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《ふたりごと》2020.06.19(fri)雨

飽和状態のアレが空気をつきやぶって肌にまとわりつく、
そのつめたさになんとか呼吸を再開できる。
だけどあたしはマスクの中でまだ身を潜めてる。

通り過ぎていく軽自動車が道路にすてきなイルミネーションを灯したので、
あたしは知らない中年に笑って見せた。
ひとり笑う女は不気味だったかもしれない、
けれど誰も気づかなかった。

十九時五分、もう眠りの針に引っかかってしまった。
この水槽の外側はこの地球上で唯一あたしの部屋だけらしい。
その内側へ両腕をのばしてシャワーを浴びる。

あの通行人にはキョンシーに見えたかもしれない。
しかし今日のあたしはようやく生きていた。


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