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フランスのBio農家の衛生観念に「ついていけない」と思った話

6月はリヨン、7月はイギリスと、なんとか自室の外で過ごしてきましたが、8月……。多少は暑さが落ち着くかと思いきや全然で、熱波が到来。あまりにもフランス中北部の自室が暑すぎるので、今月もヨーロッパ北部をさすらうことにしました。なんで換気しても扇風機使っても室温が30度以下にならないの……。

とはいえ、6月7月とお金を使っているので資金はさほどなく……無料で北部に滞在する方法として、Bio(有機農業)農家のお手伝いをする代わりに無料で家や作業小屋に滞在させてもらうWoofingを利用することにしました。

お手伝いなので農業は未経験で大丈夫なのですが、私は元々実家でも家庭菜園をしていたので、自分のやり慣れた作業をしそうな野菜を作る農家さんに連絡を取り、滞在の交渉をしました。そして、無事交渉は成立し、1週間ほど滞在させてもらいました。

しかしまぁ、この滞在は中々にびっくりする経験でした。作業に、ではないです。作業内容はおおよそ予想通りで、さほど過酷ではありませんでした。びっくりしたのは、その衛生観念です。日本と違いすぎる……。

と言うわけで前置きが長くなりましたが、私がびっくりした住環境や出来事について書いていこうと思います。

水道が通ってない島に滞在

私が住んでいた作業小屋には、水道が通っていませんでした。というのも、私が連絡をとった農家の畑は川に浮かぶ島の上にありました。この時点ですでに「島に滞在するなんて聞いてないんだが……」と驚いていたのですが、さらに驚いたことに島の上だからか水道が引かれていませんでした。

なので、生活用水も、飲料水も、元は全て川の水。飲料水はBerkeyという、調べる限り性能の良さそうな浄水器を通すのですが、それ以外は川から引いてきた水そのままです。一応ある程度フィルターを通しているようですが、蛇口から出てきた水をコップに入れると白く濁っている……ついでに変な臭いもする……その水で身体も食器も食材となる野菜も洗う……

蛇口から注いだ水。
これでも注いだ瞬間よりは透明です……。
でも変な匂いはします。
Berkeyで濾過された水。無臭です。
この浄水器を信用するしかない……。

正直に言うと「え、マジで?」と思いました。「途上国みたいに茶色いわけじゃないし」「井戸水を使う人たちもいるんだし」等々、適応しようと色々考えはしたのですが、ここフランスだし、井戸水って透明だし異臭がしたら大騒ぎになるよな……と思うと「浄化装置を付けないの、普通に考えてヤバくない?」と思いました。

特に食器と食材をこの水で洗うのは、最後の最後まで抵抗がありました。「水、うっすら白く濁ってるけど、変な臭いするけど、それで洗って大丈夫?」と毎日思っていました。サラダにする野菜も蛇口から出てきた水で洗うので、正直食べたいとは思えませんでした。電子レンジでいいから加熱したい……。もちろん郷に入っては郷に従えですし、新鮮な野菜なので味は美味しいんですけどね!

私の消化器官は丈夫なのでお腹を壊すことはなかったのですが、将来人間ドックでピロリ菌が見つかったら絶対この滞在のせいだろうな……と思っています。ちなみに農家さん自体は時々小屋に奥さんが泊まっていましたが、基本は街中のアパートに住んでいます。

トイレはぼっとん式+アルコールジェル

水道が通っていないからか、はたまた堆肥にするためか、トイレの設備も普通の住居とは異なりぼっとん式でした。トイレは小屋の外、畑の中に設置されていたので基本的に日没までに済ませていました。まだ夏でよかった。

ぼっとんトイレ自体はフランスの公衆トイレで経験があるので私自身は許容範囲ではあるのですが、トイレを覆う小屋の板と板の間に隙間があるので、常にトイレの中をハエがブンブンと飛んでいました。しかも排泄物は厚手の大型の黒のビニール袋に落ちるので、おが屑を撒くときに普通に中身が見える……おが屑を撒いたところでシルエットは見えている……。

そして、小屋以外に水場がないので、「トイレした後はアルコールジェルで消毒してね」とトイレの扉に書いてあるし、ホストマザーからもそう説明されたのですが、いや、今のご時世「小屋に帰って手を洗え(そのあとがアルコールジェル)」とすべきでは……とつい心の中でツッコミを入れてしまいました。私1人、用を足したら小屋にすっ飛んで帰って手を洗っていました。

なんでトイレに行った後に手を洗わないで平気でいられるのでしょう?わからない……。

食品の管理が雑

最初、小屋の冷蔵庫を開けてびっくりしたのは、ラップがかけられずに使いかけの野菜や食べかけの肉料理が冷蔵庫に入れられていることでした。なぜ小屋にちゃんとラップがあるのに使わないのか、そもそもこの肉料理はいつのものなのか……。結局肉料理はコンポスト行きになっていました。

食品ロスについて、学食でもお残しがたくさん出るので、フランスの一般人があまり厳しくないのはわかっていました。が、特にこの農家さんの場合、ズッキーニなど一度に使いきれない大きさに育った野菜であっても、なぜか最初に縦半分に切る…‥。空気に触れる面が増えたらそれだけ萎びてしまうのに……と常に思っていました。

また、ホストマザー主導で昼ごはんを作ってくれた日があったのですが、その時も、暖炉の上の鍋に入っていた、いつ茹でたのかわからないマカロニを匂いを嗅いで「大丈夫」とフライパンへ。いくら加熱するとはいえ、何日前に茹でたのかわからない常温保存のマカロニを食べようなんて、私には思えない……(幸い体調は大丈夫でしたが)。

これらを受けて自分が料理した方が良いな、と思って進んで料理した結果、いつの間にかご飯当番になっていたのはまた別の話です。

コンポストをテーブルの上に置く

先ほど少し触れたコンポストについて、一応簡単に説明すると生ごみを堆肥に変えるための装置です。屋外設置型や密閉できるバケツ型のものなど、様々な形のものがありますが、この小屋の中には密閉可能なバケツ型のものが置いてありました。

有機農家なのでコンポストがあるのは予想がついていたのですが、そのコンポストに生ごみを入れる時、なぜかこの家の人たちはテーブルの上にコンポストを乗せるんです。それが楽なのはわかるのですが、何せコンポストの内側だけでなく外側にも土なのか、発酵したカスなのかわからない茶色いものが満遍なく付着して……率直に言うと汚い。どうしてそんなものを料理や食事で使うテーブルの上に置いちゃうんですか……?

というわけで、自分がご飯を作る時は絶対にテーブルの上に置きませんでした。コンポストは動かさず、生ごみをまな板に乗せて捨てに行きました。この方法でも別に不便じゃないのに、どうしてわざわざコンポスト側を持ち運ぶのでしょう……わからない……。

まな板を地面に置く

滞在中に一度、ホスト家族のお友達が島に遊びに来た日がありました。ただ、お友達の中に歳の近い人もいなければ、私の語学力では話の中身が全くわからないし、加えてお酒も飲めないので、大抵の時間は小屋の中でのんびりしていました。

もちろんお友達が来ているので、あまり農作業は進まず、暇な居候である私は皿洗いをかって出ました。テーブルの上に置かれた空の食器たちの中に、コーヒーカップが乗っている小屋唯一のまな板(木製)があって、次の食事の準備のために最初に洗うことにしたのですが、取手を触った時にいつもよりもざらっとしたので、カップを退かしてひっくり返すと土と葉っぱが……。

え、このまな板の上でバゲットとかチーズとか切ってましたよね?あなたたち

プラスチック製ならまだしも、木製で既に包丁の傷もついているので、下手な扱いをしたら菌や虫が発生しかねないのに、土の上に置くなんて……ちょっとあり得ないなと思いました。超入念に洗って熱湯をぶっかけておきました。

あと、この家の人たちは新しいスポンジのストックがあるので、いつまでもボロッボロの……握ったら崩れていきそうなスポンジを使っているので、1週間皿洗いをする者として新しいスポンジを出させてもらいました。お願いだから、食事関連のものだけは衛生的に管理してくれ……!


これまで寮で一人暮らしだったこともあり、フランス人と暮らす機会自体はなかったのですが、普段住んでいる街では日本人学生のホストファミリー宅やフランス人の友達の実家に招かれた時も、どの家も日本と同程度にキレイにしてありました。なので、フランス人全員がこのような衛生観念というわけではないです。キレイにしている家庭も多いです。

ただ、日本人の感覚からすると衛生観念がぶっ飛んでいる家庭がある、というのも今回の経験でわかりました。日本で同じことをしたならば、何度食中毒にかかっていることか……。恐ろしいことこの上ない。

気候によって衛生観念に多少差が出てくるのはわかりますが、この農家と私の感覚はかなり乖離していました。「私って潔癖症だったっけ?」って思うほど。別に農家の方は皆優しくしてくれて良い人たちだったのですが、本当にどうして……。

今回の滞在はひとまず無事に終えることができました。実はもう一回Woofingをする予定が決まっているので、そこにはせめて水道があることを祈っています。そして、数十年後の人間ドックで私の胃からピロリ菌が出ませんように……。

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