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技術を使いこなし、人間性を拓く|LAP8期コンピュータサイエンス単元の復習

去る8月6日(日)に、株式会社Fusic 取締役副社長 浜崎 陽一郎さんをお迎えして、LAP8期のコンピュータサイエンス単元を開催しました。

今回も学習者としての視点で、講義を振り返りたいと思います。

※参照:Liberal Arts Program for Next Leaders~人間を考える学び舎~

冒頭ではプロデューサーより、LAPが始まって2か月、個として、チームの一員としてどう向き合えているか、貢献できているか、問いが投げかけられました。

事前に浜崎さんから出題していただいた課題については、こちらを参照していただければと思います。

▼数字に表せない価値とは?|LAP8期コンピュータサイエンス単元の予習

1)講師の浜崎さんについて

・九州大学大学院在学時に、学友の納富社長と共同でFusicを立ち上げ。
・2023年3月、上場。
・社員数は100名を超えるも、現状オフィスの席は70席。
・フルリモートの働き方は2~3割生産性が落ちるという研究結果が出ており、実際にAI事業部のメンバーこそ「顔を突き合わせなければ仕事はできない」と言っている。これからの働き方の参考にしていただきたい。
・Fusicでは、現在、宇宙産業にも乗り出している。
・福岡発のベンチャー企業だが、今では全国から採用をするまでに至っている。

2)なぜChatGPT(生成AI)が話題なのか

①言語系(ChatGPT、Bard)

⇒文字から文字を生成

②画像系

⇒文字から画像を生成

③ChatGPTは、2か月で1億ユーザーを獲得

④業種役職に関わらず、我々は「情報加工業」に属する

⑤活用の事例

⇒ニュース番組に出る前の情報収集
⇒経営会議の前の壁打ち
⇒結婚式のための気の利いた電報

⑥情報加工=情報収集→整理→発信

⑦1次情報→ChatGPT&情報加工→意思決定

⇒AIが人の仕事を奪うのではなく「AIを使いこなす人が仕事を奪う」
⇒AIを使いこなすために、概念を理解する必要がある。
 (Word,Excel,PowerPoint,そしてAIにはそれぞれできること、できないことがある)

3)ChatGPT登場の背景(技術の変遷)

①AIブーム

・1950~1960年:第1次AIブーム
・1980~1990年:第2次AIブーム
 ⇒人間の目の代わりを果たして欲しかったけれど、無理だった。
・2015年~:第3次AIブーム
 ⇒2012年 ディープラーニング(画像の特徴をAI自身が自動で抽出する)
 ⇒数多の画像を細分化し、0・1配列の特徴によって判断。人間の視点ではわからない。

②新技術「トランスファー」(LLM:大規模学習モデル)

・「今日は晴れでした。明日も」⇒「晴れでしょう」

4)ChatGPT登場の背景(情報量の変遷)

・この20年で世界の情報量は爆発的に増えた。
・「探査」から、「選択」へ。
・2000年頃、Google検索が登場。
・2006年頃、口コミ機能が登場。
⇒口コミのサクラが増え、SNSでの情報が参照されるように。

5)ChatGPT活用のコツ

★プロンプトに何を入れるか:指示・参照情報・条件

6)生成AI時代の人材像

①1次情報

・0⇒1(クリエイティブ)
・五感(リアル)
・質問力(違和感)

②ChatGPT&情報加工

・ChatGPTを最低ラインにする姿勢

③意思決定

7)グループディスカッション

①大学の課題でChatGPTを使用することは、なぜいけないことなのか?

・評価ポイントが1次情報の収集と処理なので、何を評価すればよいのかがわかりにくくなる。
・大学の課題として扱うような高度な内容ほど、ChatGPTは弱い分野。
・教員が活用できていない、理解できていない。
・学生を信用できていない。
・教員の狙いは、考えてもらうこと、自分の意見を持ってもらうこと。学生の狙いは、提出して単位を取ること。
・ChatGPTが必ずしも正しいわけではない。
・学生のオリジナリティを観ることができない。

②どうすれば大学の課題・レポートとChatGPTが共存できるのか?

・教員が課題に関する文章をChatGPTで生成し、その正誤性を学生に判断させてはどうか。
・最終のアウトプットは人間がやるべき。過程においては壁打ち相手にしても良いのでは。
・生成AIを使ってよりよりアウトプットが出せるなら、その方がいい。理解を広げていく必要がある。
・ChatGPTでは生成できない、本人のオリジナリティを問うようにする。

▼教員は全然活用していない。
▼答えを導くプロセスにこそ学びがある。
・ChatGPTを使わなくても、既に存在している答えを探すことは、昔よりも容易になっている。宝の山の中から、よりよい宝をどう見出すかを議論すべきではないか。
・答えを導き出すときに、自分の中にある前提を問う。
・宝を探す力と、その価値を問う力。これから必要なのはどちらか。
・わずか数年で同時翻訳機の機能は飛躍的に伸びる。であるにもかかわらず、英語を学ぶために時間を割くのか。
・人間が問うべき視点をあげることが必要ではないか。
▼ChatGPTが生成するのは「文章の最大公約数」。普通、魅力的ではない。
・ChatGPTを最低ラインにして、人間にしか出せない価値を。

8)事前課題1の発表

Aチーム

▼スタバ:行くことが目的、機能的、合理的、生産的、日常
▼喫茶店:飲食が目的、人格的、非日常

Bチーム

▼スタバ:均質性、Wi-fi、充電、仕事ができる、顧客への無関心=顧客の自由度、再現性、スケール
▼喫茶店:お店の個性(店舗、マスター)、コミュニティ性
▼ユーザーのニーズが異なる。

Cチーム

▼スタバ:流行、均質性、代替可能、システムを売っている。
▼喫茶店:店主のこだわり、お店の売りの商品。

Dチーム

▼スタバ:商業戦略「長居させない」大きいBGM、座りにくい椅子、宗教性がある?、購買者層以外へのアプローチによってブランド価値をより高めている。
▼喫茶店:安心感、長居するお客さんが多い。

★定量化できない価値を、言語化することがマルチモーダルな時代に必要となってくる。

9)事前課題2の発表

Aチーム

▼ブランディングされた価値:ディズニー、Dior、マクドナルド
▼つかみどころのない価値:美術館、劇場など芸術的なもの
▼どちらも数字で表せない価値。「スタバのように」と考えるなら、ディズニー、Dior、マクドナルド。
Q.「つかみどころのない」とは?
A.前者は顧客のニーズに合わせて提供、後者は作者の価値観を提供する。

Bチーム

▼従来の家具屋:家具を売るだけ、高い買い物なので入店ハードルが高い
▼IKEA:家具だけじゃない、おしゃれなライフスタイルを丸ごとコーディネート、価格が安い。
★価値を提供するときに、異なる視点で光を当てて、届けることはとても重要。
 ⇒Fusicでも、梅田の百貨店にて、ショップを跨いで類似するアイテムを、特定の試着室ですべて試着できるサービスを試験運用している。

Cチーム

▼数字で表せない価値:アイドル、友人の○○、特定の人物、コスメ、博物館、美術館(歴史を提供する場)
▼絶対的でない「好き」こそ数字で表せない価値。
Q.「主観による」と結論付けてしまうと、何をよりどころに、「誰かの好き」を「万人の好き」に昇華させればよいのか。
★ここが言語化できると、創造性につながる。

Dチーム

▼ディズニーランドの価値:物質的な価値、体験的な価値、ブランド価値、コミュニティ形成、都市・環境美化
Q.ディズニーとUSJの価値の違い。
A.
・ディズニーはディズニーの世界観、USJはいろいろな世界観。ディズニーは世界観が目的、USJはそれぞれのコンテンツが目的になる。
・例えば、ディズニーには大きなキャンディのモニュメント。それは子どもの時に感じていたサイズ感が表現されているのではないか。

★「世界観」と「価値観」は、ニアリーイコール。
★「目に見えない価値」を言葉に表してみる。

・例えば、フレームワークを活用する。自然体で考えるだけでは見えない視点で価値の解像度をあげる。でも、完全ではない。取りこぼされる視点が必ずあることにも自覚的でいる必要がある。
★前回のワールドカップで日本はなぜ負けたのか。岡田前監督「型がないから」。
・昔の弱かった頃の日本サッカーは「型」しかなかった。柔軟性、応用性がなかった。
・その反動で、「自由に」プレーをするようになり、ワールドカップに出場できるようになるも、その後、基礎のできない選手が増えてしまい、型を失ってしまった。
・ヨーロッパでは、15歳までに徹底的に型を教える。メンバーの立ち位置が目をつぶっていてもわかる。対して、型を失った日本は、目視しなければメンバーの位置がわからない。その差が、勝敗を分けた。
⇒フレームワークは、守破離の「守」。

10)時代は変わっている

・社会は変わっているし、変わり続けている。
・世の中の変化を自覚的に捉えて、新しい技術や知識は積極的に「使う」。
・うまい下手より、やっているかいないかが重要。
・必要に応じて、手放し、常に新しいものを学び、身に着け続ける。
・時代は変わり続けるが、ルール整備はいつも後追い。
・その狭間でお金を儲ける人が沢山いるが、それはいつまでも続かない。
・いかにモラルをもって、技術を活用していけるか。
 ⇒無形の価値を捉える、自身の中に判断軸を持つ。

★技術を使える人になる。モラルを持つ。

11)質疑応答

Q1.探し出す力よりも「選択する力」を伸ばすには?
A1.「質問力」を磨く。自分の中の考える力を磨くことで、質問する力も磨かれていく。

Q2.誰もやらないことにどうやって手を付けるのか?
A2.誰もやらないことではなく「まだ誰もやっていないこと」。
⇒パソコン(道具)・データ(材料)・AI(料理人)
⇒クラウド→AI→量子コンピュータ→…と、Fusicも様々なことに取り組んできた。
⇒いいもの、面白い物も、スケールしないのには、何か必要なファクターが欠けている。欠けているファクターを一つずつ整えていく。

Q3.何から手をつければよいのか?
A3.「新しい技術を知ろう」と意識することで、いつもの風景の中にも気になるニュースが増えてくる。そこで入ってきたものを、まずは使ってみる。

Q4.宝の山「すべていい!」選べずにいる。まず「これ」を選ぶときにどういう意識をしているか?
A4.あれもしたい、これもしたい、「その向こうに何があるのか」「何を成し遂げたいのか」に目を向ける。経営者の仕事は、5年後、10年後を見据えて、今日、明日やることを示すこと。

Q5.文系の自分がITを活用して貢献していくには、自分の専門をITと組み合わせていくことが必要?
A5.専門分野を学びながら、ITを学び、掛け合わせて、自分で作れるようになったら、情報系の学問だけしてきた人材よりも強い。
Q6.AIをつくる?活用してシステムを作る?
A6.前者で価値を生み出すのは難しい。データを集めて、活用していく、後者の方が重要。

12)リフレクション:プロデューサー

Q1.情報爆発は、自然の摂理にかなわない異常値。この流れは、人びとの幸せにつながると、浜崎さんは捉えているのか?

A1.情報爆発は異常値ではないのではないか。世の中のもので、言語化、数値化、データ化されているものは、まだごく一部。今後もどんどん増えていく。

技術は進歩するものという前提ではある。一方で、技術の進歩に、使う人の進歩(成長)が追いついていない。

ヨーロッパではChatGPTを禁止しようとする動き。神・人間こそが至上という価値観において、ものと人が並列できる日本の八百万の価値観とは違う反応が起きている。

価値観に応じて、今後の対応は分かれていく。

★「絶対と相対」・「主観と客観」、どこからがそうで、そうでないのか。相互作用しながら我々は生きている。

★「クリエイティブ」と「型」

13)おわりに

いわゆる典型的な「私立文系」で生きてきた私にとって、テクノロジーの話はどうしても途中から理解不能になってしまうのが常ではありますが、課題図書「シン・ニホン」で著者の安宅さんも仰られているように、それそのものを開発する専門家の周辺に、支えたり、活用したりする人たちの存在あってこそ、実際に社会で実装される、そうであるのなら、専門家の方々に感謝と敬意を持ちながら、今回の浜崎さんのお話を念頭にいかに意味ある形で活用していけるのか、しっかりと向き合っていきたいと思います。(手始めに仕事での活用頻度を上げたいと思います!)

以上

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