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どんな状態で生きていたいか【本業の話】


わたしは病院勤務の理学療法士です。
これから書くお話は、わたし個人が医療の現場で感じることについてです。
現場のリアルを伝えたいため、医療関係ではない方にも伝わればいいなと思い、かなり噛み砕いて書かせて頂きます。


栄養を摂るということ

食べてほしいスタッフと食べたくない患者さん

わたしの担当している患者さんで、飲み込む機能に障害はないものの、お食事が少ししか食べられず、点滴だけでは1日を乗り切るエネルギーが足りないので、栄養を取り入れる方法について、ご家族のご意向を伺う予定の方がいます。

嚥下調整食2と分類されたミキサー状の食事であれば、誤嚥せずに食べれるよ!と飲み込みの専門スタッフが評価して、ミキサー状の食事を提供されているんだけど、これがまあ食べない食べない。

誤嚥とは・・・
「誤」間違って
「嚥」飲み込む
食事がのどを通過するときに、空気の通り道を塞ぐ仕組みになってるんだけど、塞ぐ機能が低下していることにより、間違えて肺や気管の方に食事が進んでしまう。健常な人ならゴホッオエッッってなるんだけど、むせることすらできなくて肺炎に繋がりやすい。

「学会分類2021(食事)早見表」の一部を改変し図式化したもの

なんで食べられなくなったんだろう

食べられなくなってしまう理由は本当に人それぞれで。
食べる体力や気力がなくなってしまった方、認知症の進行により口に運ばれたものを異物と捉えてしまう方、これまた認知症により食事=食べるものと認識できなくなっている方、口の中の環境が悪い方(荒れていたり、舌に汚れがついたままになっていて不味く感じる)、そもそも飲み込む機能が低下してしまっている方など。

おうちではどうしていたの?

ご家族の方によると、家で食べていたのはやわらかめの食事ということなんだけど、普通みんながやわらかめと聞いて想像するのはかぼちゃの煮物とか豆腐とかおかゆとかでしょ?
多分おうちではそういう感じの「やわらかめ」だったと思うの。
でも病院や介護施設で提供している「やわらかめ」は、もう全然違うよ。

それでは嚥下調整食を脳内で作っていきましょう!

  1. ご飯を用意します 例えばカレーライスね

  2. ルーとご飯をそれぞれミキサーへ入れます

  3. お皿に移し替えます

  4. ミキサーにかけたカレールーをミキサーにかけたご飯にかけて、さあ召し上がれ〜

で、こんな感じになります。ペースト状ね。
ピューレと言った方がオシャレに聞こえるかな?

これは、カレー・枝豆豆腐・里芋の煮物だそうです

これを、自分では食べてくれないので、職員がねじ込むようにお手伝いして食べてもらいます。
病院側の意向としては、お口からお食事(栄養)を摂らないと、栄養の代替摂取手段の検討が必要になる。
口から食べる以外のどの選択をしても身体への侵襲があったり、管に繋がれてしまうので、口から食べることで、一番人間らしい姿でいてほしいというの願いもこもっていると言ったところでしょうか。

この患者さんは、食事は毎食2割ほどでごちそうさま。
あとは、1缶200kcalほどの栄養ドリンクみたいなのを提供されてて、1日かけて飲めるときに飲んでもらって〜という指示なので、リハビリで関わるわたしもドリンクが残っていたら「飲んで〜」と口に運びます。
コップから飲んでもらおうとすると、口に入れずにジャーッと服にこぼしちゃうし、ストローでは吸ってくれないので、「楽のみ」とか「吸い飲み」という、飲み物用のジョウロみたいなのを使ってお手伝いします。(飲んでもらうというよりは流し込んでいるという感じにどうしてもなっちゃう。倫理的にどうなのと思うことはしょっちゅうあるよ。)

幸和製作所薬のみ 吸い飲み という商品みたい
類似商品は100円ショップでも見かけるようになってきた

なぜかこの患者さんはバナナ味を提供されていて、バナナアレルギー(嘘)のわたしにはバナナの匂いのするものが近くにあるだけでも苦行なのに、そして、別にほしいと思っていない飲み物を口に運ばれている患者さんはどんな気持ちなのか、考えてみたの。

改めて調べるまでバニラ味とコーヒー味しか知らんかったけど、抹茶味ならわたしもギリ飲めるかも

もういらないよが伝えられない(以下、患者さん目線で考えてみた)

ま、病院だし、栄養摂らせないわけにはいかないじゃん。
でもさ、何でバナナ味を選んでわたしに飲ませるの?
まじ苦痛。飲みたいわけなくね?
バナナじゃないにしても、こんな甘ったるい飲み物飲めるかいな。
カロリーupのために糖分入れるのはわかるけどさ、味もうちょっと考えてくれてもよくない?
職員のタイミングで飲ませてくるから、わたしがお腹いっぱいでもガンガン飲ませてくるやん。
もうちょっと時間おいてくれたら飲めるかもしれんのに。
ほんまそっちの都合ばっかりやな。

と、まあこんな感じでしょうか?
今日お話ししている患者さんは、自発的なお話ができなくなってしまっているので、想像でしかありませんが、自分だったらどう感じるかな?ということで。

このあと、この患者さんが直面する代替栄養方法についても書こうと思ったんだけど、なんとここまででかなりのボリュームになってしまったので、またの機会に書いてみようと思います。

わたしは「生かされている」状態では生きていたくないなと思っていて、食べたいものを食べたいときに食べれるということがどんだけありがたいことか、会いたい人に会いたいときに会えるということがどんだけありがたいことか、日々患者さんを目の前にして感じているので、今日も好きなアイスを食べてから、チルドレンの寝顔に圧強めのチュウをして寝ようと思います。

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