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2015オフ OAK投手補強振り返り〜即戦力編〜

概観

 前回振り返った2014年は即戦力としての投手補強はなかったですが2015年はソニーグレイというエースを擁していたものの、2番手以降の若手SPが伸び悩みERAはリーグ最下位と低迷しました。
 以下の記事でオフの最初にデービッド・フォーストGMが「可能な限り多くの先発投手が必要だということで我々の場合2015年ほど良い例はないだろう」と語っている通り即戦力SPの補充は急務でした。
 またブルペンも怪我が続出したことやベテランがそもそも少なかったことからブルペンにも補強の必要性が生じました。以下どのような補強が実際になされたのか見ていきます。


1.リッチ・ヒル

契約額:1年6M  在籍年:1年 成績 76IP 9勝3敗 ERA 2.25  評価:A

  2015年まではしばらくMLBでは投げておらず独立リーグを経て古巣ボストンで後半戦にメジャー復帰を果たすと、圧倒的な成績を残し、ベテラン先発を探していたOAKと1年6Mで契約しました。当初の評価は故障持ちな点からも高すぎるという声が多く、オープン戦でも炎上を続け開幕戦も振るわず怪しい雰囲気を醸し出してはいましたが、それ以降は安定して成績を残し続けTDLでレディックとともにLADへ移籍しました。対価の1人であったモンタスがエース格に成長した事を考えると貢献度の高い補強という事ができるでしょう。
 現在も43歳ながらローテーションを守るなど誰もが想像しなかったキャリアを歩み続けています。


2.ヘンダーソン・アルバレス

契約額:1年4M +出来高  在籍年:1年 成績 なし   評価:F

制球の良いゴロ系投手の代表格で、一時期はMIAでホセ・フェルナンデスと2枚看板を築くほどの実力(2014年のERA2.65)を見せていましたが、故障により前年の登板はありませんでした。当時25歳とまだ若く筆者も2014の成績から大きな期待をしていたのですが結局1年契約で加入したOAKでも故障で登板できず、最終的には現在まで2014以降のMLB登板はありません。空振りこそ取れる投手ではありませんでしたが、シンカーやスライダー、フェリックス・フェルナンデスのそれに最も近いとまで言われたチェンジアップを交えて打者をゴロに打ち取る姿をコロシアムでも見たかったです。
 マイナーリーグを経て現在はメキシカンリーグに所属しておりCPBL移籍の噂が出ているようです。


3.ライアン・マドソン

契約額:3年22M  在籍年:1年半 成績 110IP ERA3.03   評価:A

 マドソンもTJ手術の影響でヒルに同じくしばらくMLBから離れていましたがこちらも独立リーグを経てKCとマイナー契約を果たし68試合でERA2.17と抜群の活躍をしていました。当時36歳と既に高齢で故障リスクも高かったことから、3年という割と長めの契約を提示したOAKが獲得競争を制する要因になったのではないかと考えられます。

 フォーストはマドソンが故障さえなければ過去安定した成績を残し続けたことを高く評価したようです。マドソンは期待通り2016年は63試合でERA3.62、2017年の後半までに2.08とブルペンで期待通りの活躍を果たし2017年のTDLでドゥーリトルと共にWSHにトレードされました。トレードの対価としてOAKはヘスス・ルザルド、ブレイク・トレイネン、シェルドン・ノイジーを獲得し大幅なファームの強化に成功しました。

4.ジョン・アックスフォード

契約額:2年10M  在籍年:1年半 成績 86IP  ERA4.57   評価:C

  かつてはセーブ王に輝くなど実績十分の右腕でしたが、直近3年はERA4点台と十分な成績とは言えない結果でした。しかし2014年の成績は打者有利でお馴染みのCOLで記録したもので球速も自己最速の96.8マイルを記録していたため昨年以上の結果を残せる可能性が高い選手であり、OAKが獲得するのにも納得がいきます。 結局2016年はERA4点台、2017年は7点台でシーズン途中にリリースされる結果となり、望んだバウンスバックは得られませんでしたが16年に68登板しゲームの成立に大きく寄与している点を考えれば失敗した補強とは言えないでしょう。
 またメルビンはアックスフォードのリリース時にクラブハウスで彼が大きな役割を果たしたことに言及しています。

2014年には18部門中アカデミー賞を全て的中させるなど生粋な映画オタクであることなどからもわかるようにユニークなキャラクター性で低迷するチームを盛り上げた貢献も忘れてはなりません。

5.マーク・ゼプチンスキー

在籍年:半年 成績 36IP  ERA3.00  評価:B

とにかくそのスペル(Rzepczynski)が注目を集めた選手。ポメランツとのトレードでヨンダー・アロンソと共に加入しました。

実態としてはERA5.66と結果を残せずにノンテンダー候補だったぜプチンスキーをテンダー前にトレードで獲得したというところですが、ゼプチンスキーは56試合でERA3.00 を記録してシーズン途中にマックス・シュロックとのトレードでWSHに移籍しました。56試合で36IPとワンポイントでの起用を中心にしたこと、とチェンジアップの配分を増やしたことが成績復調の要因だと考えられます。

ぜプチンスキーの配球の変遷



6.リアム・ヘンドリクス

在籍年:5年 成績 263IP  ERA3.08  評価:S

 ジェシー・チャベスとのトレードで加入。2015年後半にブルペンに完全転向したこと、練習にピラティスを導入した結果(本人談)によって球速が3マイルほど上昇したことに目をつけての獲得だと推測されます。2016年、2017年は53、70登板ながらもERA3.76、4.22と平凡な成績で2018にはDFAを経験しますがそこから「もう失うものはない」と遠投を取り入れるなどルーティンに変更を加えると更なる球速上昇に成功し2019年、2020年は絶対的なクローザーとして君臨しました。
2023年には癌を患い寛解に至るも今度はトミージョン手術を受けることになるなど最近は苦難続きですが、幾つもの困難を乗り越えてきた選手なだけに今回も乗り越えるだろうと1ファンとして信じています。
慈善活動に熱心で愛妻家という好漢でもあります。ちなみに妻は大の大谷ファンだそうです。

ヘンドリクスの球速の変遷


総括

 先発陣の補強に関しては単なるイニングイーターの獲得ではなく、年齢、故障面でのリスクを取りながらも伸び代の高い2人を補強しました。ヘンダーソンに関しては残念な結果となってしまいましたが、ヒルの活躍とその対価を見ると全体で見れば十分な補強だったと言えるでしょう。
救援陣に関しては出力を重視した補強を行ったように見えます。

事実救援陣の平均球速はオフの時点で3マイルほどアップしています。これらの補強は若手の肘を守り、マドソンのようにマイナー組織の強化につながるなどこちらの補強も成功と言えるでしょう。

 また上記の記事でエノ・サリス氏がチェンジアップでゴロを取り、カーブで空振りを取れる選手をOAKが優先的に補強しているのではないかと指摘しています。とても興味深い指摘だったので次回出すであろう2016年プロスペクトの分析の際にまとめて検証したいと思います。

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