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"店は顧客の代弁者にもならねば"という話

僕が営むアウトドアの店の大切なコンセプトのひとつに"思い出と共に美しい自然を残そう"というものがあります。
環境というものを学術的な観点からの保護だけではなく、シンプルに"親父と初めて登った山"であったり"パートナーといつも歩いていた場所"だったら、「誰でも美しいままであってほしいと願うものだろう」というものです。

そして僕自身も様々なお客様やスタッフなどと、いろいろな場所を歩いたり仕事として訪れたりする中で、たくさんの思い出的なものができています。
だからそんな場所が荒れていくことや、踏み躙られることは気持ちいいものではありません。

ですが、僕の気持ちだけで会社のメッセージを作ってしまうのは個人的な気持ちとしては好きでなく、お客様や取引先などの意見を汲んで何かのアクションに繋げることがほとんどです。

そんなことを繰り返すうちに、いつしか僕らのフィルターを通して顧客へブランドのメッセージなどを伝えることを信頼いただき、取引先の方から様々な支援をいただいたり、悩みを話してくださったお客様が頼ってくださったりするので、嬉しいものです。

ゴミ拾いの話

山間部に出かけてゴミ拾い

1年前から、僕らの店では"遊びながらゴミ拾いを"というメッセージをちょくちょく打ち出しており、それは懇意にしてくださる仲間的なお客様からの相談がスタートでした。

自分の暮らす町でアウトドアを楽しむ方のゴミが目立ち、肩身が狭い思いをしてしまうとの相談がきっかけで、お客様を店に集めて現場の問題などを考えてクリーンな環境を作っていきながら、地域の方に歓迎されるようにしようという流れで始まったことです。

まだまだ継続が足りず、真摯に受け止めてくださったお客様は「なぜ俺は一生懸命に向き合っているのに、誰もほとんどが一瞬のことで終わらせるんだ」と意見をいただきますが、僕は「所詮そんなものです、だから僕らだけでも続けましょう」と、いまだに時折ゴミの話などを真摯に向き合ってくださる方と話しますが、少しずつ店でも「ゴミを拾うために」と専用のアイテムを購入くださる方も増えました。

僕らも実際に当該の町に出向いて、ゴミを拾い、宿に泊まって意見を伺いと、ゴミを拾うだけでかなりのコストがかかってしまうのですが、それでもこれからも持続していかねばと思うアクションのひとつ。

登山道や希少植物の保護

希少植物

そしてその他にお客様からの意見で多いのは、登山道が荒れてしまうアクティビティや希少植物の保護に関する意見。
自然の中でどんな楽しみ方をしようと、マナーに反していなければ基本的には自由ですが、ルールやマナーが曖昧なだけに僕らも「⚪︎⚪︎をしてはいけません」と断言することが難しい場合もあります。

ですが過去にずっと一緒に歩いてきたお客様が"大切に思う花や植物が踏み躙られたり"というものを見て切なくなる気持ちも十分に理解できます。

だから僕らは専門家の方を訪ね、特定の活動が自然に対してインパクトがあるのか否かを確認して、お客様に保全や保護の観点で問題になっている点などを伝えていきます。

当然、賛同いただく方もいれば反対される場合もあり、時に否定的な意見をいただくこともありますが、お客様からいただいた貴重な意見は「⚪︎⚪︎さんがこう言っています」なんて言っていては僕らはただ伝えて終わり。なんてことをしていれば、せっかく相談してくださったお客様は報われません。
だからこそ、お客様の仰る意見がもっともだと思えば、それは僕らの意見として店から発信せねば大切なお客様には伝わりません。

"観察"という楽しみ

仕事で鹿の撮影中

今年からさらに環境の話などをお客様に情報としてお伝えしつつ、改めて"観察"という種のアウトドアの楽しみをお客様へ伝えていこうと思っていますが、これもやはり地域の方からのご意見や相談をもとに考えたもの。

大切な思い出が詰まった場所が荒れていくこと、そしてそれを守ろうと懸命になっている方々が、辛い思いをしているのを何とかしたい。と懸命に奮闘される方のご要望やご意見をいただき、僕らはその山域に頻繁に出向いて、動植物や自然の観察を通して得られる楽しみを知っていただこうと考え、取引先の方々にもそれを伝えに出張の予定を組んで出かけていきます。

どうせやるなら、熱い想いを持ったお客様の仲間が増えるようにと、僕も出かけてはお客様を想い活動するわけですが、そこにかかるコストが半端ない…汗
なので、近日中にサポートいただけるような制度を考えて、お客様にお願いしようと思っているほどです…

代弁することでの喜びと辛さ

こうしてこれまでに様々なことを、お客様や地域の方々に代わってお客様へ広めようとしてきましたが、お蔭様で植物に詳しくなかった僕も、お客様いろいろなことを教わり、今では虫や動物などの専門家の方々から、知りたい情報を聞けるような関係性を持たせていただくことができました。

僕らが代弁するにあたり、"知らないのに言っている"では筋が通らないため、僕ら自身がお客様から「どこにどんな花が咲いているのか」などを教えていただいて時に実際に見て、調べるうちに「意外と面白いことがあるものだ」と感心するように。

やはりお客様自身が「好きだ」と思っていることは、話している中でお客様の愛情が伝わるので、僕らも必然的に興味を持つようになります。
反面「興味がない」と言ってしまえばそれで終わってしまうため、最初は何を魅力に感じているか分かりづらいことでも、質問しまくって面白さを僕自身が発見するまで質問攻めです…笑

反面、僕ら自身が代弁という役割ではなく、僕らの意見として伝えていくため、反感を買うことも僕らが受けなければなりません。
「そんなこと言ったって、楽しいんだから仕方ないだろ」という意見も、僕らが「いえいえ、僕らの意見ではありません」なんて言ってしまえば、店として最低です。

そんなことを繰り返しているのを感じ取ってくださるお客様には、よく店で「また大変そうだなぁ」とお声がけいただいて、たまに食事に誘っていただいて毒を吐かせていただいています笑

訴えを聞く前の一手を

日々、様々な方と話をしながら"意見や苦言"などの相談を受けた時に、いつも感じてしまうのが「僕らのアクションが一歩遅かった」という反省です。

大抵の場合、お客様がよく思ってなさそうだなぁというのは、雰囲気的に感じ取ることができ、先手を打って店としての情報伝達を行った場合、お客様は「痒かったところに手が届く店だ」と高い評価をしてくださいます。

相談してすぐに動いた場合は「言えばしっかりと動いてくれる店」となり、言っても動かない場合は「相談しても無駄な店」となります。

だから僕らは常に店にお越しくださる方々の何気ない意見や話の中で、店が取るべきアクションを考えて、先に情報として出しておこうと考えるのであります。

そうした情報は、時に誰かの楽しみを「ダメだ」と批判しているように見え、僕らは反感を買うことがありますが、それもまた店の役割であり、反感を買う反面、それを理解して支えようという方も居てくださるのが嬉しい限りです。

先日、同業種の人気店のオーナーに「大変でしょー」とこちらが言わずとも突っ込まれた時に「流石だなぁ」と感服したのでありました。

気づけば2月。
春もお客様からのご意見や相談をいただく前に、先手を打てる店であれたらなと願うばかりです。

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