無駄がないようにブラッシュアップする作業が多いです。
文章もけずったり、逆にふやしたり。絵もなんども描きなおしをしましたね。

ーーこちらもいちどにご提案できればよいのですが、最後まで子どもたちにわかりやすくと修正いただいてありがとうございました。

キャラクター、ストーリーの生まれるとき

ーー新しいお話を考えるときに、キャラクターのイメージ画像や名前やお話、なにが先に浮かびますか? どのような時に考えつくのでしょうか?

(小栗)いつも最初はキャラクターです。TVやネットを観ているときや、出掛けているとき等に、おもしろいと思った事をスマホにメモするのを習慣にしています。その中で後で見返しておもしろいと思ったネタを集めて、キャラクターを作っていきます。

ーースマホにメモされているのですね。校正のやりとりもメールやお電話だけでなくSNSも駆使しましたね。校正のお返事が早くて驚きました。
子どもたちが見ただけで笑ってしまうようなギャグはどんな風に生まれるのでしょうか? 
 
(小栗)ギャグを考えるというよりは、おもしろいキャラクターを作って、そのキャラが一番おもしろくなる状況を考えます。

 ーードロンニャのキャラクターと人間のユウタくんはどんなイメージで描かれましたか?

(小栗)最初に思い浮かんだのは『ドロロン ドロンニャ〜!』という掛け声でした。この掛け声で色々なものに変身する、こわくてかわいい、ねこのおばけのキャラクターを作りたいと考えて、ドロンニャを作り、そのドロンニャと仲良くなりそうな、一見普通だけどおばけをこわがらない優しい男の子というイメージで、ユウタくんを作りました。

最初のひらめきは「ドロロン ドロンニャ~」という掛け声。
ドロンニャのいろいろな表情
ドロンニャと友達になれそうなユウタくんが生まれた。

ーー「おばけねこドロンニャ」のストーリーコンセプトは、人間とおばけが仲良くなること、ですが、どんな想いでこのストーリーを描かれましたか?

(小栗)現実の世界では、自分と違う人を拒絶する人もいます。『おばけと人間でさえ仲良くできるんだから、もっと人間同士は仲良くできるはず』という事を、本を通じて楽しみながら、子どもたちに伝えられたら良いなと思います。

ーー実際の制作行程について

ーー実際にどのようにお話を作られているのでしょうか?

(小栗)漫画の場合は、最初にどんな漫画を作るかの打ち合わせをするときもありますが、最近は大体最初から僕がネーム(内容がわかる絵コンテ)を一人で作ってから、それを編集者さんに見せて感想を聞いて、ネームをブラッシュアップしていく事が多いです。ネームが完成したら、そのままそれを元に原稿を描いていく感じです。

ーー今回のドロンニャの制作過程を思い返してみると……。

(小栗)最初はドロンニャのキャラクターイメージと、文章でお話のあらすじみたいなものを送りましたね。その後に、もっと具体的にお話の流れを書いたストーリープロットを渡しました。
そして本描きに入る前に全ページのラフを渡しました。

文章と絵の描かれたラフ

ーーこの段階で文章を練りなおして、ほぼ確定させてから絵を描いていただきましたね。

(小栗)文章のやりとりは何度もしましたね。漫画よりも細かいところまで文章の修正が入ることには驚かされます。ラフの段階でも色々と話し合いましたが、校正が出るたびにより子どもたちがわかりやすく楽しめるようにいっしょに考えましたね。

ーーイラストをいただいて、帯のキャッチコピーをお見せしたときに、背表紙だけに入れていた<こわいけど おもしろい>という文言を表紙にも入れてほしいとおっしゃいましたね。そのときに、「どちらかというと<おもしろい>と思ってほしいので」とおっしゃったのが印象的でした。表紙のデザインもいろいろと話し合いをかさねましたが、黒バックにするとしても、こわい印象になりすぎないようにとおっしゃっていましたね。

(小栗)こわいのが好きな子どもも多いですが、苦手な子もいます。笑えるお話が苦手な子はそんなにいないと思うので……。
僕も子どもの頃、こわいお話は苦手でした。YouTube等、動画メディアばかり観てしまう子どもが増えていると思うので、少しでも『本を読むのはおもしろい』と思ってほしいです。

帯のキャッチコピーも最後まで練り直して決定

できあがった本と今後のシリーズ展開について

ーー制作過程をふりかえってみて、最も思い入れのあるシーンはありますか?

(小栗)ドロンニャが調子に乗って色々なポーズをとるシーンは、描いていてかわいくて楽しかったです。

お気に入りのページ

ーーこのシーンはドロンニャらしさが出ていてかわいいですよね。そして左にはなんだかあやしいキャラクターもでていて、コマ割りならではの演出ですね。一方で、今回の作品で苦労したことがあればおしえてください。

(小栗)ユウタくんがドロンニャのくつでジャンプするシーンと、ラストの二人でジャンプするシーン、どちらも俯瞰で街並みを描くのが大変でした…。

ドロンニャが化けたくつで上空に飛び上がるユウタくん

ーーもしよろしければ、これからのストーリー展開について、おしえてください。

(小栗)ドロンニャとユウタくんはこれから、色々なおばけに会って、さまざまな体験をしていくと思います。おばけと人間のコンビならではのワクワクドキドキのお話を書いていきたいです。

ーーいろいろとお話をうかがえて、ドロンニャたちの活躍がますます楽しみになりました。ありがとうございました。

『おばけねこドロンニャ ドロロンこわがらせ大さくせん』ぜひ書店さんで見掛けたらお手にとってみてくださいね。

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