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「ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!」に優しさを見た


#ネタバレ

大満足、、、五感でまるごと楽しいアニメ映画というのは予想してたけどそれ以上、やや淡白で単純明快なストーリーではあったけど!それを補って余りある魅力の数々がとにかく素晴らしい、スパイダーバースを経てもなお進化を続けるCGアニメ映画界のまたひとつ到達点だと思いました

ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ、個人的にはいつの間にか記憶に定着していて、特に追いかけてたとかではないけど不確実な思い入れがなぜかずっとあるシリーズという感じで
たぶん最初はレンタルビデオで流れた予告編だったかな?とにかく子どもの頃からこのビジュアルとノリが好き、毎回注目してしまうし直近の実写2作も楽しく観た方ではあるのだけど


今回やっぱりアニメーション表現の素晴らしさがね、、、シリーズへの思い入れとか関係なくこれは誰でも楽しいでしょ!!どう見ても2Dの落書きなのにどう見ても奥行き豊かな3D、コミックの世界にそのまま飛び込んだような感覚はスパイダーバースと同等かそれ以上の驚きだった、絵が動くということだけでこんなにも驚けるなんて
いかにもアメリカンなビキビキの色彩、ゴチャついてて不潔な街と下水道、おなじみのタートルズ世界観でありながらフレッシュさもあって、最初から最後までとにかくアニメーションが楽しいというのがまずある

パワフルな絵画がそのまま動いてるような味わいで情報量かなり多めなのもあって、何回も見返したくなるのもね〜悔しいけど魅力的なので仕方ない、一時停止して眺めたいカットありすぎ
バトルシーンがさすがにゴチャゴチャしすぎて見づらい感じはあったかな、誰が何してるか分かんなくなる…ただこれも場面によってはスローとか多用しながらばっちり見せてくれる時もあったので結局は大満足という
あとスプリンターのジャッキー・チェン風アクションも予想外というか、ここまで露骨に入れ込んでくると思ってなかったのでニヤニヤだったな〜


監督の過去作から「ミッチェル家とマシンの反乱」を観て、語りのテンポが良いことに加えて、アイデアのねじ込み方がとにかく軽やかでネット世代的というのがとても印象的だったのだけど
今回もそこら辺のね、肩に力の入ってないノリの良さがとても楽しかった!実写映像がいきなり挟み込まれたり、ポップカルチャー小ネタの多いこと多いこと
でもそういう小ネタは単に観客への目配せというだけでなく、リアリティーを下げすぎないどころか観客との距離をぐっと縮めてもくれるので、タートルズの苦悩にいっそう重みが増すということなんだろうな…


このシリーズを構成する要素のうち「ティーン」の部分って、少なくとも俺がこれまで観た中では例えばポップカルチャー好きだったりケンカ多めだったりという程度のイメージだったんだけど
今回はそこに追加でティーンエイジャーとしての悩み、普通に青春したいんです問題がドスンと入ってくる物語になってて!これを中心に置いてるがゆえに青春映画としての味わいもばっちり楽しかったんだよな〜
恋とか喧嘩とかの定番展開をきっちり描きつつ、例えばミュータント達と出会って仲良くなるくだりはいかにも家出少年が悪い大人に絡まれて事態が悪くなるやつ、という見せ方をしてるのでその後の展開がさらに意外かつ感動も増すというね…本当よくできてる
タートルズたち4人の絡みもこれまで以上にダラダラしてて最高、そうなんよこれが見たくて来てるのよという感じ

期待してたストーリーだったりメッセージの部分もすごく満足、特に終盤の展開は勢い任せにならない丁寧なクライマックスだったな〜
例えば市民との関係、これ「助けてくれたから認める」とかの損得勘定ではなくて、「見た目が違うだけで別に敵ではない」ということが分かった段階で助けに入る人々、この描き方もすごく誠実だと思ってて!
損得ではない、かといって過剰な思い入れがあるわけでもない、シンプルに助け合う命と命っていうドライで優しい社会だと感じた場面だった…こういう綺麗事じゃない優しさって本当に大事、ちょうどThe Birthdayの「誰かが」で歌われるような優しさで大好きだったな本当
自分と違う他者を認めること、命どうしなんだから見た目の特徴とか関係なくない?という差別解放の究極とも言えるというか

これガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3で惜しかったというか批判されがちな部分、「醜い見た目だけど心で繋がり合う改造動物たち」の目が全員うるうるパッチリの瞳だった点を思い出したな…結局かわいい見た目じゃんっていうね
その点タートルズはデザインの攻め方が凄まじかった、生理的な嫌悪感を誘うドロドログチャグチャが突き抜けてるし目も全然うるうるじゃない、だからこそ際立つメッセージというね〜素晴らしいと思う、見た目か中身か問題をとことん突き詰めて爽やかに解決してくれてる

エイプリルのルックスがこれまでの作品とだいぶ違うことも含め、例によってコンプラどうこう騒ぐ人はいるんだろうなとは思った、特に結末の部分がね〜
時代に合わせて設定ごと変えるというのはもちろん、差別ありきじゃなくてもタートルズの魅力は描けるという確信と期待を感じさせてくれる、なかなかに思い切った改変および着地をしてみせたわけだけど

進撃の巨人もアベンジャーズもK-POPも好きな現代の若者である今作のタートルズ、とはいえやっぱりこれまでと同じように差別されながら忍者やってくという締めも不可能ではなかったと思う

でも今作がすごいのは、人間から差別されて下水で暮らしてるという基本設定そのものを問い直すことで、現実世界で起きる様々な差別そのものへのメッセージを発信する重要な作品にもなれたわけだから!!個人的には必要な改変だと思ったし、今後の展開を思うとさらにタートルズが好きになった、タートルズのアイデンティティは被差別の悲しみでは別にないという判断よね〜立派、好き


「亀だから普通に生きられない」物語、この「亀」の部分に観客それぞれが自分の悩みを投影しながら観れる作品でもあると思うので、その共感に耐えうる強度を持った優しいストーリーであることは必要だったんだろうな〜
かといって説教臭くはなく、キャラどうしの爽快な連携を土台とした大スペクタクルが展開する楽しいSFアクションでもあるので!こういうのを観たいのよ、本当にありがとう


次作以降も非常に楽しみ、何やら映画ではなくアニメシリーズになるという話も見かけたし、今回ラファエロとミケランジェロの出番だけ少なめだった気がするし…
なんにせよあれこれグッズ買い集めるくらいタートルズ世界を丸ごと楽しめてる、今作のヒットを機に新作出る頻度が上がるといいな!これ必ず字幕でも観よう

#映画 #ミュータント・タートルズ #感想

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