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Z級生き恥録2023年8月上旬:命を燃やせ、夏

夏!私は夏が好きだ。確かに暑いし息苦しいし、汗で全身べたべたして気持ち悪くもあるが、自分の誕生日があることを差し引いても一番好きだ。空を見上げれば深い青に吸い込まれて、まるで宇宙が見えそうになる。天頂まで伸びた入道雲が、目の錯覚なのか魚眼レンズでみているような、天球を可視化したような不思議な歪みを見せてくれて自分が地球という球体で生きていることが実感できる。何より植物が力強く伸び葉の緑を一層鮮やかにする様子が好きでたまらない。春が「緑萌ゆる」のに対して夏は「緑燃ゆる」という感じだろうか。私の視力はナメクジ以下(視力0.02くらい)のためピンボケのぼんやりした裸眼世界を見た後にコンタクトで視力矯正すると、生い茂る夏の雑木林が風に揺れる様子が、一枚ずつ輪唱のように波打つ姿がしっかりと目に焼き付けられる瞬間が最高に好きだ。世界はあまりにも美しい。


自然が命を謳歌するという事はそれだけ消える命もあるというわけで、命を燃やし尽くしたセミから車に轢かれたカマキリ、暑すぎる地中から這い出てきて干からびてしまったミミズなどを毎朝見かける。そして死骸に群がる蟻。近所の貸し農園で育てられているひまわりも二日ほど前からぐったりと首を垂れてしまった。種をぎっしり詰めたまま顔を地面に向けて、お天道様に顔向けできないような重罪でも犯したのだろうか。ひまわりは小学校の花壇で植えた記憶がほんのりとあるが萎れるところをまじまじと見ることはなかったので新鮮だ。花の裏側の”がく”の部分が食虫植物のようなぼってりTP形をしていて、もともとの大きさも相まってかなりグロテスクだ。もしかして太陽に顔を背けているのは何かを食べてしまったからなんじゃなかろうか。


そして枯れたひまわりにたかる蜂が一匹。


8月に入ってから、なぜか会社のデスクに蟻が発生するようになった。最初は1匹だったのが、次の日には3匹、さらに次は5匹…と次第に増えていった。もしや自分のデスクに置いているハンドクリームやリップティントから漂う化粧品特有の甘い香りのせいかと早々に鞄の中に撤去したが、それでも数が減らずやきもきしていると、向かいのデスクの先輩も「うわ!蟻!」と騒ぎ始めて、ついに同じデスクの島の人たちが引き出しからお菓子を取り出し食べ尽くすことになった。1階なので仕方ないところはあるし噛まれるなどの実害もなかったが、作業中に視界の隅でチラチラされると気になって集中できない。
フロアからお菓子が撤去されても出没は続き、最終兵器のアリの巣コロリが所狭しと設置される。アリの巣コロリはどうやらスプレータイプの殺虫剤とは異なって即効性はないらしい。甘い香りのする毒入り餌を巣に持ち帰らせてじわじわ殺し最終的に根絶やしにするという仕組みのようだ。したがって、設置して最初のうちは甘い臭いに誘われた偵察兵たちが続々とデスク周りに出現するので以前よりも多くのアリをこの指で圧殺することになった。南無。蟻はカマキリと違ってとても小さいのでプチッと潰す感触があまりなくティッシュも1枚で事足りるので、知らないうちに10匹も殺していたなんて日もある。無情。躊躇いは一切ない。私に潰されるか毒餌に蝕まれるかそれだけのことだ。どちらの方が蟻にとってマシなのかには多少の興味はある。それだけだ。

うっかり虫を殺してしまった昨年の夏の記事はこちら。

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