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「シン・仮面ライダー」が大嫌い、大好き



#ネタバレ


公開1周年ということで、当時の困惑と興奮が同じくらい混じった書き散らしを投稿します
結局、確か計4回は観に行った





やりやがった、、、、、2時間ひたすら庵野秀明しか映ってない、こんなの面白いかどうかの物差しじゃ測れないって!!いや好きだけど!!!賛否分けようがないと言うか、否と書いて賛と読むと言うか…

パンフには「個人的にやりたいことよりも作品としての面白さを」とか書いてるけどいやいやどの口が言うんですかと、これ特撮とか観ない一般層が観たら普通にしっかり体調崩さない?大丈夫??

ストーリーを知った上で改めて観ればもっと楽しめる気もする、登場人物の感情の動きを理解するためには設定の理解もある程度は必要だと思うので
その意味でまず初見だと「プラーナ」が何なのかよく分かんないまま話はどんどん進むから置いていかれる、もしかするとそれが狙いなのかもしれんけど


まず冒頭はとにかく素晴らしかった!今回は「倒す」じゃなくて「殺す」ですよとビジュアルで容赦なく示す一連のアクション、タイトルがドカンと出るまで畳みかける展開の連続はさすがに心わしづかみの大迫力だった…

ただその上でアクションのいびつさ・意味不明さには面食らった、実写キューティーハニーから成長してないんじゃないのかと思うほどの強烈な違和感

例えばハチオーグとの戦いだとちょうどモルカーの人間パートみたいなコマ撮りでアクションを表現する、というのをやってて、それがまたどうにもカクカクの仕上がりで苦笑いしてしまった

第2号との空中戦もやっぱり目に余るCGのチープさ、これはこういうものとして我慢するしかないのかな…それでなくてもアクションは全体的にね、カメラのブレでスピード感を足すようなひと昔前の演出が多かったりするから少し残念

CGがダメとは思ってないけど、とはいえコウモリオーグが羽を広げた瞬間にスッと気持ちが冷めたのは事実、これはしんどい

アジトの広さ表現もね〜かえってセットの小ささを露呈することになってたんじゃないだろうか、2000年代くらいの邦画でよくあった感じのチープさをここでも感じた


音楽もなんかガチャガチャしててあんまり好みじゃなかった、主題歌の引用とかするにしてもこういう感じなのか〜と
こういうまるで整理されてない感じが昭和特撮の味だ!ということならまた話は別だけどそれにしたって、ねぇ



ただアングルとか編集のキレと大胆さはやっぱり庵野印でバチっと格好いいから、それに見合う予算さえあればもっとリッチな画になったんじゃないだろうか…と思わずにはいられない

主語がデカくなってしまうけど、やっぱり日本のヒーロー特撮は世界に敵わないってことを示すことになってしまったんじゃないかなこれ



一方でかなり心配してた女性をいやらしく撮る悪癖、これは今回かなり頑張って抑えてたんじゃないだろうか!ゼロではないけどまぁこの程度なら、くらいには

その上でやっぱり溢れ出る庵野感はヒロイン造形にも顕著、ルリ子と本郷の距離が縮まる流れひとつ取ってもね、アスカであり綾波でありミサトさんでもあり…

そもそものセリフのクセに出てるよね、開口一番「緑川ルリ子『よ』」っていうコテコテの女性言葉、こういうリアリティラインだと言ってしまえばそれまでだけどその口で「コミュ障」とかも言うからさ〜何なんだこのバランス
それでも最後には魅力的なキャラクターとして記憶に残るから何も言えないんだけど、何なんだ

そうそうセリフといえば、メフィラスほど強烈じゃないにせよ印象的なの今回もいっぱいあったな!それはシンプルに楽しかった

クモオーグの「不利!!!」は特に好き、ルリ子の「着たきりスズメ」も忘れがたい、一文字もなんかいろいろ言ってた気がするし

あと良かったのは夜中の野営、食事を通して本郷の献身も悲しみもばっちり描いてくれたしルリ子が残さずかき込むところも含めて、なんかすごく豊かなシーンだったな…
敵がすぐそこまで来てるのに道具を全てきっちり片付けるあたりも妙なバランスで結局好き


敵対する組織としてのショッカーについてはね、怪人それぞれ違う魅力があったし主張もいろいろ工夫してるのは分かるけど

ただ結局これ人類補完計画じゃない?っていうのがどうしてもね、シンエヴァで作家としてとことん向き合って決着つけたじゃんというか、もう他者とか幸せとかそういうものには一定の納得が済んだ作家だと思ってたから

今回ラスボスが掲げる問題意識がどうにもね…いやこれは切り離して考えるべきなのかな…最近の作品と違って登場人物の名前が原作そのままだったりもするから、庵野味の濃さはうまいこと調整するつもりなのかもと想像してたので余計に驚いた

どうも話を難しくしすぎというか、難しくてもいいけど伝え方はもっといろいろあるじゃん別にセリフで全部言わずともさ!!


それでもね、なるほど第0号のキャラ設定はV3とかイナズマンはじめ石ノ森作品からの引用てんこ盛りということなんだろう、そしてそのキャラの悲しみを癒すことで石ノ森章太郎および昭和特撮のあれこれに恩返しという意図なんだろう、くらいには思えてるけど、なんだろうなこの感触は


初代の仮面ライダーもこの機会に何話かチェックしてみてて、初期のダークさと悲哀に対する2号が出て以降の明るさとか、そういう方向転換を1本の映画の中で再現しようとしてるのかなとも感じた

それゆえなのか作中で経過する時間の短さ、これが結論の重さと食い合わせ悪い感じがしてしまうのもモヤモヤの要因かも…たった数日であそこまで受け入れての決意に至る、ということに理解が追いつかなかった

改造人間としての悲しみって初代だと時々テンション下がるくらいにしか描かれてないように見えたんだけど、それを今回は「戦いたくない・殺したくない」って問題まで絡めて突き詰めることをしてるから、んーやっぱりもう少し落ち着いた語り口で見せてほしかった気持ちはあるな〜


あとは同じくリメイクということで仮面ライダー THE FIRST も久しぶりに観て、これ公開当時はデザインの洗練され具合にひたすら衝撃を受けてたのだけど

改めて観るとあっちは全体的にシュッとした感じにする以外のアレンジはあんまりしてない、なんならベルトとか普通に野暮ったくも思えて

その意味では今回よ、ほぼ初代と同じシルエットなのによく見ると細部まで行き届いた作り込み、それでいて昭和っぽいダボつき感、だけれども機能性とか理屈に基づいた執念深いリアル路線なんてもうオタク根性そのものって感じで見応えすさまじかった

なのでマスクデザインの美しさとギラつきをとことん堪能できたのは嬉しかったな〜実際それを強調する見せ方だったし、あとマスク被ってる時は声がこもるとかも好き


ただTHE FIRSTはいろいろチープなとこは多いけど、改めて観るとストーリーについてはさすがの井上敏樹脚本、ギミックもありつつ筋の通り方はやっぱり見事で、今回の散らかり感と比較すると仕上がりの綺麗さは全然違う…あくまでそういう論点であればという話だけど

例えば今回もiPhone撮影による画質のムラはこれまでと同様で、そこを気にせずアングルの面白さ優先する感じはやっぱりどこまで行っても自主制作の人なんだなってとこでもあった

あとはここ半年くらい、公式アプリ入れててショッカーからお知らせが届く生活だったから、劇中だとショッカーが世間からどういう受容のされ方をしてるのかが楽しみだったのに!そこは全然分かんなかった、秘密結社だから知られてないとかそういうこと?


んーーーあれこれ考えるけど、最終的には「仮面ライダーが格好よく戦ってたな〜」というのがまぁ一番強く残る気はするし、本郷猛の悲哀も含めて芯のところはブレずに通してくれたような気もする

池松壮亮がインタビューのたびにゴニョゴニョなるのも少し分かるような、これ特定の層に向けた映画じゃない分どの層にも届きづらいようなエグみがあるというか…

何度か観ればおそらく設定も整理できて、もっといろんな部分に着目できるようになるとは思うんだけど、でもほら初見の印象って大事じゃんそれは!!
んーでもどうかな、分かりにくい映画が悪い映画ってことではないし…やっぱりまずは期待とのギャップってことだろうか


ひるがえってシン・ウルトラマンもシン・ゴジラもポップでライトな大衆向け特撮映画だったと思えてしまうほどに、それほどに味の濃い強烈な作品だったというのが初見の印象

もう少し引き算なバランスを予想してたけど果たしてそれで面白かったかと言えば分かんないな全然、これはこれでひとつの正解で到達点なのかもしれない


何にせよ庵野秀明を追いかけるとはこういうことなんだろう
お見せしよう!!!と劇場でぶん殴られる体験は今しかできないという意味では、血を吐きながら追いかけ続ける以外に無いなと決意を新たにしました、次は小さめのスクリーンでもう一回観ようこれ

#映画 #シン仮面ライダー #庵野秀明 #感想

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