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わらわはお育ちがいいから・・・

ヨシコちゃんは95歳。11年前、84歳を目前に大腿骨骨折して、その後も同じところを2回骨折。かなりのヨチヨチ歩きになってしまい、自宅以外では車椅子の暮らしです。
とはいえ、気持ちは超元気なヨシコちゃん。3年前3回目骨折の退院から、週2回の訪問リハビリを受けているからかもしれません。セラピストの先生たちに、感謝感謝の毎日を過ごしています❣ 
といっても、感謝しているのはアタシ。ヨシコちゃんはリハビリの都度都度、こんにちはの代わりに「家は抜かしてください」と…💦

さて、本日のオコトバは「わらわはお育ちがいいから、独りで旅ができないの」。

これは、娘であるアタシが「万一、先に逝っちゃったら、お母さんに保険金〇円がおりるから、それで好きな施設に入ってね」と告げるや否や返ってきたオコトバ。ええええ、「独りでは暮らせない」とか「手続きできない」なら分かるけど、なぜ、独り旅になるわけ❓

理由を尋ねたら、・・・と首をかしげるばかり。「あなたの故郷、村岡町へは独りで行ったじゃない」と反撃すると、ぼんやりとテーブルを見つめていた視線をきっと持ち上げて、アタシをしっかと見据えながら「あれは、目的があったから旅じゃないの」。わらわ様のようなやんどころのない方にとって、旅とは目的もなく、あてもなくさすらうことなのでしょうか。
腰砕けになりそうな娘心にムチをうって、「時々、一緒に旅するじゃない❓」と追撃すれば、「だって、連れていってくれるから」。つまり、お育ちのよいわらわ様としては、よんどころのない事情でもないかぎり、お供も連れずに旅はしない…ってこと❓ そして、アタシはお供…ってこと❓

ふいに、ヨシコちゃんは「フジちゃんとお蕎麦を食べに出かけたらね、お勤めしていたせいか、食べるの早いの」と…。はいはい、わらわ様はお勤めしたことありませんから、食べるの遅いよね。どうやら、お友だちとのハイキングを思い出しちゃったみたいですが、フジちゃんはすでに故人です。
「で、お蕎麦がのびて増えて、持て余してたら、早く食べないからのびるんだよ~って言うの」。お育ちがいいから、お蕎麦を上手にすすれないとでも言いたいのか、意図も文脈も不明です。合いの手を打ちようのないアタシに、「みんな、お蕎麦やおうどんは噛まないのかしら?」ですって💦

ともあれ、ヨシコちゃんの脳みそは想い出の連想ゲームのスイッチが入ったらしく、「昔ね、お友だちと待ち合わせしたのに遅れちゃって、その子は列車に先に乗って行っちゃったのよ」と始まり、「その列車が機銃掃射でやられて、その子、死んじゃったの。。。(沈黙)」。それは戦時中のこと…ね。連想のタイムマシンはどんどんぐんぐん、かつてへかつてへ~。

聴くしかなくて黙っていたら、いきなり「約束は守らなきゃね」ですって。約束を守ってたら、あなたもお亡くなりなったかもしれず、そしたら娘のアタシも生まれてなかったでしょ…と言いたいところを呑み込んで、「それで」と促せば、「あなたも待ち合わせの時間はちゃんと守りなさいね」。急に母親っぽい口調になるヨシコちゃん。おそれいりました🙇


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