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【スポーツ共創実践レシピ】暗闇・夜・光と影の運動会(中央公園 実験回)

概要

2022年8月31日夜、山口市中央公園にて、暗い場所で運動会をすることの実験を行った。

参加者

  • YCAMスタッフチーム(3人)

  • 5人家族(父母、3・4・6歳児)

  • 3人家族と親戚(父母、0歳児、小学校高学年生)

  • 単身(10代)

  • 単身(30代)

主旨・目的

「暗闇で運動会をやったらどうなるんだろう」というきっかけや、それに乗じた「夜に運動会をしてみたい」「光と影をテーマに運動会をしてみたい」という思いを具現化する目的で、それらの運動会の実験としてイベントが行われた。
また副次的なテーマとして「暗い場所での運動会(スポーツや遊びづくりの活動)の安全管理の追求」や「暗い場所で使える遊び道具の開発」を設定した。

開催までの流れ

  • 2022年5月、この企画の発案となったアイデアが出る
    「暗闇で運動会をしたらどうなるんだろう〜」

  • 2022年7月、夜や暗闇の環境でできそうな運動会の形態、遊び方などについて話し合う

  • 2022年8月、当日に使いたい遊び道具(スポーツ道具)の準備(購入や製作)などをする

  • 2022年8月31日19時、実験当日

実験の様子

  • まずは持ち寄られた道具を紹介し合うところから始まった

  • 目玉となった光の出る道具(テープライト、センサーライト、懐中電灯)などが主に使われながら、遊びがつくられて遊んでいった

  • 未就学児や小学校低学年生が参加していたこともあり、アイデアの着想から実行と主に走り回るような流れが多く見られた

  • 1つの遊び(スポーツ)を改良を重ねるよりも、複数の遊び(スポーツ)を短いスパンでつくり変えていくという進行になった

  • 参加した全員が身体を動かしていた

開発された・試した遊び

  • 光鬼ごっこ
    逃げ役は、体にテープライトをまとい、点灯させた状態で逃げる
    鬼役は、テープライトのリモコンを持って、逃げ役を追いかける
    鬼役が、テープライトをリモコンで遠隔操作して、消灯できたら勝ち


  • ボール探し
    振動した後の少しの時間だけ光るボールを使う
    プレイヤーは投げて隠されるボールを目視して、着地点を光った場所により記憶する
    ボールが消灯しても、記憶した着地点を頼りにボールを探しだす


  • 長時間露光+フラッシュ
    カメラで長時間露光撮影を行い、露光中に数回フラッシュを発光する
    フラッシュが発光されたタイミングはカメラに明るく記録されるので、そのタイミングに合わせてポーズをとる
    撮影された写真の1枚の中には、同一人物が別の場所で違うポーズをとっているなどの面白いものがつくれるようになる


  • 長時間露光+ライト
    カメラで長時間露光撮影を行う
    撮影中にライトなどの明るいものを振り回したり、文字を書いたりする
    撮影された写真には光の軌跡が記録される


  • ライトデコレーション
    テープライトを体に巻きつけるなどして、デコレーションする


  • 音源探し
    ペアになって、握ると音の鳴るボールを使って行う
    1人はボールを持って相手から離れた位置へ行き、ボールを握って音を出す
    もう1人は目隠しをした状態で、音を頼りにして相手の元までたどり着く

  • 影絵
    YCAMの大きな白い外壁を使う
    手の動きや体全体の動きなどを懐中電灯を使って壁に投影する

後日談

今回の実験の主旨・目的は上記の通りだが、加えて比較的小さいこどもたちに実験に参加してもらった意図として、「どの程度の年齢層で、どの程度の規模であればスポーツ共創は実現するか」ということを試すという意図もあった。この点に関しては、「低年齢層のこどもたちがいることで起こりうるトラブル」より「低年齢層のこどもたちがいることで起こりうる大人の意識の変化」が問題であることが分かった。小さいこどもたちが参加していると「こちら(大人)が視点を彼らに合わせる」ことに注力してしまい、「彼らと議論を交わす」ことが二の次になってしまう傾向がある。しかし一方で、参加していた6歳児は数日後にイベントの振り返りとして、新しい遊び道具の提案をしていた。それは道具の機能や想定される使用用途に留まらず、それを使った人がどのように遊べるか、楽しめるのかということを見据えた提案だった。
このことは、従来のスポーツハッカソンではあまり対象とされてこなかった年齢の参加者が主体的に遊び(スポーツ)をつくることに参加する姿勢をもつことと、他者と一緒に・他者のためにも遊び(スポーツ)をつくることへの態度であることを示す貴重な意見である。
また、参加者のうち1人にでも「スポーツは可変でありつくることのできるものである」ということが改めて伝わったことを意味している。


クレジット
文・画像:廣田祐也
画像:ヨシガカズマ