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カメラ・トレッキングシューズが絵本のインスピレーション! accototo

子どものときに読んでいた、あの絵本。
お子さんが大好きな、あの絵本。
あの作者はどんな人だろう?
どんな風に絵本を作っているんだろう?

この連載では、子どもの本の作家さんに「日常生活に欠かせない必需品」を3つあげていただき、お話を伺います。

今回お話ししてくださったのは、accototo(あっことと)さん。ふくだとしお・あきこさんのご夫婦ユニットです。お二人のニックネームを重ねてユニット名にしたというお二人の必需品は…?

★過去の連載はこちら

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『1分えほん どれがすき?』などの絵本や、『どうぶつ あいうえお』などのリングカードで人気の作者、accototoさん。ふくだあきこさんのニックネーム「あっこ」と、ふくだとしおさんのニックネーム「とと」を重ねた、ご夫婦のユニットです。

軽井沢の近くの自然豊かな場所で創作を続けるお二人に、必需品を聞きました。


これがなくして作品は生み出せない!

3人の子どもたちを、産まれてから毎日撮影しています

(としお:以下「とと」)僕は小学生の頃にカメラマンになるのが夢だったんです。今でもカメラは好きで、ニコンの一眼レフ、ライカなどを使ってます。ニコンでは望遠レンズをつけて景色を撮ったり、ライカでは日常の風景を撮ったりします。手を伸ばせば届くところに、常にカメラがある感じ。

(あきこ:以下「あっこ」)コンパクトカメラや携帯カメラもよく使うね。これで子どもたちを撮影しています。

(とと)小さいデジカメで毎日1枚子供の表情を撮影して、生まれて何日目と記録しているんです。(紙を取り出して)長女が何千日目で、次女が何日、長男が何日なんて書いてある。

いろんなカメラを使い分けている。奥は自作のアルバム

――なんと、3人とも毎日撮影しているのですね! お子さんの写真を毎日撮影することは、最初のお子さんが産まれるときにお決めになったんですか?

(とと)お腹の中に最初の子どもがいたときに、大きくなるお腹を毎日撮影したんです。現像してパラパラマンガのように製本して。そんなわけで、産まれた初日、2日目と続けていって…やめられなくなりました(笑)。
3人目が産まれた時にはさすがに「大変なことを始めちゃったなあ」と思いました。

(あっこ)日常のふとした瞬間をパチっと撮影するから、ピントが合ってない時もブレてる時もある。それを毎年、それぞれフォトブックにまとめています。

(とと)僕の年末は3人分のフォトブックを作るので、てんてこまいです(笑)。
でも、フォトブックをまとめているときとかに感じるんです。1日1日が繋がって1週間になり、1ヶ月になり、1年になっているんだな、と。
毎日撮影しているときは、昨日より大きくなったかなんて感じないですが、アルバムの中では確実に大きくなって顔つきも変わっていっている。 

(あっこ)もし天災が起きて避難しなきゃいけなくなったら、余裕があれば写真やこのアルバムだけは何としても持って逃げたいなと思います。
自分の記憶はあやふやになるけれど、写真は、その時の記憶、情景とか、自分がどう考えていたかっていうことを蘇らせてくれるから。
そういう意味でもとても大切で、必需品ですね。


山の中は、生きている実感がある

――必需品その2は、まさかのトレッキングシューズ! 意外でしたが、確かに登りたくなる山が身近にありますね。昔から山登りが好きだったのですか?

(とと)僕は結婚前から結構自然の中が好きで、いまほど頻繁じゃなかったですが、行ってました。

(あっこ)私は山登りなんて、いっちばん嫌いなことでした。学校行事の低山登山でも「ありえない!」って思うタイプ(笑)。駅の階段登り降りでも息が上がるんですよ。

家族5人のトレーニングシューズ

――そこから今や家族で山登りをするように。百名山も11山をクリアし、今年は15山も登ったとか。どんな心境の変化でしょう?

(あっこ)長野に引っ越してきてからですね。町から浅間山を毎日見ているうち、あそこから見える景色ってどんなかな、と気になってきたんです。

あるとき家族で屋久島に行く機会があって、森の中で、忘れ物を取りに、わたし一人で引き返したことがありました。一人で森の中を歩いていると、今まで感じたことのない、自然に対する心地よさと畏れが入り混じったような感覚になって、新たな何かが目覚め、だんだんこの感覚を味わいたいと思うようになったんです。

その後、2人目、3人目の出産もあり、しばらく山にはいけなかったのですが、下の子が3歳のときに山に連れて行ったら、「意外と(3人とも)歩けるな」とわかって。

(とと)山に入ると、なにかリセットされてクリアになるような感覚になりますね。岩場など危ない場所もあるし、突風に吹き飛ばされそうにもなる。そこを家族でいると、なんていうか、感覚が研ぎ澄まされて、今ここにいる実感というか、一歩一歩生きている実感がふと湧いてきます。

引き返すこともあります。全く予定通りにいかないことの連続で、それも人生そのもののような気がして。なんかリフレッシュというか、立ち還れるんですよね。

(あっこ)仕事から切り離されている体験だけど、逆説的に仕事に必要というか。夏は山登りで忙しいよね。カレンダーと天気をにらめっこして。

(とと)シーズン中は、毎週日曜が山の日。子どもが大きくなってきたから、来年あたりは山小屋とかテントで1泊する登山もしたいと思っています。

山よりも安全に過ごせる「庭」という自然

――最後の必需品は「自然」です。accototo邸のお庭は、まさに自然そのもので素敵! ツリーハウスや、おままごとハウス、ピザ窯もあって、自然の中に出現したワンダーランドみたいでした。ツリーハウスは健在ですか?

(とと)はい、ツリーハウスは健在です。
庭は僕らにとって、山よりも安全に過ごせる「自然」です。庭で子どもと遊んでいると、いろんな発見があるんですよね。蜂の巣を見つけて、蜂の子をとって子どもたちと加工して食べたこともありました。
僕が小さい頃にしていたことを、自分の子どもとすることで、自分の子どもの頃を思い出したりとか、新しい発見をしたりしています。

近所の自然をパチリ!

(あっこ)自然の中にいると自分に立ち還れる感じがする。ないと不安になっちゃうかも。
子どもたちの通園・通学路の一部が国有林で、朝夕の送り迎えで一緒に歩くんです。トレッキングシューズではないけれども、靴底が山対応のスニーカーで。コンクリートの道路では感じないような足の裏の感覚があるんですよね。

(とと)僕は夕方、薪を取るために庭に出るんです。山菜の時期はちょくちょく外に出ているなあ。春はフキノトウをとって蕗味噌を作って、そのあとはカタクリの花があって、フキがあって、秋には山椒の実がつく。そんなときに木々や葉の色を見ていると、飽きることがないですよね。

(あっこ)同じ一本の木でも季節ごとに変わっていくものね。

――山は豊かですね。

(あっこ)熊や他の動物もいる場所なので、獣の匂いがするときには、人間がいることを伝えるために手を叩いたり、大きめに声を出したり、鈴を鳴らしたりするという共存の仕方も少しずつ知るようになりました。

(とと)たまに、家のガラスに小鳥がぶつかって脳震盪を起こすんですよね。そんなときは保護して治してまた自然に帰してあげる。そうすると、連れなのか仲間が外で待っていたりするんですよね。そんな小さな瞬間が、作品を作る原動力になっているんじゃないかと思います。

(インタビュー/柿本礼子)