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アンジュルム『ハデにやっちゃいな!』から読む新成人に贈るニーチェの言葉

アンジュルムの新曲『ハデにやっちゃいな!』のMVが公開された。

とてもアンジュルムらしいオシャレで個性に溢れるMVに仕上がっている。

アンジュルムといえば、グループアイドルには珍しくステージでもバラバラな衣装を着ることが多い。それは2018年の『十人十色』ツアーから始まった流れであり、そこには『タデ食う虫もLike it!』における「十人十色、好きなら問題ない!」という強い意志で自己を肯定する生き方の提唱に端を発してる。

あれから4年。とても波乱万丈の世の中であり、またアンジュルム自体も多くの「出会いと別れ」を繰り返してきた。そして急激な変化というものは人間を不安にさせるものだ。

特に「自分」ではないモノの変化に人間は本能的な「恐れ」を抱く。急激に変化するアンジュルムに対しヲタクが「大丈夫か?」となったのも、だから当然の反応ではあった。だが、そういう状況に対しても常に「自分」を持っているモノは強い。

アンジュルムは変化を恐れず、進化を続けていった。そしてその中心には常に二代目リーダー竹内朱莉という自己肯定感の塊のような女性がいた。

彼女は普段から「大丈夫、大丈夫。なんとかなるっしょ」というスタンスを取っている。内心は分からないし、メンバーの卒業の度に一番泣いてしまうくらいだから、本音は色々あると思う。だが、表面上は努めて楽天的に前向きに見せている。

リーダーが率先してポジティブな態度で行動すれば、後輩も安心してついて行ける。まさに『ハデにやっちゃいな!』という精神で自己実現をしていくグループにアンジュルムは進化した。

ニーチェの言葉に「自分は自分の主人にならなければいけない」というものがある。よく「自分自身の主人たれ!」みたいに訳される言葉だが、これは自分を認め、自分の価値観を信じ、全てを自分の判断で行動すれば自己肯定と共に幸福が訪れるという考えだ。

「相変わらずニーチェ好きね」と笑われそうだが、まあニーチェ好きなんですよ。というか自己実現とか自己肯定感を高めるための勉強をすると自然とニーチェの思想が向こうからやってくるのですよ。

そしてアンジュルムのような究極に自己肯定から入るグループ、堂島孝平さん的に言えば「YESからはじまるグループ」というのは、ニーチェのこういった思想がよく似合ってくるんだと思う。

ということで、これで3回目のアンジュルムとニーチェを結ぶ考察である。

間違ったって可愛いの最強じゃん

今作は作詞作曲が山崎あおいさん。とてもアンジュルムと相性の良いシンガーソングライターだ。名曲ばかりを生み出している。そんな勝手知ったる人が、このタイミングでこんなに強気で自己肯定全開な曲を提供してきたのは、ひとつ今年から成人の定義が変わったことが理由なんじゃないかと思う。

今までは20歳からが成人だったが、今年から世界標準に合わせて日本も18歳を成人とすることになった。昨日まで子供だと言われていた子たちが急に今日から大人になるというのは意味が分からないし実感も全く湧かないだろう。

そして現アンジュルムも伊勢鈴蘭、川名凜、為永幸音が18歳。更には橋迫鈴が16歳、平山遊季が15歳、松本わかなが14歳と半数以上が10代で構成されており、ハロプロ内でも平均年齢が若いグループとなっている。

「今日から大人だから」と急に言われてもどうしたらいいの?

それは至極もっともな話だ。でも、だからこそ山﨑さんはそんな子たちに向けて「自分を信じて生きていこう!」と提言したいんじゃないだろうか。

「誰かの好きな私、どうせ100くらいあるし」とはすごいセリフだ。そして仁王立ちで決めるかみこが言い放つ説得力は絶大である。人によっては100もないよと言いたくなるかもしれないが、多かれ少なかれ他人から見た自分というものは勝手にラベリングされるものだ。そんなものに惑わされていたら枯れちゃう(老いてしまう)よと莉佳子も言っている。

『人間的な、あまりに人間的な』などにも書かれているが、ニーチェも「他人の評価は気にするな。自分が望むような評価をされることなんか期待してはいけない」と言ってる。

自分に自信がないから他人の評価を気にしてしまう。自信がないから他人と比べて自分を優位に立てようと中傷したりしてしまう。

そんな不毛なことを考えるより、間違ったって「自分は可愛い」と自信を持つことのが良いし、そんな風に考えられたら「最強じゃん」と。

これって本当に素晴らしい自己肯定だと思うのだ。

黒歴史大歓迎

ニーチェは三段の変化という考えも提唱している。これは『ツァラストラはかく語りき』のなかで語られるもので「精神が駱駝となり、駱駝から獅子となり、獅子から幼子になること」を意味している。

どういうこと?となるだろうが、まあ簡単に言うと「新しい価値観を見つける為の3つのステップ」ということだ。

駱駝とは考え方が鈍化し盲目的になることを意味し、そこから自由を求めて飛び出すことを獅子と言い、自由を手にして新たな価値観に触れられる状態のことを幼子と表現している。

まさにアンジュルムイズムである。

「私らしさを見つけた」と思っても、次の日に「ああ、あれ違ったわ」とすぐに前言撤回することを恥ずかしいと思う必要なんかないのだ。

だから「少しリップ色変えたってバレないよ」と、ここで現リーダー竹内朱莉に言わせるのがニクい演出だ。

アンジュルムとリップには因縁がある。卒業した笠原桃奈が加入当初に心無いヲタクからリップの色をお姉さんたちのマネをして赤くしたことに難癖つけられたという過去がある。詳しくはこちらを読んで貰えたらと思う。

当時のリーダー和田彩花は「好きなリップを塗ればいい」と宣言し、ライブでも全員が赤いリップを塗って登場したりもした。

そしてそんなことがあった次のシングル『マナーモード』のMVではメンバー全員がバラバラの色のリップを塗って撮影している。リーダーの強い意志が反映されていく強いグループであることが、この頃から少しずつ浸透していった。

が、二代目リーダーはちょっと違うアプローチをする人だ。彼女はそこまで強く言えるキャラクターではない。では彼女はどうするか。

「そんなん言わなきゃ分かんないっしょ」

と笑い飛ばすのだ。

どっちが良いも悪いもない。人それぞれ、自分で考えて自分で良いと思ったことをやればいいのだ。

そしてそれが間違ってたなと思っても「黒歴史大歓迎」と強気で笑い飛ばして自分を変えていけばいいじゃん。と、まさに『ハデにやっちゃいな!』は現リーダー竹内朱莉イズムに溢れた「今のアンジュルム」を体現している曲である。

人生、山あり谷あり様々だけど、常に前向きに常に変化を恐れず新しいステージへ進み続ける生き方こそ、最強じゃん。

ってことである。


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