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ぽっぺのひとりごと(20)真夏のサンタさん

Мさんから電話があった。「差し上げたい物があるから、30分後くらいに表に出ていてね。」
プランターの花達に水をやったり、枯れた葉を始末したりしていたら、車のライトが見えてきた。Мさんだ。助手席から降り立った彼女が私に手渡した物は・・・。 
スイカだ。小ぶりだけどズッシリ重いスイカ。昨年も一昨年も頂いた。

「たぶん甘いと思うんだけど・・・。」「きっと甘いですよ。去年頂いたのもとってもおいしかったから。」「今年も買いに行ったのよ。あなたを喜ばせたくてね。」「Мさん、毎年ありがとうございます。こんな素晴らしい贈り物を頂いて。嬉しくて言葉になりません。」「いいのよ。猛暑が続くけど、元気しててね。」「ありがとう。Мさんもお元気で。」
運転席の御主人にお辞儀をし、Мさんに手を振った。車が見えなくなるまで。
果物はどれも大好物だが、倹約のため、もう何年も買っていない。Мさんからのスイカのプレゼントは大変ありがたい。

私はМさんに大変恩義を感じている。もう20年以上になる。今よりもっと田舎に住んでいた頃のこと。仕事帰りに田んぼの傍のバス停で乗り換えのバスを待っていたら、顔見知りのМさんとバッタリ。
「公民館で寄り合いがあってね、帰るところなんだけど・・・。あなた、おにぎりいらない?」「えっ、いいんですか。嬉しい!」「残り物なんだけど、いーい?」「遠慮なく頂きます。」「良かった。こんな物で申し訳ないけど・・・。」「とんでもない。立派な晩御飯です。」
梅干し入りの白いおにぎりと沢庵漬のおいしかったこと。涙を浮かべながら食べたこと。未だに忘れられない。

同じバス停で犬を連れたМさんにお会いしたこともあった。白い大きな犬で、とっても優しい目をしていた。特別なことを話した訳ではない。でも、小柄なМさんの体全体から滲み出る優しさと素朴な温かさに包まれ、私は幸せな気持ちになった。
いつかのおにぎりのお礼を言ったら、「まあ、あんな物をそんなに喜んでくれたの?」と、びっくりされた。

一緒にお出かけしたことがない。ランチに誘ってみたこともない。なぜだろう。Мさんは毎年、猛暑の中、スイカを届けてくださる。感謝を込めて、手作りのお礼状を送る私。そんな関係が続いている。
来年、お花見に誘ってみようかな・・・・・。


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