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日曜興奮更新

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毎週日曜日に更新します。こちらの更新を元に「全部を賭けない恋がはじまれば」というタイトルで書籍化しました💋
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記事一覧

【日曜興奮更新】急いで

セックスって、その辺に転がってるけど全くあの男に匹敵する者がいない。少し前にプロポーズしたのに返事がない。「待ってくれ」って、言ったっきりで変に私に期待をさせている。何日も待っているのだ。 今朝、横に寝てた知らない男の寝てる顔を見て、はっきり分かった。頭の隅にあの男の返事をまだ待っている自分がいた。次へ、と乗り換えられない。 「なんかさ、あんまり会社ぽんぽん辞めて色々するのも良くないと思うよ。」 好きな彼は、私によくこう言うのだった。 「分からないよ。私だって色んなこ

【日曜興奮更新】グッピーの命、今日の輝き

またどうしようもない人に金を貸してしまった。 両手を合わせてお願いポーズ。こんなに上手い人っているのだろうか。貸すそばから溶かす彼のTwitterは輝いていた。新しい時計、新しい車、新しい女。 コメント欄の「うらやましいですー」という声。私も羨ましいと思うが、それは私の金で買ったものなのだ。新しい女の口紅が、私よりも赤くて潤っている。 わたしの唇は、乾燥地帯もいいとこで最近は久しく誰にも奪われていない。 「わたしが買ってあげたグッピー、ちゃんと生きてんの?」 15匹

「日曜興奮更新】切ろう

「前髪、切りますか?」 「はい」 眉毛に鋏を当てられジャキンと切る。 顎まで伸びてたカーテンが無くなり視界が広がると、これまでの自分とはまるっきり違って見えた。今日から、また違う生活を迎える。 2年前。私は今夜も渋谷松濤にあるマンションでお客が来るのを待っていた。深夜2時、部屋にある大きな鏡に映る自分は若いと思った。近づいて肌をよく見てみる。 こんなに毛穴もなくて、いい子に見えるはずなのに何故今日もお客が来ないんだろうか。OLを辞めて、こういう水っぽい商売に飛び込んだ自

【日曜興奮更新】ずっと先まで歩こう

「ねぇ、聞こえる?」 壁に耳をつけ、寝ている彼に確認する。大きな、低い寝息が隣の部屋から聞こえてくる。 「獣みたいだね、鼓動まで聞こえてきそうで」 私たちは最近、壁の薄い部屋で同棲を始めたのだ。 学生ってなんていいんだろう。時間がある。未来を見据えて行動が出来る。困っても誰かが助けてくれるでしょう。助けてくれないと言っているうちは、学生になりきれていない。 地元の役場で働いてコピーを千部取っている間、ずっと学生に戻りたいと思っていた。上京して、それが叶い、いま好きな

【日曜興奮更新】揺れ

地元の小さな駅で、おにぎりが3つ入ったビニール袋を渡された。湿っていた。 母は「東京に行っても、こちらのことを忘れないでね」と言う。 忘れるために行くのだ。切符は片道のみ。 しかし、そう思っていても縦長の窓ガラスの向こう側にいる彼女が左に消えていって田舎の景色に移り変わると涙が出るのはなぜだろう。 一駅で降りていく人について行きそうになる。私はまだ13駅も降りられない。シートに深く座って、おにぎりを食べよう。そして、ウォークマンに入ってる都会的な歌を探す。 東京にとり

【日曜興奮更新】だから書くことにした

さきほど手紙を書いてみた。 よく自分で読んでみると、人に読ませるものではないと思った。ましてや、好きな男に読ませるというのなら素晴らしく心揺さぶるものを書いてみたいものである。 深夜に書いたものが翌朝恥ずかしくなると、色んな人から聞いていたので念のため、ニ晩寝かせてみたのだ。よりダメになった。これはカレーではなかった。 その文から匂い立つものは、ただの好きをぶつけただけで発展がない。 初めて長い文を書いてみようと思ったきっかけは、26歳の頃に出会ったキャッチの男だった

【日曜興奮更新】保険

家から歩いて5分のところに自然豊かな公園がある。 この街に住み始めてから、その存在を知ってはいたがしばらくは行く気になれなかった。俗っぽいことに忙しいと自然に触れ合おうなんて思わない。 最近の心の話をするとこうだ。恋愛というかセックスに振り回されるのに疲れて、人間のやるべきことはもっと他にあるんじゃないかと思っていたところだった。 なんのためのアクセサリー。なんのための着飾りと洗面台に並ぶ香水の瓶たち。 ジャージを簡単に着て、公園の入り口を通過した。 人はまばらに歩

【日曜興奮更新】夜のコール

池袋は夜になると、ぐっと寂しくなる。スプリングがおかしく沈むベットに身を任せ、天井を斜めに見つめる時間が永久に思えた。 さっき喧嘩して、彼は帰ってしまった。私も池袋から田舎に帰るかどうか迷った。 宮殿みたいなラブホテルのバスタブで、余計なことをなぜ言った。繋ぎ止めたい、でも追いかけさせたい、この両立って難しいだろう。 2回目のシャンプーの泡立てを確認し、その隙に栓を抜きながら上がって服を着た。 1時間前、意気揚々と現れた私たちを、ラブホテルの窓口にいたおばあちゃんは微

【日曜興奮更新】新年一発

正月が始まって、終わった。 新年の挨拶、電話を繋げた先から女の声がした。 こっちはさっき買った1000円のシャンパンを握っている。乾杯をしたかった。2人だけの世界があると思った。そんなものはこの空想が出来る脳みそというところだけで存在しているらしい。 高円寺のロータリーがいつもより冷えている。 「いえーい」と叫んでいるギタリストと目があった。新しい服を着ている自分と、マジの古着を着ている彼との新旧対決。 「あけましておめでとう。それ、なんの曲?聞いたことない。」

【日曜興奮更新】金

あけましておめでとう。ついに、新幹線の指定席に乗れる身分になった。真面目に働いていたら、そういう年を迎えた。 ゆうちょ銀行に並んでボーナスが入るのを楽しみに待つ。お先に金持ちになった東京の友達が2日で稼いでしまう金額が半年間待ちに待って私に振り込まれた。 暗証番号を爪で押して引き出して、みどりの窓口へ裸のお金を持っていく。 「もったいない」 そう思ってしまう自分がいた。この数万で綺麗な服を買えたかもしれない。ものたりない金額が残って、こんなせこい気持ちで華の東京から帰

【日曜興奮更新】影響

荻窪のスターバックスコーヒーは、他店と比べて混んでいない。 クリスマスが明けると、ここのカウンター席に座ることが自分の中で恒例となっていた。 クリスマス前と後に予定がドドっと入るのは、人の見栄と寂しさを現し、SNSから離れる人と通常通り生きる人とに分かれた。 私は離れる側で、一応予定はある側だった。 今日、26日は2人の知り合いと会うことになっていた。 長い話になるのか分からないから、2番目に大きいサイズのチャイティーラテを頼んだ。そこに溜まっている茶葉の旨味をかき

【日曜興奮更新】忘年会

忘年会。 激安中華料理店でチャーハン食べ放題というのがここの売りである。金がなくて時間がある我々にお似合いの場所だった。 毎年ある集まりに懐かしい顔ぶれが。 8人掛けの椅子には男が5人、女が3人座っていた。私の前には、元彼とセックスフレンドがいる。 誰が何の目的でこの飲み会を開くのか、分かっているのに来た8人。 ここには、関係が入り乱れた人間が集まった。 合コンという名の、兄弟といいますか姉妹といいますか、棒と穴を懐かしむ最悪な会。 1杯280円のハイボールを思

【日曜興奮更新】サンドウィッチ

神田へ、朝6時を目指して向かう。 錦糸町から電車に乗ったのは、最近始めた喫茶店で朝の仕込みをするためだった。 5時35分。 店の前には今日も片山さんという男の先輩が体操座りをしてマスクの隙間からタバコを吸っていた。ハンチングを目深にかぶり、鍵をジャラジャラ振ってみせ、「はやく来すぎ。」と言うのだった。 喫茶店の制服を買うお金もない学生の私は、店長に5,000円を渡され水道橋で買ってきた白いTシャツを着ている。 「なんで白いTシャツなの?」 「何買えばいいか分からなく

【日曜興奮更新】一周

見ず知らずのやつになんか、同情されたくないと母は言った。 今日は、祖父が死んだ日、命日。 明るい顔で酒を飲んで、炊飯器を思いっきり窓ガラスにぶつけてみれば、夕方が来たことが分かる。 飛び散った破片を拾う小さな私の母と彼女の弟は、少しだけ笑ってる。狂気な出来事も毎日となれば、慣れてくるらしく、そこに違った景色と意味を持たせることができる。 「今日は最新の炊飯器が一発でカチ割れた。」 毎週2、3は変わる家電製品により、ショールームと化した木造の一軒家は温かな家族の思いに