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「1話作るのに、プロットから考えると3か月。」~アニメ脚本ができるまで~

『アニメおしりたんてい』制作の舞台裏に潜入する本連載。今回はアニメおしりたんていの第一期から脚本を手掛け、シリーズ構成を担当する高橋ナツコさんのお話です。どうぞお楽しみください!

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高橋ナツコ
パーマネント刑事のダジャレをスマホにメモすることが癖になってきた2児の母(1人は成人)。近作は「おしりたんてい」「ブルーサーマル」「さよなら私のクラマー」「マジカパーティ」。

ものすごく大切な情報が詰まっているのを見逃さない

――高橋さんはもともと、テレビの構成作家でいらしたんですか?

高橋:デビューは大学生時代で、ラジオドラマのシナリオでした。その後、NHKのこども番組のお仕事をいただき、同じ頃、他局でもコント台本や寸劇、スタジオ台本やロケ台本などを放送作家として書かせていただくようになりました。連続ドラマは、1998年の「なっちゃん家」がデビューで、アニメシリーズに初めて参加させていただいたのは1999年の「ジバクくん」という作品です。

――おしりたんていは原作がある作品ですけど、原作があるものをアニメ用のシナリオに起こされるときに心がけていることってなんでしょう。

高橋:作品ごとに違いはあって、キャラクターとか基本的なところに関しては原作準拠というのはどの作品もその通りなんですけど、おしりたんていに関して言うと1ページごとにトロル先生たちが描かれている濃密な情報量だったり、後々のお話にも絡んでくるようなものすごく大切な情報が詰まっているのを見逃さないってことですね。それを脚本に、ここのこの絵が後々関わりますみたいな設計図的な側面がおしりたんていの脚本には強いというか。原作で描かれているものをアニメ上でもなるべくシナリオ上できちんと表現して、そこは絵本を見てくださいとしないようにしておくことが、気を付けていることです。それでページ数がものすごく膨らんじゃうんですけど。

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▲高橋さんが「濃密な情報量」というおしりたんてい原作。隅から隅まで、どこでも何かが起こっていて、何かの伏線になっていたり、それぞれのストーリーが展開される。

――1回読んだだけではわからないような伏線がありますよね。

高橋:そうなんですよね。何回も読んで。おしりたんていチームの人、ライターも制作の人もそうなんですけど、どの人の回でも自由に発言しようねという空気でやっているので、誰かが見落としてても誰かが気づいてくれたりということが多いのが、今のチームのありがたいところだなと思います。

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▲原作でのオークションの場面。
右下コマでそれぞれのキャラクターが落札したお宝は、今後のお話にも出てくるかも?

――プロデューサーと監督とシナリオライター数人で1つのチームに?

高橋:そうですね。注目してるキャラクターとかもそれぞれいたりするので、その回のライターが見落としていていても、誰かが気づいてくれたりとか、そのフォローをし合うことがすごくチームワークができているなと思います。

――そうすると、あるエピソードに高橋さんのお名前がクレジットされていても、チーム全員の意見が集約されているという感じですか?

高橋:ということが多いですね。もちろんお話の骨子を書いているのはライターと監督がメインになっているんですけど、チームの人たちが「あそこ、この話に出てくるこのお店がいいんじゃない、なぜなら~」というアイデアをくれたりするのは、今のおしりたんていの特徴ですね。

オリジナルを作るアプローチは2種類

――アニメのオリジナル脚本のものはどうやって作っていますか?

高橋:おしりたんていに関しては、オリジナルを作るアプローチは2種類持っていて、まず、「どのキャラクターをフィーチャーしていく回にするか」というアプローチと、あと「アクションとかギャグとかホラーっぽいとか、お話のテイストできめる」アプローチ。そのどちらかを、シリーズ構成上配分して、そろそろアクション回が見たいよねとか、そろそろかいとうUが出てくる回にしようとか割り振っていくと、おのずとシリーズのワンクールでやるお話は決まっていくんです。

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▲最新シリーズから57話「ププッみみとがりけいじときょうふのやかた」はタイトル通り、わんころけいさつしょのみみとがり刑事をフィーチャーした回。

――アイデア出しの段階でボツになっているものは山ほどあったりするんでしょうか?

高橋:あります、あります。ありますよ~ものすごい量があります。

――それはストックされているんですか? それとも、1回ボツになったらおしまいですか?

高橋:こういう形でいつか使えるかもね、というのはあります。例えば、コアラちゃんたち探偵団の話は、いつかどこか遠くに行かせてみようという話があったり、怪盗アカデミーに関しては、こんなキャラクターだったらどうだろうというのは考えています。原作に出てこないようなものを。

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▲今後も、かいとうアカデミーの全貌が徐々に明らかになっていくのか…。最新刊「おしりたんていのこい!?」より。

テレビシリーズと映画の違い

――高橋さんは映画の脚本も書かれていますが、テレビシリーズと映画の違いってなんでしょうか?

高橋:おしりたんていとブラウンの大きなストーリーの筋は変わらないんですけど、世界観を多少テレビの時よりも違う場所に広げていけるということと、やはり映画の大画面ならではのアクションシーン、必殺技シーンを想像して、大画面ですごい「しつれい」が見れたら面白いねっていうアプローチはありますね。今回の映画も、「しつれい」にはもってこいのシチュエーションになっていると思います。

――アニメシリーズでは、どれくらいの時間をかけてシナリオを書かれていますか?

高橋:1話作るのに、プロットから考えると3か月かかってますね。そういった意味では時間をかけさせていただいてるという申し訳なさとありがたさがあるんですけど。アイデアも皆さんからいただくので、1稿も長いんですけど、2稿でさらに長くなるんですよ、面白いアイデアで。3稿くらいから尺を意識してカットしていくというか。なので、わりと稿を重ねるシナリオになりますね。

――おしりたんていに限らずでもかまわないのですが、脚本を書く時に感じるやりがいを教えてください。

高橋:やっぱり、反響を感じる時があるんですよね。私も子供がいるんですけど、おしりたんていは下の子がはまっていくのと同じタイミングで周りの子の声とかも聞こえてきますし、街に出るとみなさんが面白く観てもらえてるんだな、知ってもらえてるんだなって感じるときがあるんですね。そういうときは嬉しく感じます。

――お子さんからの厳しい意見とかはありますか?

高橋:ありますよ。まあ基本的には面白いと喜んでいるんですけど、厳しい意見というか、もっとだれだれが観たいとか。ギャグシーンも、「あれ、ここ刺さってないな」って時々(笑)。でも、おしりたんていのギャグって、動きのところで子供が笑うので、芝田さん(『おしりたんてい』第1期~第4期シリーズディレクター)はじめ、佐藤さん(2020年より『おしりたんてい』シリーズディレクター)やみなさん、これはシナリオで表現できなかったなってところでたくさん笑いを作っていただいていて、そこは本当に感謝しかないです。動きで笑ってますね、みんな。
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――高橋さんが考えるパーマネントのダジャレとかあるんでしょうか?

高橋:ありますよ、もちろん(笑)。ものすごく考えてます。パーマネントは、こっそりライターチームでパーマネント・ストックというのを作っていて。ただ、芝田監督がすごく得意なので、芝田さんに負けるなという感じです。

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▲この連載でも頻繁に話題に出るパーマネント刑事のダジャレは、原作にもたびたび登場している。

「マルチーズしょちょうと刑事さんたちの関係は好きです(笑)」

――ご自身の担当作以外でも構わないので、特に好きなエピソードを教えてください。

高橋:原作の絵本とか読み物の世界があるじゃないですか。その世界を広げられたなって感じる回がすごく印象に残るんですね。例えば、1期でいうと、コアラちゃんがモリノナカフェに行けた回とか。あれ、ずいぶん町から離れたじゃないですか。今期で言えば電車に乗って出かけるお話があるんですけど、町から出て地図が広がっていくのをすごく楽しみにしているので、シリーズに1、2回入れたらと思っています。あと、いつもいるすずさんや刑事さん、巡査の皆さん、町のみなさんの人間関係の広がり――原作はやっぱり巻数も1年間で書ける量も決まってくると思うんですけど、アニメはたくさん作らせていただいているので、おしりたんていの人間関係や世界観を広げたり掘り下げたりできることに情熱を傾けているというか、そこが子供たちも「こんな森あったんだ」とか「ハチワレってこんなことしたんだ」みたいな、知らなかった一面を広げられたらなと思って作っています。

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▲10話「ププッ コアラちゃんだいかつやく」では、遠くの森のモリノナカフェへ、アニメオリジナルで初めての遠出となった。

――高橋さん自身お気に入りのキャラは誰でしょうか?

高橋:そうですね……マルチーズしょちょうと刑事さんたちの関係は好きです(笑)。何度書いても生まれてくるというか、ネタないよってならないのがすごいなって。

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▲41話「ププッゆきやまのしろいかいぶつ」でも、雪の中アロハシャツで登場した刑事4人はアニメオリジナルのアレンジだった。

――このキャラクターでオリジナルのストーリー1本書いてみたいとかありますか?

ネクラネールが何をしようとしているのか、とか書きたいですね。あとは次の期に向けて、さるちえおの回を書いたりとか。町を良くしようと、さるちえおに清き一票を、っていうのを。

「映像を表現するシナリオという書き物のスタイルが、文章として心地よかった」

――高橋さんは小さいときどんなお子さんでしたか?

高橋:私、今も休日にやりたいことが小さい頃と変わっていなくて。アニメ、実写、漫画、絵本、小説、……って興味があることが変わっていなくて、わりとインドアで。映像と読み物が好きですね。

――子供の時、とくに好きだった作品ってありますか?

高橋:たくさんありますけど、印象深いのは「赤毛のアン」ですね。洋書から入って、いっきに日本の児童書の全盛期が来たので、そこでいろんな文庫にハマっていきましたね。そのまま大人になっちゃいました(笑)。

――そういう人はたくさんいらっしゃると思うのですが、作る側に回る人はごくごく限られているかと思います。どうしてこの世界に入ろうと思ったのか教えてください。

高橋:脚本ってなんだかよくわからないじゃないですか。小説家とか漫画家ってわかりやすいと思うんですけど。親戚に映画のカメラマンをしていた叔父がいまして、ドラマとか映画には脚本というものがあるんだというのを小学校低学年くらいのときに教えてもらったんですね。私の小学生時代って、山田太一さんや向田邦子さんのような全盛期のテレビドラマがあり、「ガンダム」も「ヤマト」も「リボンの騎士」もあって、なにからなにまで、「脚本」っていうのがあるんだっていうことを小学生の頃に知れたのはラッキーでしたね。
高校生くらいになると、当時神田の本屋さんでシナリオを買えたんですよ。そういうのを休みの日に買いに行くことをすごく楽しみにして。もちろん小説は読んでて好きなんですけど、シナリオ独特のセリフとト書きという組み合わせで、ほぼ完尺でそれを読み終えると23分経っているような、「セリフ」と「ト書き」の気持ちよいリズムで絵が表現できて、映像を表現するシナリオという書き物のスタイルが、文章として心地よかったというか、好きになってしまって。脚本を書きたいなって、もうその頃から思っていました。

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▲アニメおしりたんていの脚本。読んでいると場面が浮かび、声優さんの声が聞こえてくるよう。

――では、他の職業を目指すとか就活するということは、なかったんでしょうか?

高橋:なかったです。漫画も絵も好きだったので美術大学に行ってたんですけど、就活しないまま、投稿をしていて読んでいただいたという感じです。
たくさん教本読んだりとか、いろんな方のシナリオを読んで、頼まれてないのに勝手に書いて、独学でしたね。

――自分でお話を生み出したいなあとおぼろげに思っている人たちにアドバイスがあれば、一言お願いします。

高橋:なんでも書きたいと持ったことは、日記じゃないですけど、どんどん好きに書いて想像して、なんて言うか、書きたいと思うことがあったら誰にもとらわれず自由に話を膨らませていってくださいと思いますね。

――ありがとうございます。面白いお話をたくさんおうかがいできて楽しかったです!

高橋:ありがとうございます。

続きはまた次回をお楽しみに!(インタビュー:尾関友詩(ユークラフト)/構成:長谷川慶多(ポプラ社))

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