サラットナさん 序章

お盆の季節、万勝神社では御霊祭がある。
ご先祖様を敬う日。そして、まだ神の世界に戻れない御霊様たちを呼びあつめ、神々となられたご先祖様たちが、彼らを迎えにくる日でもあるらしい。

朝からたくさんのお供えの品が次々と届く。
白い布をかけた大きなテーブルの上には、
美味しそうな揚げ物、ご飯類や麺類。
色んな種類のお菓子に果物類。
飲み物もビール、お酒にジュース。

御霊様たちが食べることができるように、先ほどから皆んなでお菓子や飲み物の封を開けている。

へぇ、本当に食べるんだと、新人のわたしが驚いていると、霊感があると言われている巫女さんが言う。

「そうですよ。毎年、数百人集まりますよ。
うようよと。だから、ほら、いつもゴミ捨て場を荒らすカラスもここには来ないんです。」

「これだけ食べ物あったら、普通、一晩おいたらカラスにやられるでしょ?なのに全然こない。
それが証拠。」

こら、そこの○○さん、お喋りしない!
巫女長からお叱りの言葉が飛んでくる。

私は、もし間違って霊が見えたら嫌だなぁと思いながら、初めて万勝神社の巫女室に入った時を思い出していた。

『こんにちは』と涼やかな綺麗な声。

思わず小さな巫女室を見渡したけれど、誰もいない。そう誰もいないのに聴こえてしまったのだ。

巫女長がその場にいなくなると、また霊感があると言われている巫女さんが話し始めた。

「そうそう、いつのまにか境内が綺麗になっている時があるんです。今年からお掃除担当の貝塚さんがいらしてくれたけど、この神社には掃除をする小人がいるみたいなんですよ。貝塚さん!」

ほんとにいるのかもしれない。
そう思いながら、お供えの置き場が無くなり、
ひとりテンパリはじめた私だった。

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