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新しい演劇の形を目撃した!「日本語を使った演劇ワークショップ」レポート

2021年8月から10月にかけて、precogではインターンシップ生として跡見学園女子大学から中村佳那子さんをお迎えし、チェルフィッチュが主催した「日本語を使った演劇ワークショップ」の運営に携わっていただきました。中村さんの目から見てこのワークショップはどんなものだったのか、レポートにまとめていただきました。


こんにちは!今回は9月から10月にかけて実施された「日本語を使った演劇ワークショップ」について、プリコグでのインターンシップを通して参加した私、跡見学園女子大学の中村がその様子をお伝えします。

日本語を使った演劇ワークショップとは

演劇作家・小説家の岡田利規さんが主宰する演劇カンパニー「チェルフィッチュ」では、日本語の可能性をより広げるべく、日本語を母語としない人たちと一緒に演劇を作りたいという想いがありました。その最初の試みとして実施されたのがこのワークショップです。

私はインターン生として、学校や団体などに参加者募集の呼びかけやメールを送ったり、参加者希望の方とのやり取りをしたり、事後のメール対応をしたりしました。当日は受付などを通して、日本語が母語ではない方とコミュニケーションをたくさん取らせていただきました。演劇に興味のある方が多かったので、私が大好きな宝塚トークで盛り上がったり、大学生の方と学生トークもできたりと、とても貴重で楽しい時間だったと感じています。今の状況下で人との直接のコミュニケーションは難しい時代でもありますよね。さまざまな国の方が集まり、特に母国が一緒の方同士が母語で楽しそうにお話しされていたのがとても印象に残っています。母国に帰れない状況が続いていたからこそ、不安も感じていたと思うので、ワークショップがアットホームで暖かい場だったと少しでも感じていただけていれば私も嬉しいです。

日程A、日程B、日程Cと3回に分けて行われたこのワークショップ。まずは、日程ごとに行われた様子をご紹介します。

思い入れのある家を何もない舞台上に創り上げる

日程Aと日程B(※通訳あり)では、参加者の方がそれぞれの思い入れのある家を日本語で説明しながら体の動きで舞台の空間を埋めていきました。一人ひとりの演技が終わった後には必ず岡田さんがフィードバックを行なっていきます。その中で、岡田さんが最も強く参加者の方に伝えていたのは、「言葉より大事なことは想像すること」という言葉でした。ネイティブな発音でなくても、役者がテキストの先を想像するのも自由、それを観客が想像しその想像がシェアできた時、それはもう演劇という形になる。舞台上で演じている方も「当時の記憶がよみがえってきて体が勝手に動いた」「舞台上にその家の様子が見えた」と”想像”を使って舞台上の空間を共有し、楽しんでくれました。

ワークショップで参加者が話し合っている様子

2日目には、自分が知っている家ではなく他の人の家をパフォーマンスしていきました。グループに分かれ、それぞれの家をもう一度想像を使って共有していきます。住んだことのない家を想像しながら、日本語を使って表現していく難しさ。反対に自分が住んだことのない家だからこそ、忘れてしまった部分をどのような家だったかを想像して”嘘”を演じていくことが楽しかったという意見もありました。中には、複数の家を組み合わせて演じている方もいて、1日目とはまた違った面白さもありました。

演じる参加者と岡田利規

場所を与えられるのが演劇の良さ

日程Cでは、更に上演に近づけるためテキストを用いてワークショップを進めていきました。まず、日本語の台本を読んでみてそれを舞台上で形にしていきます。舞台上で、台詞やナレーションから場面にある状況を表現するには何が大切なのでしょうか。岡田さんは「舞台上で役者が想像しなければただの舞台。役者が想像して演じるからこそ、そこに空間が生まれ、演劇として生きることができる」と語っていました。演劇は劇場という場所が与えられ、そこに観客がいることで成り立つのですね。

舞台上に役者しかいない、その役者の母語が日本語ではない日本の演劇っておもしろいの?

私は、幼い頃から宝塚歌劇団をはじめとする演劇が大好きです。特に宝塚では舞台上に役者はもちろんですが、セットや小道具、衣装、かつら、映像、音楽など様々のものが存在しているからこそ面白いと思っていました。しかし、今回のワークショップでは役者は何もない舞台でパフォーマンスを繰り広げていきます。そのパフォーマンスを、”想像”によって豊かに色鮮やかにしていく過程が非常に興味深く、演劇でないとこの面白さは体感できないだと感じました。私は、宝塚の華やかで夢のある世界観が好きでしたが、それに加えて役者の想像しているものを観客としてシェア出来ていたからこそ、パフォーマンスを楽しめていたのだと気づかせてもらいました。

日本の演劇を楽しむための助けでもあったのでは?

参加者の方々に自己紹介をしていただいた際に、「日本の演劇は、台詞が早すぎて理解できないから観ることを諦めている。」という方がいらっしゃいました。日本語は世界から見てもかなり難しい言語とされていますが、今回、役者として台詞の先を想像しながら演じ、観客として"想像"しながら観ることの両方を体感してみて、演劇は必ずしも言葉だけで伝えなければならない訳ではないことが実感できたのではないでしょうか。そして、日本語ネイティブでなくても、舞台上で役者として生き、それを観客として楽しむことができる。今回のワークショップは、日本の演劇の楽しみ方の一つのツールを学ぶ場でもあったと私は思います。

ここまでご紹介してきた「日本語を使った演劇ワークショップ」では、最終的には日本語を母語としない方と一緒に演劇作品を作りたいと思っています。日本語の可能性、日本の演劇の可能性、その第一歩を踏み出す瞬間に立ち会うことができ光栄でした。私は、今後も演劇を愛する1人としてこのプロジェクトの行く先を見守り、考えていきたいです。

~プロフィール~

中村佳那子

跡見学園女子大学マネジメント学部マネジメント学科 2年生 横堀ゼミ

幼少期に宝塚を初めて観てから、現在でも様々な舞台の観劇に勤しんでいます。私のモットーは、「まずやってみる」です。最近は、韓国ドラマを見ることにはまっているので、韓国語を勉強しようと思っています。


このワークショップは2022年4月11日〜5月21日にも開催します!
詳細は以下のリンクからご確認ください。
【参加者募集】チェルフィッチュによる日本語を使った演劇ワークショップ

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