2020年12月1日、2日に行われたREBT（アルバート・エリスの認知行動療法）の国際会議の参加レポートです。

Telepsychology in the time of lockdown: Exciting advantages for practice. Dr Monica O’Kelly (Australia) [ロックダウン下での遠隔心理学：魅力的な実践における利点]

1．遠隔心理療法の効果についてのエビデンス

・同期の遠隔心理療法（ビデオ会議）の効果は対面のものと変わらない

・非同期の遠隔心理療法（テキスト、チャット、メール）は、対面のものよりもやや劣る

2．ガイドラインと倫理

3．遠隔心理療法におけるCBTの実際

4．自殺リスクへの対応

Tough Minded Love For Tender Hearted Sweethearts. Dr Chrysoula Kostogiannis (Greece) [優しい心の恋人のための強いマインドの愛]

1．定義

・REBTにおける「愛」：ポジティブで健康な感情、不健康な感情の反対。ラショナルで、柔軟で、論理的で、実利的で、役に立つ信念の結果。
・不健康な感情：非機能的な感情、役に立たないネガティブな感情
・イラショナルな信念：効果的でない信念

2．信念：イラショナルvsラショナル

3．健康な愛と不健康な愛

4．関係性の問題への対処の中心は、非現実的な理想への対処

5．Q&A

・虐待への対応は？：しっかり評価し、情報提供し、REBTを行う

・訴訟中の場合は？：訴訟中の場合は、カップルセラピーを継続しない

・自己犠牲の人は？：どれだけ耐えられるかどうか（イラショナルかどうか）。何を避けているか。

The empirical status of Rational Emotive Behaviour Theory and Practice. Dr Daniel David (Romania) [REBT実践の実証研究の現状]

今後の研究に向けて

・これまでの研究は信念と結果との関係しか見ていない。出来事を見て、A-B-Cの媒介関係を評価しなくてはいけない
・信念の有無だけでなく、強度を評価しなくてはいけない
・Aの頻度はBやCの影響を受ける。特にCを生じないAの評価も重要
・認識されないレベルの認知の影響を検証する必要がある
・コールド/ホットな認知の違いが十分検討されていない
・一般的なレベルと特定のレベルの認知の影響に違いがありそう
・不健康でネガティブな感情と健康でネガティブな感情は強度の違いか、質的違いか
・ポジティブな感情の検証
・感情が関わらない行動について
・適応的/非適応的行動について

Q&A

・REBTはNHSの適用になるべきか？：条件による。うつ病や不安障害の一部については強いエビデンスがある。クリニカルな領域に行くのであれば、そのような理論と臨床研究が必要。

New developments of the ABC model for cognitive-behavioral coaching. Dr Oana David and Cristina Lorint (Romania) [認知行動コーチングにおけるABCモデル]

REBTをコーチングの文脈で活用する際のポイント

・ポジティブな側面についてもABCモデルを作る
・EFGを加える

コーチングのABCモデル

A（出来事、推測）
B（ビリーフ）
C（結果：感情、症状、行動）
D（論駁）
E（Dの効果検証）
F（変化の促進）
G（目標達成）

アプリPsyPillsの紹介

まとめ：認知行動コーチングにおけるABCモデル

・ポジティブABCモデル
・アセスメント、概念化、変化のプロセスのモデル化
・エビデンスに基づく変化の理論
・テクノロジーに基づくアプローチ

参考書籍

The use of REBC in achievement settings: Implications for the regulation of motivation and emotion. Dr. Martin J. Turner (UK) [目標達成のためのラショナル・コーチング：モチベーションと感情の調節]

イラショナルな信念を持っているアスリートが高い業績を上げることがある。これが問題。誰にでも当てはまることではないし、高いモチベーションを維持するために効果的な方法ではない。

自分を追い込んで、モチベーションを高めれば勝てると思われているが、科学的な根拠はない

ABCとG（目標）は相互に関連している

ABCは相互に関連している（Ellis, 1994; Ellis & Ellis, 2001)

ABCGのモデルは、ラザルス（Smith & Lazarus, 1993）のモデルに描かれている

Appraisal/評価

・目標への高い関与
・高い目標の不一致
・低い/不確かな（感情に焦点を当てた）対処能力

非エレガント・ソリューションの有効性

・ゴールについての検討
・試合の5分前に、信念の変容のためにディスカッションをする余裕はない
・リラクセーションやアクセプタンスが効くことも

心理学的スキルトレーニングの「カノン」

Anderson (2009)
・リラクセーション
・セルフトーク
・イメージ
・目標設定
・集中

GABCの導入

G（目標）：私が達成したいものは？この状況は自分の目標に関連している？
A（状況）：この状況は、私の目標達成を妨げている？将来妨げる可能性がある？
B（信念）：私を突き動かすものは何だろう。私はパフォーマンスについてどんなことを信じている？
C（結果）：私は脅威から逃げている？それとも挑戦に向かっている？

スポーツや運動への応用

・ゴルフ
・試験ストレス
・ハーフタイムでの掛け声：ラショナルな方が恐怖と逃避が減った
・F1のピットストップ

アルバート・エリスの書籍

"Almost the entire history of western civilization has been motivated by the dubious proposition that human being are worth while only when they are extrinsically competent, successful, or achieving."
"西洋文明のほぼ全歴史は、人間は外面的に有能で、成功し、達成した場合にのみ価値があるという怪しげな命題によって動機づけられてきました。"

参考書籍

Single-Session REBT: Learning from Demonstration Sessions. Prof Windy Dryden (UK) [シングルセッションREBT：デモセッションからの学び]

面接が1回で終わらないのは、1回で終わらせる気がないから

シングル・セッション・セラピーはマインドセットであり、特定の手法ではない

私のシングル・セッション・セラピー

・問題、解決策、目標志向
・1つの課題を扱う
・20分～25分
・信念の変更にこだわらず、クライアントのニーズに沿う
・宿題よりもテイクホームメッセージを重視

参考書籍

Q&A

・1回よりも複数回の方がいい人はいませんか？：複数回を希望するのであれば、やったらいい。私がやっているのは、1回のセッションの中で、できることをすること。

・セラピストは文脈に応じて複数のマインドセットを使い分けられる。1つのマインドセットだと、多様なクライアントに対応するのは難しいだろう

・長くやればいいというわけではないですね：はい。

・誰がシングルセッションに適していますか？：わからない。シングルセッションウォークインサービスも可能かも。事前にシングルの方がいいかどうかを決めるのはナンセンス。

・どれくらいの人が継続を希望しますか？：シングルセッションに来ることの方が多い。むしろ、継続では来させない。オプションではあるけど。

・プリセッション質問紙はしていますか？：使っていません。私は、プレセッション準備のためのワークシートを使っています。

・セラピストにとって経済的ですか？：1人から10回もらうのも、10人から1回ずつもらうのも同じだと思います。

・25分で関係性を築くことはできますか？：アライアンス（協働関係）で重要なのは、真剣に考えることです。

・コーチングでも可能ですか？：私は特にカウンセリングとコーチングで

・シングルセッションのチャージは継続のものと異なりますか？：好きにしたらいい。

How REBT is common to all Psychotherapies, to all Forms of CBT, and how it is unique. Dr Raymond DiGiuseppe (USA) [他の心理療法、認知行動療法とREBTはどこが似ていて、どこが異なっているか]

効果的なセラピストは洗練された対人スキルを有している

・言語的流暢性
・対人知覚
・クライアントに合わせた説明
・影響力があり、説得力があり、自信がみられる

強い直面化や荒いアプローチは効果を下げる

REBTもCBTも関係性を重視するが、特に創始者は手法の特徴を強調するために治療同盟についてはあまり触れなかった

REBTは感情を注視する

REBTは過去の出来事についてあまり扱わないが、それを活用することはある

REBTでは、セラピスト患者間の個人的な関係、やファンタジーは扱わない

REBTと他のCBTに共通する点

REBTにユニークな点

・ディスターブするのは、人間の特性
・健康なネガティブな感情と不健康なネガティブな感情の区別
・思考や推測ではなくて評価（appraisals）に焦点を当てる
・内的体験だけでなく、現実を受容（アクセプト）する
・自己受容を促し、自尊心を否定する

参考書籍：REBTに近い感情理論

Q&A

・今後の研究に必要なのは？：ネガティブで不健康な感情とネガティブで健康な感情のラベル付け。

・行動を通して感情が変わることもありますよね。：もちろん。