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ソニカという軽自動車

爽快ツアラーという新ジャンル

この度、友人のダイハツ・ソニカに乗せていただく機会があったので、せっかくならとレビュー記事でも書いてみようかなと。
結論として、下駄車&低予算で一人旅をするならばこの車がかなり最適解に近いと感じた。(但し、最終型でも2009年なので、経年車であることには留意が必要)
軽自動車にツアラーという概念を作ろうとした意欲作であり、そのためには何でもやったという、ダイハツの意地のようなものを感じさせる車に仕上がっていると思う。

全車ターボ付という割り切り

ソニカは「爽快ツアラー」の名の通り、すべてがターボモデル。
KF-DET型エンジンを搭載し
最大出力64ps/6,000rpm
最大トルク10.5kg・m/3,000rpm
を発揮するエンジンは、実用域のトルクがきちんと確保されていて、乗りやすい。
このエンジンに組み合わされるトランスミッションはCVT(RSリミテッドのみ疑似7速CVT)
このCVTがまた優秀で、ジャダー感やラバーバンドフィールも少なく、ダイレクト感もあり運転がしやすい。
そしてトルク領域を維持しやすいCVTのおかげで、820kgと決して軽くない車体でもスイスイと引き上げていってくれる。
この軽快感はNAではどう考えても出せないだろうなって思うし、CVTであるからターボラグも気にならない。
低い重心とそこそこ重たい車重は、車の安定感を一気に引き上げる。
足の味わい深さまで知ることはできなかったが、ダイハツ車にしては良く煮詰められている。
それでいて、遠乗りで20km/Lを超える低燃費を悠々とたたき出すのだから、まさにロングツアラーの面目躍如といったところか。

セルシオのシートを目指した

トヨタ・セルシオという高級車がある。今では田舎ヤンキーのVIP仕様ベースというイメージが強いが、当時はクラウンよりもさらに車格が上の高級車であった。
このシートを目指して作られたというソニカのシートは、確かに車幅の問題からそこまでとはいかなかったのだろうが、それでも十分広く、ホールド感も十分。
何よりインパネ回りが広く、乗っている感じは1500ccクラスのコンパクトカーに乗っている感覚。
言うならば初代フィットに乗っているような、そのくらいの車格に感じてしまう。
内装部品はどうしても軽自動車であるからプラスチックが多用はされているものの、安っぽく見えない工夫はきちんとされている。

驚きの静粛性

この車に乗って一番驚いたのは静粛性。今回は冬の試乗ということでタイヤはブリヂストンのVRX2を履いていたが、本来聞こえてくるであろうパターンノイズの類がほとんど聞こえてこない。
そして、エンジンの巡航回転数がとにかく低く(80km/hで2500rpm)、試乗している最中軽くBGMがかかっている車内でも普通に会話できるくらい。
ここまで静かであるなら、夏になったらブリヂストンのREGNO GR-LegguraやヨコハマのADVAN db V552などを履いて徹底的に静粛性に努めてほしいくらい。
エンジンのノイズも全開走行時や高負荷時はやむを得ないが、登坂車線を一定速で登っているときや平坦路を巡行しているときはほぼ存在感はないといっても過言ではないくらい静か。
それもそのはず、ボンネット裏には高級車でしか見ないような吸音材がついている。

軽自動車ではまず見かけない、ボンネット裏の吸音材

悲運の名車

徹底的に静粛性と、ロングツーリングでも疲れない足回り、そして室内空間を作ることに重きを置いている、設計思想がはっきりとした珍しい車。
今の時代、あれもこれもできますよで、結局全部が中途半端だなぁと思わせるような車が多い中、このコンセプトはわかりやすくて個人的にはいいと思う。
発売当初は軽自動車にしては高価格帯だったことや、そもそも軽自動車でロングツーリングというコンセプトが理解されなかったことが要因だと思われるが、セールスはすこぶる悪くわずか3年間という短い期間でしか発売されていない。
総生産台数も29000台程度。この数字は同社の看板商品「タント」であればわずか2か月で達成してしまう数字だ。
しかも、このコンセプトは中古市場でもなかなか理解されないためか、低グレードのソニカであれば底値で低走行車がゴロゴロ転がっている。
しかし、刺さる人には刺さる車で、軽自動車でロングツーリングに出かけたい、あるいはコンパクトカーを買うお金はないけど、コンパクトカー的な快適性が欲しいって人には本当に大手を振ってお勧めできるいい車だと思う。

気になるのは積載性

基本的に軽自動車で4人乗るということは考えていないのだろうが、それにしたってラゲッジスペースが狭いのが気になってしまう。
バンベースのアルトのほうが広くなるのはある程度仕方ないとはいえ、ほぼ同じ車格、同じようなサイズ感のソニカでどうしてそんなに狭くなってしまうのか…?と正直に思ってしまった。
例えばこの車で想定されるであろう、老夫婦で1泊2日の温泉旅行、もしくは若いカップルのお泊り♡デートではその高い積載位置も相まって妙に窮屈な印象を受ける。
確かに2人乗りと割り切って、4人乗せるのは街乗りの緊急用と認識すれば、後部座席にも荷物は積めるし、最悪席を倒せばいいのだが、もう少し座面を低くできたらこの圧迫感はないだろうなぁとちょっと残念。

中古車の価格は底値

今からソニカを買う、というのがどんな人にマッチするのか
あるいは、僕たちが「こんなことをしたんだけど、何かいい車ある?」と聞かれたときに、どんな人ならこの車をおススメするか。
1.遠乗りが多い人。あるいは長距離の通勤をしている人。
2.一人旅であてのない旅や長距離ドライブをして、旅行先でいろいろな見聞を広めようと思っている人。
3.年間の維持費を抑えたい人
4.ある程度の経年劣化による故障には目をつむれる人。(聞いたところそんなに目立ったトラブルはなさそうだが)
5.一人ないし二人で、あまり荷物も載せないで人間のみが移動する機会が多い人。
6.軽自動車だけどコンパクトカークラスの快適性を求める人。
7.雨風しのげるスクーターみたくして乗りたい人。
このような用途を考えてる人にはおススメしたくなる。
但し、冒頭で述べた通りどんなに新しくても2009年式。今から15年前の車であることは留意したうえで、オイル管理や消耗品の交換などをこまめにできる人がよりふさわしいかなと思う。
下のグレードであれば30万円以下でゴロゴロ転がっているので、車検だけ取って2年乗って捨てる、また新しいソニカを買って2年乗って捨てるなんて乗り方もアリかと。
また、走行距離5万キロ以下の低走行車もまだ少し残っており、こういった個体を買ってきて大事に乗るのも一つの手かと。

総評すると

本当に静粛性が素晴らしく、燃費もCVTの恩恵もあって15年前の軽自動車とは思えないくらい低燃費でランニングコストもかからない。
走りの質感も高く、長距離走ってもとにかく疲れない。
とにかく走ることにおいて疲れないロングツアラーが軽自動車でも実現できたという意味においては非常にエポックメイキングな車であると思う。
車を買ったならいろんなところを見て回りたい、見聞を広めたいという人にはとにかくおススメできる車。
車の楽しさというよりは、移動をとにかく楽にしてその先での出会いや体験に多くの身体的リソースを割ける、そして経済的にも体力的にも行ける場所が増えることで、体験の機会を増やすという意味においては今までコンパクトカー以上の車格でなければ実現できなかったことを軽自動車で実現しているという点で非常に高コスパであると言える。
大学生が最初に買う車の1台目としても良し
低予算の通勤者として買うも良し
リタイヤ後、貧乏旅行の相棒にするもよし
そんな車に仕上がっていた。


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