早い者勝ち?!世はまさに月面大航海時代!!【THE VOYAGE 2019年5月号掲載分】

1969年7月20日16時18分。’’The eagle has landed” という言葉ともに、アポロ11号は月面に降り立った。それから半世紀が経つものの、アポロ11号ほどの歴史的な出来事を人類はいまだ経験していない。 人類は月の支配者となったのだろうか。

月面を縦横無尽に車が走り、地下居住区には各国の研究所や宿泊施設が建築され、いつも地球からの出張者や観光客たちでごった返している。 50年

もっとみる

紫砦と石の竜 −その2

「いやはや、驚いたな。」

 手弓を操る子どもの隣でギジムが、深いため息を吐く。

 「こんなこともできるよ。」

 ストライダ見習いのミルマはそう言うと、弓弦を引き、立て続けに矢を三射ほど放つ。矢は的のど真ん中に命中し、次の二射が最初の矢の矢羽根をこそげ落とすほどすれすれの所に突き刺さる。

 ドワーフは大喜びでミルマの肩を抱く。

 「たいしたもんだ!おれの兄貴も弩弓の名手だが、お前に比べたら

もっとみる

紫砦と石の竜 −その1

ベラゴアルド年代記

竜の仔の物語 −序夜異譚−

 ドライアド諸島から北東、モレンド大陸に位置するその砦は、レムグレイド王国において重要な防衛の要である。

 そこは通称、「紫砦」と呼ばれている。礎から擁壁まですべての石積みに砕いた紫水晶が塗り込められていることから、そう呼ばれているのだ。

 詳しい理由を知るものはいないが、神話の時代において、大魔法使いガールーラにより魔物除けとして考案され、

もっとみる

あてのない旅へ

たなびく雲の行き先なんて
気ままとしか言いようがないように
あてのないまま
旅に出てもいいんじゃないのかな

目的地なんて
成り行き次第でどうにでもなる

激しい風が吹いたら立ち止まって
スコールみたいな雨は濡れないように雨宿りして
霧雨のいたずらに心くすぐられて

七色の虹がほんとに七色なのか
一つずつ数えてみるの
自然とともに
ゆっくりとしっかりと

一歩ずつ踏みしめれば、
きっといつかはたど

もっとみる

ひとの願いは宝物だ

人の願いをきくのがすきだ。

鎌倉に住んでいたころ、近所の鶴岡八幡宮へヒマを見計らって通っては、ひとのしたためた絵馬を眺めてエネルギーをもらっていた。いま考えてみると、鶴岡八幡宮が近所にある環境って貴重だったなあ。

願い、祈り、想い、気持ち、夢、目標、ゴール。

よくこういった言葉には「重い」「軽い」という形容詞がついたりするけれど、ひとの願いや祈りに軽いも重いもないとわたしはおもっている。

もっとみる

嘘つきのウソ

寂しくなんかないよ
大丈夫だよ

もしかしたら
本当にそう思えるかもしれないって
どっかで信じてて
どっかで自分に言い聞かせていて

慰めの言葉なのかもしれない
自分自身への

素直に感情のまま
荒々しくもムードメーカーで
まっすぐなあなたには
ねじ曲がった感情など届かない
言葉は言葉のままに

それが嘘だとも気づかずに
何度も塗り重ねられて

気づいた頃には抜けられない
透明マスクのレッテルは出

もっとみる

銀と金 −後編

「そういうことか。」

 アイカレが杖で痩せた細ったミルマを小突く。彼女は何の反応もしない。すでに気力が尽きているようだ。

 「お前がたぶらかしたのか。」アイカレはもう一度ミルマを小突き、そして杖を振り上げる。

 反射的にルグは前へ出る。しかし、彼はなぜそうしたのかが自分でもわからない。

 ぼんやりと佇むルグを見ると、魔法使いは安心して、今度はルグの肩を強かに打ち付ける。そして何やらぶつぶつ

もっとみる

流れてくる音に酔いしれて

流れてくる音楽
心地よいリズムを刻んでひとつ上の世界へと導いてくれるような

センスというか感性というか第六感みたいな
言葉では言い表せないようなところで
何か通いあう共通点のようなものを見つけると
嬉しくなってしまう

この音すきだな、この曲聴いたことがある、かわいいリミックス!

なぜだろう
心地の良い音楽を聴いてると不思議と仕事もはかどる

聴き入る、という音楽ではなくて
歌詞や音階に感情移

もっとみる

銀と金 −中編

ミルマが去ると、ルグは牢の隅へしゃがみ込む。藁をかき分け、傷の付いた床を見つけると、床を剥がし、石の隙間に並んだ小瓶を取り出す。

 彼は小瓶のふたを開け、まず匂いを嗅いでみる。腐った匂いがする。違う瓶も試してみるが、どれも同じ匂いがする。ようやくひとつだけ違う匂いの小瓶を見つけると、彼は少しだけ舐めてみる。

 もの凄い刺激臭と酸味が舌の上を伝わり、身体中が痺れる。一口飲んでみると、頭の奥がぎり

もっとみる

銀と金  −前編

竜の仔の物語 −序夜異譚−

 ルグは、はじまりを思い出そうとしていた。いつからここに居るのか。どうしてここに居るのか。少しだけこの場所に嫌気がさしてくる時には決まって、はじまりを思い出そうとした。

 特にこうした今夜のような蒸し暑い夜。格子窓から湿気った南風が吹いて、牢の四隅に積った糞尿の臭いをかき混ぜる時などは、ここに来たはじまりを、彼は必死に思い出そうとするのだった。

 自分の名が“ルグ

もっとみる