まぐろさばおの週刊映画ガイドブック

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まぐろさばおの週刊映画ガイドブック

本職は映像屋。業界の片隅で何とか呼吸しています。 YouTubeにて週刊映画ガイドブックというチャンネルを細々とやっています。 細りゆく邦画界をゲームの侵略から救いたい大義なのですが どうみても全くバズってないので誰か見に来て欲しいですわ。

最近の記事

グレートウォールはB級映画か

さて今日紹介するのは2016年中米合作の歴史アクションモンスター映画「グレート・ウォール」 監督はかつてはアジアNo.1映画監督ともされた巨匠チャン・イーモウ。はじめてハリウッド資本やマット・デイモンなどハリウッドと組んだ画期的な映画でスタッフも半分中国半分ハリウッドというかなり異色なものだったようだ。 だが、どうも日本ではB級バカ映画の扱いを受けあまりヒットせずに終わってしまった。 その気持ちもわからなくはない。 舞台は北宋時代(960年 - 1127年)。万里の長

    • スキャナー・ダークリー 深淵を観察したもの

      前回ハーモニーコリンのビーチ・バムを簡単に解説させてもらったが、今回も同じように若干マニアックだというイメージで語られがちなスキャナーダークリーについて語っていく。 現代の鬼才リチャード・リンクレイター監督 リンクレイターという名前を軽めに知っている人は、おそらく「スクール・オブ・ロック」というほんわかした音楽コメディを思い浮かべるかもしれない。あるいは、BBCが選ぶ21世紀の映画ベストで第5位に輝いている「6才のボクが大人になるまで」の監督かもしれないし、あるいは「ファ

      • ビーチ・バム 不真面目な補習

        さて、最近youtubeの方では新作のレビューしかやっていない。何しろ旧作だとYoutubeのアルゴリズム上、アクセスがほとんど見込めないからね。 しかし旧作でも、もっとみんなに知ってもらいたい化け物のような映画はある。その一つがハーモニー・コリンXマシュー・マコノヒーのビーチ・バム まじめに不真面目(2021)という映画である。 私はこの映画、まじめに21世紀の映画ではベスト1だと思っている。 全米1の悪ガキ ハーモニー・コリン監督といえば、「全米1の悪ガキ」とか、「

        • 映画「ナポレオン」 時代錯誤的な非英雄像(酷評)

          さて、リドリースコット監督の最新作ナポレオンを初日に見てまいりました。 感想を端的にいえば、2023年自分が劇場で見た中では一番駄作だと感じました、いや更にいうと金をかけたB級映画だなと言っていいと思います。 ロッテントマトの点数は別に信用しているわけではないんですが、批評家・一般観客共に記録的な低さを叩き出しています。 批評家の短評を見ても首肯できる部分が多く、「リドリースコットの失敗作の典型、style(見栄え)はあるけど、substance(中身)は乏しい」「ナポレ

        グレートウォールはB級映画か

          かぐや姫の物語 10th Anniversary

          2023/11/23で10周年 早いものでもう日本公開から10年が経過しようとしている。また高畑勲監督の他界からも5年が経過し隔世の感がある。 個人的には学生時代高畑監督の授業を受けたことがある恩師であり、また個人的にも最も注目する監督の一人であったため思い入れはひとしおである。 大赤字に終わった興行収入 多額の制作費(51.5億)を投じたもののペイラインを大きく割り込み、24.7億にとどまってしまった。 (慣例として言われていることは、興行収益の半分は興行主つまり映画

          ゴジラ-1.0で山崎貴が言いたかったこと(実在のモデルがいる件)

          さて初日に見てきましたゴジラ-1.0。 読後の感想はどうだったかというと、実は結構微妙な気持ちでした。 やはりVFXは素晴らしく、事前にギャレス・エドワーズ監督が「嫉妬した」と言っていた意味もよく分かるような、みたことのない表現がいくつかあり、そうきたか!と。 ただ、一方で人間ドラマがあまり面白くなかったんですよね何故か。ハードな履歴書みたいな説明に終始していて、ソフトな実感、ソフトな面での感情表現の肉付けが非常に粗くて、大味に見えた。 しかし同時にですね、「シナリオは

          ゴジラ-1.0で山崎貴が言いたかったこと(実在のモデルがいる件)

          ザ・クリエイター/創造者 反転的SF大作

          さて公開からレビューでは高得点を連発しているザクリエイター。 ゴジラ2014や、スターウォーズ唯一の成功作と言われるローグワンの新星ギャレス・エドワーズのオリジナルSFである。 相変わらずネタバレなしでスマートに紹介は苦手なので、ネタバレありで独自解説をしていきます。見てない人はすんません。 ギャレスといえばその豊富なオタク知識から、数々の過去のSFは勿論のこと、松本人志が最も愛した映画でもある「ペーパームーン」や、若山富三郎の「子連れ狼」など今ではややマニアックな引用も

          ザ・クリエイター/創造者 反転的SF大作

          パトレイバー35周年その3

          というか今更だけどパトレイバーの企画の発端や基礎情報を書こう(今更) この作品の原作はヘッドギアである。ヘッドギアというのは漫画家のゆうきまさみさんと天才出渕裕(メガデザイン)が江古田駅からすぐの千川通り沿いにあったまんが画廊というところでの話しあいが発端になり、そこにシナリオライターの伊藤和典さんと、キャラデザインの高田明美さん、そして最後に押井守が参加した総勢5名のクリエイターグループである。 この5人のヘッドギアが原作としてそもそもメディアミックス展開する企画として

          パトレイバー35周年 その2

          さて、松井刑事と片岡刑事は帆場瑛一(犯人)が過去に住んだ住所録から彼の住まいを探して東京を彷徨く。何十回も引っ越しを繰り返しているらしい。 このシーンは黒澤明の「天国と地獄」に似ていると良く言われる。それは単純にビジュアルが似通っているからという理由だけではない。 黒澤明の天国と地獄も、敗戦国日本の中で、「ナショナルシューズ」という会社で靴作りの技術ひとつで次期社長までのし上がっていった権藤常務と、それと対比されるように、犯人の竹内の世界を「地獄」として描いている。 竹

          パトレイバー35周年

          ヘッドギア原作のパトレイバーが今年でひっそりと35周年(ひっそりは失礼か)。 映画版の劇パトといえば押井守監督作品だけど、よく知らない人からすれば「ああ攻殻機動隊の押井守の昔の作品ね」くらいのイメージかも知れない。 そして80年代のアニメ映画といえばAKIRAとかカリ城とかトトロとかと言う人が多いと思うのだが、それらよりパトレイバーを筆者は強く推したい。 というか押井守の作品のほとんどはクオリティがやばい。と言うと「ああ押井守信者の人ね」と思われるかも知れないが、筆者は

          アリスとテレスのまぼろし工場 考察(ネタバレあり)

          はじめにお断りしておきますが、これから述べることを、信じるか信じないかは、信じるか信じないか次第です。(進次郎構文) 最初は反発を受けるんだろうとことはある程度覚悟で書いていきますね。自惚れじゃないんですが、同じようなことが過去にもあったことなので。 この映画は実在の出来事をモデルにしている さて、ちょっと前振りチックのところから入ります。2016年の新海誠監督の「君の名は。」 10代の男女による遠距離SFムービー、タイムトラベル恋愛もので一世風靡した映画ですが、この

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          「こんにちは、母さん」映画雑感

          見たばかりなので、取り止めのない文章になるやも(ネタバレはあるので念のため) 一応公式も吉永小百合主演で「母」三部作と銘打って、2008「母べえ 」2015「母と暮せば」そして2023「こんにちは、母さん」とついに大ラスが完結したわけなのだが、あんまり見終わったという感じがしないのは、この母シリーズを貫く共通テーマが薄いから。 1930年代の日中戦争から開戦までを濃く描いた「母べえ」、原爆前後を描いた「母と暮せば」と比べて、今度は急に舞台が2023年の現代となっている。原

          「こんにちは、母さん」映画雑感

          「君たちはどう生きるか」アンチメタファーの最終地点

          公開からおよそ1ヶ月が経ち、この映画がどのように受け取るべきなのかの初見分はほぼ出揃ってきたのではないかと思う。 私自身はどのように解釈したのかはYouTubeにて2本、大枠と詳細に分割して発表しているのでそちらを参考にしていただきたいが、簡単に言えばこの映画は「宮崎駿監督の創作人生を振り返ったもの」と表現してしまえば大雑把には捉える事が出来る。 そうした見方は今ではほぼ一般的な見解の地位を得つつあるようにあると思うし私自身も同意している。 しかし一方で、そうした見方をベ

          「君たちはどう生きるか」アンチメタファーの最終地点