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Coffee story エピソード3 【ホットミルク】

【グリーンちゃん】①

「えーっと。昨日は、どこ行ったっけ。」

最近、なんだか物忘れがひどくなってきた。私は、昔から忘れっぽくて、小学生の時、体育がある日の朝は、だいたい赤白帽子を必死で探しその度に母に「なんで前の日に入れとかないの。」と叱られながら探していた。

だけど最近は、なんだかおかしくて、そんな単純なものでなく数時間がポッカリなくなったみたいに思い出せなくて、ワープしたみたいに急に学校に居たり、お風呂に入っていたりする。

長年の友達は、覚えているけどあまり親しくない人は、毎回初めまして状態だから、時間と場所、名前なんかをメモに残すようにした。

見て思い出すように、ちょい日記みたいに1日の大事な場面を書き留めるようになっていった。絵だったり、言葉だったり、名前だったり見ればなんとなく思い出してくる、そんな状態だった。

あの夢を見るようになった頃からすごくワープの頻度が増してきた。

ミドリの夢

ミドリだらけの夢

いくら私がグリーンが好きだからって夢までグリーンにならなくてもって思った。

それは緑の葉っぱが目の前いっぱいに現れて、まるで緑のトンネルのようだった。初夏と思われる若葉や青葉がキラキラした緑のトンネルの中をずっと歩いていた。

何か意味があるのかもしれないと思いスケッチに見たままを書き残していたら、その後も何回も同じミドリの夢を見るからなんだろとずっと気になっていた。

私自身がなぜかミドリのものに、妙に惹かれ、手に取るもの欲しくなるものがほとんどミドリ色のものばかりだったからこの感覚は、あの夢と関係しているのかもしれないと思うようになってきた。

いつからかこのカフェに来るようになり、昨日の自分の出来事や、会った人のことなどをスケッチブックを広げて確認している。スケッチブックを広げるのにファミレスじゃ、なんかやりにくく、長居もできない感じなのでこの店を見つけてほぼ毎日来ている。

あまり混むこともなく、店員さんもほどほどにほっといてくれるからかなり居心地が良くて、ゆっくりとスケッチブックを広げることができる。

こないだ注文していたホットミルクを運んでくれた時に、ミドリだらけのページをチラッと見られて「ん?」って顔されたけどそれ以上聞かれなかったからますますこの店が好きになってきた。

今も大好きなファイヤーキングのカップをテーブルに置いて、ミドリの夢を思い出している。

今朝も見たあの夢は、いったいなんなんだろうと。

飲み干したカップの内側にへばりついたミルクの膜を眺めながらぼんやりしていると、差し込んでくる日差しで気持ち良くなっていた。このカフェの昼下がりの日差しは本当に心地よい。

他のテーブルの人の話し声と店内にいつも流れているビートルズの曲がだんだん遠くなってきた。

なんて曲だったかな?

#小説 #短編小説 #ファイヤーキング #ミルク #スケッチブック


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